最近の話題 2010年3月6日

1.IBMが5世代目のIAサーバ eX5を発表

  2010年3月2日にIBMは,同社の5世代目のIAサーバアーキテクチャであるX5シリーズと呼ぶ,4ソケットのx3850 X5,2ソケットのx3690 X5と2ソケットのBlade Center HX5という3種のマシンを2010年に提供すると発表しました。

  売りは,メモリ量が多いことで,4ソケットのx3850 X5では4U筺体内に64DIMMを収容し,MAX5と呼ぶ1Uの増設記憶に32DIMMを搭載でき,合計96DIMMを搭載できます。更に2台のX3850 X5を相互接続し,最大192DIMMにできるようになっています。これら全てのソケットに8GB DIMMを搭載すれば,メモリ容量は1.5TBになります。

  仮想化でCPUを分割すると,それぞれの仮想CPUの上で動くアプリの合計のメモリを確保する必要があり(しないとディスクとのスワップが入る),大量のメモリが必要となります。メモリ不足のため,従来のサーバではCPUの稼働率が下がっていたのですが,このような大量メモリ搭載で,効率よく仮想化を利用でき,仮想CPU数も増やせるというのが売りです。また,データベースにしろCADにしろCPUよりソフトの値段が高く,ソフト費用はCPU数(あるいはコア数)に比例するので,少ないCPU数で同じ性能が出せるとコスト的にも有利です。ということで大容量メモリは有効としています。

  このIBMの発表では,Intelの最新の8コアCPUとだけ書かれていますが,8コアで1ソケットに16DIMMが接続できるのはNehalem EXだけで,3月2日現在,Intelの未発表製品であるので,名前を伏せたものと思われます。なお,Nehalem EXは4チャネルのFBDIMM2インタフェースを持っており,これにMill BrookというFBDIMM2とDDR3の変換を行うチップを付けて標準のDDR3 DIMMを接続する構成で,1個のMill BrookでDDR3 x2チャンネルをサポートするので,合計8チャネルのDDR3ポートがあり,これに各2枚のDIMMを付けるとソケットあたり16DIMM接続となります。

  x3850 X5本体とMAX5の接続がどのようになっているかは記述がありませんが,QPIで接続されている感じで,また,QPIを使って,もう1台のx3850 X5と接続して全体では8ソケット,64コアのSMPを構成していると推測されます。

  また,HDDの代わりにeXFlashと呼ぶSSDが搭載でき,24万IPOSの能力だそうです。また,FlexNodeと呼ぶ物理パーティションもサポートしているということで,x3850 X5はハイエンドのSMPサーバと言えます。

  HX5は2ソケットですが,ボードスペースの制約があるので,本体には16DIMM搭載で,ブレードフォームファクタのMAX5に24DIMMを搭載し,合計40DIMM。また2ブレードをMAX5で接続することができ,全体では4ソケット,80DIMMのシステムが構成できるようです。

2.IntelのSandy Bridgeは2011年1Q登場

  2010年3月4日のPCWatchに笠原氏が,Intelの次世代のSandy Bridgeは2011年1Qと報じています。ソケットは現在のNehalem系とは異なるH2という新ソケットだそうです。

  また,2010年2月27日のSemiAccurateは,Canardpcが掲載したSandy Bridgeのチップ写真を掲載しています。4コアに8MBの共通L3$を持ち,チップの左側にはL3$に接続されるIntegratedのGPU,右側にはDMIやPCIeが出ています。製造プロセスは32nmで,コアの面積は約20mm2でチップ全体は約225mm2,TDPは80W,クロックは3.0〜3.8GHzとなっています。

  また,L1D$のアクセスは3サイクル,各コアに内蔵の256KBのL2$のアクセスは9CLK,リングバスで結合されるL3$のアクセスは25CLKと書かれています。そして,メモリはDDR3-1600が2チャンネルです。

3.IntelのULV Nehalem

  2010年3月5日のSemiAccurateが,今月中にも超低電圧(ULV)Nehalemプロセサを含むモバイル用のCalpellaプラットフォームが発表されると報じています。

  プロセサは,Core i5 520UM,i7 620UM,i7 640UMの3種でTDPは全て18Wとなっています。520UMのクロックは1.067GHzで,2コアの場合は1.6GHz,1コアの場合は1.856GHzまでTurboBoost可能です。620UMはそれぞれ1.067GHz,1.733gHz,2.133GHz,640UMは1.2GHz,1.866GHz,2.266GHzです。

  メモリはDDR3-800,IGPのクロックは166MGHzですが,こちらも熱的余裕がある場合はブーストが効きます。

  そして,1000個ロットの場合の単価は,順に,$241,$278,$305だそうです。しかし,2010年3月5日のPC Watchの笠原氏の記事では,vProなどの企業向けの機能を殺した一般顧客向けのCustomer ULVというもっと安い製品を夏頃に出すと書かれています。

  また,3Qにはi5 540UMとi7 660UMが出るそうです。

4.eASIC社がLEON4プロセッサIPを提供開始

  2010年3月4日のEE Timesが,スエーデンのAeroflex Gaisler AB社の開発したSPARC V8アーキテクチャのLEON4プロセッサを,eASIC社がIPとして提供するという発表を報じています。

  Gaisler社は,ESA(Europian Space Agency)用にLEONプロセサを開発製造している会社で,国際宇宙ステーション(ISS)の制御機器はESAが分担したので,ISSの制御にはLEONプロセサが使われている筈です。

  SoC用のプロセサコアとしてはARMが大勢力で,その他,MIPS,PowerPC,SHなど各種がある激戦区で,SPARCコアの需要がどの程度あるのでしょうね。

5.Tabula社のSpacetime FPGA

  2010年3月1日のEE TimesがTabula社のTime Sharingで動作するSpecetime FPGAについて報じています。

  複雑なシステムでは全部のモジュールが忙しく動いているのではなく,処理に応じて一部のモジュールだけが動作するという場合がほとんどです。このような場合に,全部のモジュールをFPGAのロジックで固定的に作るのではなく,高速の再構成を可能として,必要な時に必要なモジュールを構成するようにすれば,小さなFPGAで全機能を実現でき,経済的というのが基本的な考え方です。

  Tabula社のFPGAは8種(Foldと呼ぶ)の構成を記憶し,クロック単位で構成を順次切り替えて行きます。各Foldの処理結果はパイプラインレジスタに格納し,次のFoldに渡すという処理を行います。第1世代の製品のクロックは1.6GHzなので,8Foldを使う処理の場合は実効的なクロックは200MHzとなります。また,2Fold,4Foldという構成も取れるようです。

  そして,内部RAMもFoldに応じてアクセスするメモリ番地が切り替わる構成になっており,時分割的に処理が進められるようになっています。

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