最近の話題 2010年1月23日

1.富士通がA*STARにNehalemスパコンを納入

  2010年1月19日に富士通は,シンガポールの 科学技術庁であるA*StarにNehalemベースのスパコンを納入し,ぺタスケールコンピューチングの共同研究を行うと発表しました。 富士通としては久々の海外でのスパコンビジネスです。

  このシステムは富士通のPRIMERGY BX900ブレードシステムで,Xeon5570 2ソケットのブレードを370枚あまり使用しピーク性能が35.4TFlopsで,LINPACKではピークの91.8%にあたる32.5TFlopsをマークしています。

  まあ,外部仕様では他社のNehalemブレードとそれほどは違わないシステムですが,2010年1月21日のThe Inquirerの記事でNebojsa Novakovic氏は,同氏の過去のスパコンの経験や取材した他社のシステムと比較して,ケーブルの取り回しがきれいに出来ていると褒めています。この記事にはQDRのInfiniBandのケーブルが見える筺体の裏側の写真が載っています。

2.富士通の社長交代

  2010年1月22日に富士通は社長の交代を発表しました。昨年9月に 病気を理由に野副社長が辞任し,間塚会長が社長を兼務してきたのですが,山本氏を新社長に指名したものです。

  山本氏は懐かしいワープロのOASYSから富士通のパソコンの開発などを担当してきており,富士通の社長は,長らくSE,営業畑の社長が続いたのですが,久々のハード部門出身の社長です。また,新社長を補佐する5人の副社長も発表されました。ということは,明には発表されていませんが,現在の副社長は退陣と考えられ,間塚会長と海外が主担当のクリストウ副社長を除いて,社長と4人の副社長は50代と大幅な若返りです。

  5人の副社長の内で主にシステム製品を担当するのは佐相副社長で,これまで同社のらくらくフォンなどの携帯電話の担当です。サーバや通信機器などの基幹ハードウェア 出身の人がトップの経営陣に入っていませんが,これも時代でしょうか。

  富士通では,黒川,野副と二代の社長が,ある意味では不可解な状況で辞任し,また,半導体部門を担当する小野副社長が偽手形問題で辞任するなどドタバタが続いており,今回の経営陣はこのようなことが無いことを祈ります。

3.EUがOracleのSun買収を承認

  2010年1月21日のCNETなどが,OracleによるSunの買収をEuropean Commissionが承認したと報じています。審査中のロシアと中国も同調する方向とのことで,やっとOKが出そうというところでしょうか。

  ECはMySQLをOracleがコントロールすることに懸念をもっていたのですが,コミュニティーをサポートし,開発を続けるというOracleの約束で,競争制限にはならないと判断したと見られています。

  これで正式にSunを買うとなると,具体的にSPARCプロセサの開発はどうするのか,富士通とは協力するのか,Solaris,Java,MySQLはやるとして,Java Middlewareなどの製品はどうなるのかが気になるところで,2010年1月21日のThe Registerは色々な推測を述べています。しかし,1月27日にOracleの発表が行われる予定なので,それを待ちたいと思います。

4.次世代スパコンの中間評価報告書を公開

  これまで,米国勢に手の内を知られたくないという理由で,中間評価報告書の一部は非公開であったのですが,このほど,昨年7月の中間評価報告書が公開されました。

  それによると,元のベクトル,スカラのハイブリッド構成は,両システムの間のバンド幅不足で十分な性能が出ない,また,現状では連携計算が必要な具体的なアプリがないことから,システム構成の再検討を理研に指示していた。この過程で,NECと日立が製造から撤退という申し入れがあった。結果として,理研は富士通が開発を担当しているスカラに一本化し,開発時期を前倒しする案を作った(その後,この前倒しは事業仕分けに伴う見直しで予算削減)。スカラ部単独でもLINPACK 10PFlopsの目標は達成できるし,当初計画よりインタコネクトのバンド幅を倍増しており,ベクトルアプリでも書き換えを行えば相当の性能が出る。但し,書き換えの手間がかかるので,支援が必要という内容です。

  2010年1月22日の毎日新聞は,文科省の作業部会は,現計画では世界一にはなれない,NEC担当のベクトル部の開発縮小,廃止を求めていたと報じています。これが事実とすると,NECの撤退は渡りに船で,逆にNECは旗色が悪いから止めたということもありそうです。とすると,NECに払った開発費の大部分が無駄になったのには,かなり,文科省,理研の責任もありそうです。事業仕分けの時,蓮舫議員に突っ込まれて,文科省のお役人は「NECを訴える」準備をしていると回答していましたが,こういう事情だと,そんなことが出来るのでしょうかね。

5.中国のスパコン開発計画

  2010年1月19日のTechnology Reviewが中国のスパコン開発計画について報じています。中国の次期スパコンであるDawning 6000はLoongson 3プロセサを使用し,OSはLinuxで,2010年中ごろに完成し,早ければ2010年末までに稼働とのことです。

  製造プロセスは65nmと言われ,FabはSTMicro社で,この記事に掲載された写真でもSTのロゴが見えます。

  このDawning 6000に関しては,昨年12月12日の話題で紹介しています。また,Loogson 3はGodson 3とも呼ばれ,2008年8月のHotChisで発表されており,マイコミジャーナルに詳しい紹介記事があります。

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