最近の話題 2009年8 月1日

1.ロスアンジェルス市がe-mailサービスをGoogleに委託か?

  2009年7月21日のLos Angels Timesが,ロスアンジェルス市が$7.25Mでe-mailサービスを委託する提案を2週間以内に委員会で審議すると報じています。

  このGoogle委託案に関して,プライバシー擁護団体やロスアンジェルス市警は,十分な秘密が保たれないのではないかと懸念を表明しているとのことです。市のe-mailとなれば,政策や利権が絡むメールや人事のメールも含まれ,市警は逮捕歴などのドキュメントの秘密が保たれるのかどうかを心配しているとのことです。

  ロスアンジェルス市のシステムは老朽化しており,新規のシステムを購入,運営するよりも,Googleのサービスを利用する方が費用的には効率が良いのでしょうが,Googleのシステムにこういう地方自治体や警察の情報が蓄積されてしまって良いものでしょうかね。 当然,技術的にはそれなりの隔離がされるのでしょうが,今週のBlack Hatの開催前夜に,セキュリティー業界では著名なKaminsky氏とMitnick氏のWebサイトがハックされるという事態が発生していることもあり,やはり,安全性には疑念が残ります。

  また,心情的には,Googleというと市のメールにバナー広告が表示されて,かつ,Google社内ではメールが検索可能になっているのではないかという懸念もあるようです。

2.Atmel社が耐放射線能力を強化したSPARCプロセサを発表

  2009年7月29日のマイコミジャーナルが,Atmel社が耐放射線仕様のSPARCプロセサを発表したと報じています。同社のWebページをチェックすると,Atmel社の発表は7月21日で,同社のAT697 プロセサは100MHzのクロックで動作し,消費電力は0.7Wで90MIPSの性能となっています。

  地上で使用されるシステムでも,現在では,宇宙線起因の中性子ヒットが最大のエラー原因となっており,地上より格段に強力な放射線に曝される大気圏外の宇宙空間で使用される衛星搭載機器などでは耐放射線仕様のプロセサが使われます。このようなプロセサの一つが欧州のNASA相当であるESAが開発を続けているLEONプロセサで,アーキテクチャ的には32ビットのSPARC V8のプロセサです。そして,Atmel社の今回発表のプロセサはESAのLEON 2-FTプロセサの設計をベースにしていると書かれています。

  このクロック周波数や性能は,普通の地上用のプロセサと比較すると1桁以上低い値ですが,RevEプロセサはトータル100Krad,Rev Fプロセサはトータル300Kradのドーズまでテストし,エラーレートは10^-5/チップ/日以下で,95 MeV.cm²/mg @ 125℃以下の単発のヒットでは恒久的な故障を引き起こさないことを確認しているとのことです。

  中性子に対するエラー率を下げるには,SRAMセルなどを大きくするとか寄生容量を付け加えて速度を遅くして感度を下げるというような対策が必要です。加えて,宇宙空間では超強力なエネルギーをもつ粒子があり,これにやられると一発でラッチアップを起こしてチップが焼損するSingle Event Latchupという障害モードがあり,これを防ぐためにはトランジスタの間隔を広く取るとか各種ノウハウがあるようです。しかし,どれもクロック速度の向上にはネガティブに働きます。

3.Samsungが1GHz超えのARMコアを開発

  2009年7月26日のEE Timesが,SamsungとIntrinsityがARMのCortex A8コアのプロセサを開発したと報じています。Hymmingbirdと呼ぶこのチップの性能は2000Dhrystone MIPSを超え,消費電力は0.75mW/MHzとなっています。

  2008年12月20日の話題で紹介したQualcomのSnapdragonは1.5GHzクロックとのことで,Hummingbirdのクロックはこれには及びませんが,スマートフォンなどでの処理能力向上の要求から,ARMコアもGHz超えのクロックに時代になっていくようです。

  なお,これらのプロセサに用いられる低スタンバイ電力の半導体プロセスのトランジスタは,サーバやデスクトッププロセサ用の高性能プロセスのトランジスタと比較すると速度が2〜3倍遅いので,GHz超えは容易ではなく,Hummingbirdも論理合成と自動配置配線ではなく,カスタム設計が使われています。

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