最近の話題 2010年3月20日

1.Intelが6コアプロセサ Xeon 5600シリーズを発表

  2010年3月16日にIntelは32nmテクノロジを使うXeon 5600シリーズプロセサを発表しました。この32nmの6コアプロセサはWestmereというコードネームで開発されていたもので,今年のISSCCでパワーゲーティングなどの省電力技術を中心とする発表が行われており,2月13日の話題で紹介しています。

  プロセサの機能アップとしては,この省電力機能の強化と,AES-NIと呼ぶAES暗号処理を高速化する命令の追加とTrusted Execution Technology(TXT)の追加が主要なものです。AES暗号は4x4の16バイトを単位としてバイトごとの入れ替えやシフト,ローカルキーの加算などの4ステップの操作を繰り返すのですが,この4ステップを一度に実行できる命令と,ローカルキーを発生する命令を追加しています。また,CRCを計算する命令も追加されています。これらは,比較的簡単なロジックなので,ハードウェア的な実装負担は非常に小さいと思われます。

  TXTは,一般的にはTrusted Platform Managementと言われる機能で,暗号技術を用いてBootやBIOS,OSなどが改変されていないことを確認してから起動させる機能で,OS以下のレベルにマルウェアが潜り込むことを阻止します。

  今回発表された製品は,トップエンドのXeon 5680が6コア,3.33GHzクロック,12MB L3$,6.4GT/s QPIでTDPが130W,1000個ロットの単価が$1663となっています。そして,TDPが95W,80W,60Wの製品があり,更に40WのL5630,L5609がありますが,これらは4コアです。今回も種類が多いので,Intelの発表したリストをコピーペーストしておきます。これだけ,一斉に発表するのは全面的に32nmに乗り換えろということでしょうね。

Processor Number Processor Frequency Intel Smart Cache TDP Intel Turbo Boost Technology; Intel Hyper-Threading Technology Intel AES-NI; Intel TXT Cores / Threads 1kU Price
Intel® Xeon® X5680 3.33 GHz 12 MB 130W checkmark checkmark 6 / 12 $1663
Intel® Xeon® X5677 3.46 GHz 12 MB 130W checkmark checkmark 4 / 8 $1663
Intel® Xeon® W3680 (1S) 3.33 GHz 12 MB 130W checkmark checkmark 6 / 12 $999
Intel® Xeon® X5670 2.93 GHz 12 MB 95W checkmark checkmark 6 / 12 $1440
Intel® Xeon® X5667 3.06 GHz 12 MB 95W checkmark checkmark 4 / 8 $1440
Intel® Xeon® X5660 2.80 GHz 12 MB 95W checkmark checkmark 6 / 12 $1219
Intel® Xeon® X5650 2.66 GHz 12 MB 95W checkmark checkmark 6 / 12 $996
Intel® Xeon® E5640 2.66 GHz 12 MB 80W checkmark checkmark 4 / 8 $774
Intel® Xeon® E5630 2.53 GHz 12 MB 80W checkmark checkmark 4 / 8 $551
Intel® Xeon® E5620 2.40 GHz 12 MB 80W checkmark checkmark 4 / 8 $387
Intel® Xeon® E5507 2.26 GHz 4 MB 80W     4 / 4 $276
Intel® Xeon® E5506 2.13 GHz 4 MB 80W     4 / 4 $219
Intel® Xeon® E5503 2.00 GHz 4 MB 80W     2 / 2 $188
Intel® Xeon® L5640 2.26 GHz 12 MB 60W checkmark checkmark 6 / 12 $996
Intel® Xeon® L5630 2.13 GHz 12 MB 40W checkmark checkmark 4 / 8 $551
Intel® Xeon® L5609 1.86 GHz 12 MB 40W     4 / 4 $440
Intel® Xeon® E5645 2.40 GHz 12 MB 80W checkmark checkmark 6 / 12 $958
Intel® Xeon® L5638 2.00 GHz 12 MB 60W checkmark checkmark 6 / 12 $958
Intel® Xeon® L5618 1.86 GHz 12 MB 40W checkmark checkmark 4 / 8 $530
Intel® Xeon® L3406 2.26 GHz 4MB 30W checkmark checkmark
(no AES-NI)
2 / 4 $189
Intel® Core™ i7-980X Processor Extreme Edition 3.33 GHz 12 MB 130W checkmark checkmark 6 / 12 $999

