最近の話題 2009年3月7日

1.地球シミュレータ2 稼動開始

  2009年3月2日に海洋研究開発機構(JAMSTEC)は地球シミュレータの更新システム(ES2)の稼動を発表しました。地球シミュレータは国家プロジェクトとしてマシンを開発し,それがNECの商用機のSX-6になったのですが,今回は,逆に,JAMSTECがNECの商用機のSX-9を導入しました。

  SX-9に関しては2007年10月27日の話題で紹介していますが,65nmプロセスを使い3.2GHzクロックで動作する8本のベクトルパイプを持ち,チップあたりのピーク性能は102.4GFlops,このCPU 8個が計算ノードを構成します。そして,ES2は,この計算ノード が160ノードの構成で,全体のピーク性能は131TFlops,総メモリ容量は20TBとなっています。地球シミュレータは64GFlopsの計算ノード 640ノードの構成であったのですが,計算ノードの性能が12.8倍に向上したので,1/4のノード数で3.2倍のピーク性能を実現しています。また,今回の発表には記載されていませんが,CPUチップのメモリバンド幅は256GB/sで2.5B/Flopsを確保しています。

  ノード間の接続は,地球シミュレータでは640ポートの単段クロスバという凄いものだったのですが,今回は2段のFat Treeというより常識的な構成になりました。しかし,各ノードからスイッチへの接続は8GBx2(InとOut)が8本という構成で,819.2GFlopsのノードから128GB/sのバンド幅ということで0.156B/Flopsと,こちらもかなり強力です。

  初代に地球シミュレータはピーク性能の87.5%のLINPACK性能を出していたので,今回のES2でも同比率を仮定すると,114.7TFlopsという計算になり,昨年11月のTop500で国内トップの東大T2Kシステムの83TFlops(ピーク性能113TFlops)を抜いて国内トップの性能です。

2.IntelがAtomをTSMCにライセンス

  2009年3月2日のEE Timesなどが,IntelがAtomプロセサをTSMCのプロセスルールに移植し,プロセサコアをライセンスすることに合意したと報じています。また,Intelも同日,発表を行っています。

  IntelもAtomをコアとして周辺回路を集積したSoCを開発する予定ですが,これはやはり既製服でぴったりとは行きません。また,他社との差別化も難しいという問題があります。やはり,製品に合わせて必要な周辺を組み合わせたチップの方が,性能,消費電力,コストなどの点で有利です。TSMCとの提携は,このようなAtomをコアとしたSoCの開発を可能とし,その分,(ARMからシェアを奪って)売り上げを伸ばすことが出来ると考えられます。

3.Intelが6品種の組み込み用Atomを発売

  また,同日,IntelはZ5xxシリーズの組み込み用Atomプロセサを発表しました。クロックが1.6GHzでFSBが533MHzのZ530とZ530P,1.1GHzでFSBが400MHzのZ510とZ510Pがあり,P無しは441ピンで13x14mmの小型パッケージ,P付きは437ピンで22x22mmのパッケージに入っています。更に,温度範囲が-40度から+85度の工業用のZ520PTとZ510PTがあります。Z520PTのクロックは1.3GHz,Z510PTは1.1GHzクロックです。TDPは2.2Wですが,Z510だけは2.0Wとなっています。

4.AMDがFabを分離し,GlobalFoundry社を設立

  2月21日の話題で,AMDの臨時株主総会でFabの分離が承認された話題を紹介しましたが,3月2日に目出度くアブダビにATIC社との契約が出来,2009年3月4日にGlobalFoundry社の設立が発表されました。AMDの会長であったHector Ruiz氏が会長,AMDの製造担当のSVPであったDoug Grose氏がCEOとなり,ATICからも取締役が送り込まれます。

  当面はドレスデンのFab36をFab1 Module1と名称を変更した45nm SOIプロセスの工場だけですが,2009年の終わり頃には32nmのバルクプロセスを担当するModule 2を増設する予定です。また,$4.2Bを投じて32nmとそれ以降のプロセスに対応するFab2をニューヨーク州に建設し,TSMCを追撃する構えです。

5.nVIDIAがx86 CPUコアを開発か?

  2009年3月4日のThe InquirerでCharlie Demerjian氏が,3月3日に開催されたMorgan StanleyのカンファレンスでnVIDIAのMichale Hara SVPがx86CPUの開発を発表したと報じています。また,3月6日のマイコミジャーナルに山下氏が詳しい記事を書いています。

  nVIDIAは,モバイル機器向けにARMコアとGPUなどを組み合わせたTegraという製品を出しており,それとAtom+IONで現状のニーズは満たせるが,将来的には,x86コアでTegraのような製品が必要となると考える。しかし,問題は,それが何時かだと述べたとのことです。ということで,nVIDIAがx86コアの開発を検討していることは確かなようですが,どの程度本気で,どの程度具体化しているのかは分かりません。単に,株価を上げるためだけの発表という見方もあります。

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