最近の話題 2010年2月6日

1.ARMが次世代コアのロードマップを発表

  2010年2月2日のEE TimesがARM社のロードマップについて報じています。それによると,ARMは2010年のうちに3種類のCortexファミリのプロセサコアを発表する予定で,Eagle,Heron,Merlinという鳥シリーズのコードネームだそうです。

  Eagleは,現在,最上位のCortex A9の上位に位置する製品で,2GHzクロックという報道もあります。Cortex A9はNVIDIAのTegra-2にも使われているハイエンドのスマートフォンや携帯機器などの用途向けで,さらに高機能化が進むこの分野をEagleで強化する狙いです。この分野はIntelがAtomで攻め込もうとしているところで,Defending ChampionのARMの戦いぶりがみものです。

  中位のHeronは車のエンジン制御やディスクのコントロールなどの組み込み分野向けです。そして下位のMerlinはモーターの制御やオーディオ処理などの組み込み用途向けだそうです。

2.やっとTukwilaが日の目をみるか

  2010年2月3日のThe Inquirerが,Intelが4コアItaniumのTukwilaを発表すると報じています。 Tukwilaは2008年2月のISSCCで論文発表されから,既に2年が経過しています。そして2009年5月23日の話題で紹介したように,The Registerが2010年1Qに遅延と書いています。従って,この情報が正しかったということになります。

  TukwilaのHotChipsでの発表に関しては2008年9月20日の話題で紹介しています。

  しかし,この時期に65nmプロセスで700mm2のチップで,Itaniumの共同開発パートナーのHPはともかく,他のサーバメーカーも使うのでしょうかね。

3.IntelがCore "vPro"プロセサファミリーを発表

  2010年2月4日にIntelはvProの改良版を発表しました。2010年2月4日のSemi Accurateによれば,これは新しいプロセサではなく,プロセサとしては既存のCore i5,i7にQ57チップセットを付け,更に,82577LM,あるいは82578DM GbEコントローラ,Centrino Ultimate-N 6300かCentrino Advanced-N 6200とCentrino Advanced-N + WiMAX 6250ワイヤレスソリューションを含むハードウェア系で実現されるとのことです。

  ディスクのデータは全て暗号化されており,盗まれると使用できなくするし,ディスクを取り出してもデータを見られないという状態になる。一方,回収した場合には,簡単に使用可能な元の状態に戻せるというのが売りです。また,KVMという機能でキーボード,ビデオ,マウスをリモートで操作できる機能を持っています。この機能はOSが動作していなくても使用できるということで,リモートでのパワーON/OFFと合わせて,コーポレートのセンターから何でもできるというものです。

  当然,パッチの適用などのメンテがリモートで出来るので,IT部門の手間が大幅に省ける訳ですが,逆に言うと,会社側がPCの中身を全部覗けるということにもなります。

4.IBMのグラフェントランジスタが100GHzを達成

  2010年2月5日にIBMは,IBMの研究者が,遮断周波数100GHzのグラフェントランジスタを作ったと発表しました。

  SiCを熱分解して高品質のグラフェン膜を成長させ,ポリマーとHfO2絶縁膜の上に金属のゲートを付けるという構造で,ゲート長240nmのグラフェントランジスタを製作しています。

  従来のグラフェントランジスタの記録は26GHzだったので,4倍近く性能向上しています。また,240nmのゲート長のSi FETの遮断周波数は40GHz程度なので,グラフェンの移動度の高さを示しています。

  なお,このグラフェンはバンドギャップが無いので,電流のOn/Off比は小さく,ロジック用には使えないタイプです。一方,IBMはバンドギャップを作ってOn/Off比を上げる研究も行っており,100倍程度の電流比を実現しています。但し,シリコンではリークの多い高速トランジスタでも数1000倍なので,まだまだです。

5.MITが室温動作のゲルマニウムレーザーを開発

  2010年2月4日にMITはゲルマニウムを使うレーザーの室温発振に成功したと発表しました。同じ半導体でもシリコンやゲルマニウムは間接遷移なので,伝導帯から価電子帯に電子が落ちるときのエネルギーは熱などになり,光にはならないというのが一般的な理解です。従って,ゲルマニウムでレーザーができたのは驚きです。

  MITサイトでの説明によると,伝導帯には間接遷移を行う状態と直接遷移を行う状態があり,GaAsなどの直接遷移の半導体では直接遷移をする方がエネルギーレベルが低いので,大部分の電子がこちらに入り,遷移の時に光が出るのですが,Geでは間接遷移を行う状態の方がエネルギーが低く,光が出る遷移がほとんど起こらないということです。

  そこで,MITの研究者は,リン(P)をドープして,Pからの余剰電子が間接遷移の状態を埋め,より多くの電子がエネルギーレベルの高い直接遷移を行う状態に入るようにしたとのことです。10**20原子/cm3のドープレベルが最適なのですに対して,今回のサンプルは10**19ですが,それでも発振に成功したとのことです。

  しかし,この原理から行くと,間接遷移を行う電子の方が数が多く,効率は良くなさそうです。このため,ゲルマニウムに引っ張り歪を与えて,両者のエネルギーレベルを近づけるという研究も行っているとのことです。

  GaAsに比べるとGeはSiとの相性が良いので,実用的な効率が得られるようになれば,LSIチップからの光出力が容易になるという期待があります。

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