  また,この表の最後に載っているゲーマーなど向けのCore i7-980Xも発表されました。6コア,3.33GHzクロック,12MBキャッシュとXeon 5680とほぼ同じチップと思われますが,TXTはサポートされていません。但し,お値段は$999とXeon 5680と比べると大幅にお買い得です。

2.EUROTECHがXeon 5600を使う水冷スパコンを発表

  2010年3月17日のHPCwireが,上記のXeon 5600プロセッサを使うEUROTECH社のAurora Au-5600と称する水冷スパコンの発表を報じています。

  EUROTECH社は昨年のSC09で,Xeon 5500を使う水冷スパコンAu-5500を展示していましたので,ソケット互換のXeon 5600にアップグレードしただけと思われますが,Intelの発表直後にアナウンスするのは元気が良い感じがします。

3.Moscow State大のスパコンのアップグレード計画

  2010年3月17日のHPCwireが,現在,LINPACK 350.1TFlopsで,Top500 12位のMoscow State大のLomonosovシステムのペタFlopsへのアップグレード計画について報じています。まだ,予算的な裏付けは出来ておらずプランの段階のようですが,アップグレードするとなると現システムを使ったT-Systemsが,間もなく発表される8コアのNehalem-EXを使うブレードを作るのではないかという推測が述べられています。

  この記事で面白いのは,スパコンのコストで,同大学はこれまでにLomonosovに350Mルーブル($13M)を投じたと書かれています。これは日本円にすると約11.7億円で,保守費や運営費は含まれておらず,初期の購入費用だけと見られますが,ピーク414TFlopsのNehalem Bladeシステムとしては非常に安い価格です。

  Lomonosovですが,CPUはXeon 5570(2.93GHz)で8840チップ,メモリは全体で54TBで,チップあたり6GB強です。そして,これらのノードをQDRのInfiniBandで接続しています。InfiniBandの値段を無視しても,Xeon 5570と6GBのメモリにボード,電源,筺体コスト込みで12万円です。Xeon 5570の発表時の価格は$1349なので,これでは部品代もでません。T-System社の給料は相当安いんでしょうね。

  このシステムをペタFlopsにアップグレードするのに必要な費用は900Mルーブル($31M)の見積もりだそうです。現在のシステムの消費電力は5MWだそうで,これが2倍強になると電気代だけでも相当なものですが,同大学への国からの交付金は年間$51Mだそうで,なんか日本とは相当貨幣価値感覚が違います。

4.Intelの22nm世代リソグラフィーロードマップ

  2010年3月18日のEE timesが22nm世代のIntelのリソグラフィーのロードマップに関する記事を掲載しています。この記事は業界のアナリストの観測で,Intel自体の発表ではないのですが,かなり詳しい内容で,信憑性が感じられます。

  32nm世代ではIntelはNikonのArF液浸露光機を使ったのですが,22nm世代ではオランダのASMLとNikonの2社からの購入で,より高い位置合わせ精度を要求されるフロントエンドはASMLのNXT:1950iを使い,バックエンドにNikonのNSR-S620Dを使うと書かれています。22nmプロセスでは45回の露光ステップが必要であり,その40%がフロンドエンド,60%がバックエンドだそうです。そのため,全体の購入台数は1950iが18台,620Dが25台となっています。

  但し,1950iは単価が40Mユーロ($6.7M )に対して,620Dは30Mユーロとのことで,両社の売上総額は同程度です。

  また,これで4工場それぞれ月産4万5000ウエファと書かれており,合計では18万枚です。ということは1950i 1台で月に1万枚の露光で,1枚に18露光必要なので,ロスタイムゼロとしても毎時250枚の露光という計算になります。一方,620Dの仕様は毎時200枚です。

  しかし,22nm世代の露光機の購入だけで約1800億円ですから,大変です。  

 

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