最近の話題 2010年2月27日

1.IntelとTSMCのAtom提携は顧客無しで一時中断

  2010年2月26日のEE TimesNY Timesの記事を引いて,昨年3月に発表されたTSMCによるAtomコアのSoC製造には顧客がついておらず,開店休業状態と報じています。昨年3月の発表に関しては2009年3月7日の話題で紹介していますが,要するにIntelがTSMCにAtomコアの設計をライセンスし,TSMCはそれを自社のプロセスルールに焼きなおして製造可能とし,TSMCや顧客が開発してモジュールと組み合わせたSoCを作るというビジネスです。

  現状では,このようなSoCの分野ではARMが圧倒的で,この分野にAtomで参入しようという目論見ですが,発表から1年近くたって,顧客はゼロで,AtomベースのSoCは1個も作られていないという状況だそうです。ということで,共同開発は一時中断とのことです。

2.露光技術の状況 SPIEから

  2010年2月26日のEE Timesが露光関係の最大の学会であるSPIEでの注目発表をまとめて報道しています。

  掻い摘んで紹介すると,TSMCは従来EUV派では無かったのですが,今回,ASMLのTwinScan NXE:3100というプレ量産版のEUVマシンを導入すると発表しました。このマシンは研究用と次世代ノードの技術開発用に使用するとのことです。このマシンのお値段は$80Mと言われています。

  このNXE:3100のNAは0.25です。EUVは波長が13.5nmでArFの193nmに比べると約1/14ですが,ArF液浸のマシンのNAは1.25かそれ以上で,ここで6倍になってしまうので,解像度の点では6/14で,実質的な改善は2倍程度ということになります。

  また,Samsungも2012年にはEUVが必要という発表を行っています。ArFの2重露光で解像度を改善しようとすると,2.5倍程度の時間が掛かり,ArF液浸マシンも$30M程度するので,全体としてEUVの方が安くできるという計算です。但し,2012年に量産用のマシンが出るかとうかはGood Questionと述べています。

  しかし,IntelはEUVは開発が遅れており,15nm世代の量産には間に合わないという見解で,ArF液浸で4重,あるいは5重露光で11nmのロジックプロセスまで行けるという発表をしています。しかし,11nm世代で4重,5重ともなると位置合わせ精度も大変で,かなりコストが嵩みそうです。

  露光装置メーカーのNikonはNAが1.35のArF液浸のNSR S620Dの出荷を開始しており,EUVに関しても2007年のEUV1実験装置に続いて,2012年には6枚ミラーでNA=0.35のマシンを発売予定。さらに11nm世代に向けてNA=0.4のマシンを2014年から2015年に出す予定というロードマップを発表しました。なお,NSR S620Dは露光速度が300mmウエファで200枚/Hrで位置合わせ精度は2nmだそうです。

  また,2009年2月19日のEE Timesによると,TSMCはMapper社の電子ビームで直描する露光機も導入するとのことで,次世代の露光技術開発に本腰を入れているようです。が,裏返して言うと本命がなく,可能性のありそうなものを端から調査しているというのが業界の状況で,苦悩でもあるようです。

3.TSMCがテクニカルフォーラムでロードマップを発表

  TSMCは2010年2月23日に東京においてテクニカルフォーラムを開催し,ロードマップなどを発表しました。ここでの発表を2010年2月23日のマイコミジャーナル2月24日のEE Timesが報じています。

  40nm製品の提供の遅れに関しては,現状,Fab12だけが40nm製品が製造できる工場で,1Qあたり8万枚(300mm)のキャパしかないが,予想を超えて需要が多く,供給不足になった。今年末にはFab14の一部でも40nmの製造を開始し,キャパが倍増するので,需要にこたえられるようになる。と述べています。

  40nmプロセスの歩留まりの問題に関しては,液浸を使う最初のプロセスでレジストの欠陥が増えた点とLow-Kの層間絶縁膜が脆いことに起因するパッケージング問題である。また,トランジスタ特性に関しては歪のレイアウト効果が原因と述べています。そして,昨年前半はトラブルがあったが,昨年後半には解決したと述べています。Demerjian氏が指摘するFermiのビアの問題は触れられておらず,NVIDIAの設計の問題という立場でしょうか。

  次世代の28nmですが,28LPの量産を4ヶ月後に開始と述べています。また,TSMCとしては最初のHigh-K Metal gateを使う28HPは2010年9月末,高性能ローパワーの28HPLは2010年末から2011年初めの予定です。なお,TSMCのMetal GateはIntelと同様のGate Lastプロセスです。また,別途,Xilinxは28HPLプロセスのFPGAの技術を確立したと発表しており,ファブはTSMCとSamsungと発表されています。

  そして,TSMCは,22nmについては20Gを2012年3Q,20LPを2013年2Qと述べています。

4.ISSCC 2010でのARM社のばらつき吸収技術の発表

  2010年2月10日のTech On!が,ISSCC 2010でARM社とミシガン大学は新方式のRazor技術を使ってばらつきを吸収するという論文を発表したと報じています。

  今回のRazorではTransition Detector(TD)の回路を変え,50%デューティーのクロックが使えるようにし,また,状態の回復をパイプラインフラッシュに変更しています。やはり,CPUのような複雑なシステムでは,Razor FFからリカバリを行うのは難しかったようです。

  Razorがあれば,後動作するギリギリのところまで電源電圧を下げることができるので,消費電力を52%削減できたと発表されました。

  今回の発表では,ARM ISAのサブセットを持つCPUと書かれているので,実製品ではなく実験チップのようです。このCPUの2976個のFFの内の503個にTDを付加して,1GHzで動作させ,63個のチップで消費電力を計測し,製造したままでは消費電力に37mWのばらつきがあったが,この方式を適用して10mWにばらつきを減らしたと発表しました。

5.ISSCC 2010でのIntelのばらつき吸収技術の発表

  2010年2月11日のThe RegisterがISSCC 2010でのIntelno発表を報じています。チップを設計する場合,製造ばらつきや経年変化を見込んでがードバンドを取って設計しますが,この分には無駄が含まれます。Razorと同様に,エラー検出を行い,命令のリプレイでエラー回復を行うというもので,リプレイの方法を改善したと書かれていますが,この記事では具体的な方式には触れられていません。

  前述のRazor方式と同様に誤動作ギリギリで動かすことにより,同じ消費電力なら41%スループットが上がり,同一性能なら22%消費電力を減らせると書かれています。

6.NVIDIAのGTX480は3月26日発売か?

  NVIDIAのFermiはどうしようもないというSemiAccurateの記事を先週の話題で紹介しましたが,2010年2月26日のThe Inquirerが,NVIDIAのTweetの情報で,Fermi GPUを使うGTX 480とGTX 470グラフィックボードは3月26日に発売と報じています。

  勿論,Charlieの記事でもリスク発注した9000枚のウエファは入荷するので,そこで取れるチップの分だけは製造されると書いているので,その範囲では発売できるのかも知れません。米国のSabrePCのサイトではGTX 480は$699.99,GTX 470は$499.99という値段を載せているとのことですが,Charlieの記事が正しいとすると,既にお金を払ってしまったリスクウエファはともかく,今後の製造は大赤字となりそうです。

@717865

 

  

 

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