最近の話題 2010年4月3日

1.AMDが12コアのMagny-Coursを発表

  2010年3月29日にAMDはMagny-Coursのコードネームで開発されてきた12コアプロセッサをOpteron 6100シリーズとして発表しました。但し,12コアといってもパッケージの中で6コアチップ2個をHyperTransportで接続したという構造で,チップとしてはIstanbulと同じものと思われます。

  ということで,L1$は64KB+64KB,L2$は512KB,そして2チップなのでL3$は12MBとなっています。今回からDDR3をサポートし,最高速度は1333です。また,低電力のLV DDR3-1067のサポートも入っています。HTは全て6.4GT/sです。

  メモリチャネルが4チャネルでバンド幅が2.5倍と言っていますが,2チャネルのチップが2個入っているので4チャネルになるのは当然です。IstanbulではDDR2しかサポートしておらず,Streamメモリバンド幅はIstanbulの時はDDR2-800で測定したのに対して,Magny-CoursではDDR3をサポートしてDDR3-1333での測定というのが大きく効いています。

  また,競合製品(IntelのWestmere EP)よりメモリチャネルが33%多いと言っていますが,翌日,Intelが4チャネルのNehalem EXを発表することが分かっていての発表ですから,子どもの喧嘩のような感じです。

  発表された製品としては,2.3GHzクロック,ACP 105Wの6167SEを筆頭に,ACP 80Wで2.2GHz,2.1GHz,1.9GHzの6174,6172,6168,そして8コアで2.4GHz,2.3GHz,2.0GHzクロック6136,6134,6128,ACP 65Wで12コア,1.7GHzの6164HE,8コアで2.0GHzと1.8GHzの6128HEと6124HEの10品種です。

  このOpteron 6100の凄いところはお値段です。今回,AMDは従来の2ソケットシステム用と4ソケットシステム用のチップの値段の区分を廃止して,4ソケットまで同じ値段としました。その結果,最上位の12コア,2.3GHzクロックの6167SEの1000個ロットの場合の単価が,何と$1386です。これは昨年6月のIstanbulの発表時点で2ソケット用の最上位の2435の$989よりは若干高いものの,8ソケット用の8435の$2649の半値以下です。8ソケットサーバは殆ど売れてないという状況を考えると,コア数が2倍になって4ソケット用の値段が半分以下というのは信じられないバーゲンです。

  それだけ,AMDがNehalem EXを脅威と認識して,アグレッシブな値段を付けているということでしょうね。

2.Intelが8コア Nehalem EXを発表

  2010年3月30日にIntelは8コアのNehalem EXをXeon 7500シリーズという名称で発表しました。この7500は最大8ソケットの構成が可能ですが,2ソケットに限定する6500シリーズも同時に発表されました。

  Nehalem EXは45nmプロセスを使うシングルチップの8コアプロセッサで,2スレッドのマルチスレッドをサポートしています。Intelの発表をコピーペーストしますが,8コアで2.26GHzクロックでTDP 130WのX7560から下は6コア,1.86GHz,TDP 95WのL7545まで7500シリーズが8品種,そして2ソケット限定の6500シリーズが3品種の合計11品種です。

Processor Number Processor Frequency Cache Scalability Power
(TDP)
Intel® Turbo Boost Technology Intel® Hyper-Threading Technology Cores / Threads 1Ku Price
Intel® Xeon® Processor X7560 2.26 GHz 24M 2S/4S/8S 130W checkmark checkmark 8 /16 $3692
Intel® Xeon® Processor X7550 2 Ghz 18M 2S/4S/8S 130W checkmark checkmark 8 /16 $2729
Intel® Xeon® Processor E7540 2 Ghz 18M 2S/4S/8S 105W checkmark checkmark 6 / 12 $1980
Intel® Xeon® Processor E7530 1.86 Ghz 12M 2S/4S 105W checkmark checkmark 6 / 12 $1391
Intel® Xeon® Processor E7520 1.86 Ghz 18M 2S/4S 95W   checkmark 4 / 8 $856
Intel® Xeon® Processor L7555 1.86 Ghz 24M 2S/4S/8S 95W checkmark checkmark 8/ 16 $3157
Intel® Xeon® Processor L7545 1.86 Ghz 18M 2S/4S/8S 95W checkmark checkmark 6 / 12 $2087
Intel® Xeon® Processor X7542 2.66 Ghz 18M 2S/4S/8S 130W checkmark   6/ 6 $1980
Intel® Xeon® Processor X6550 2 Ghz 18M 2S 130W checkmark checkmark 8 /16 $2461
Intel® Xeon® Processor E6540 2 Ghz 18M 2S 105W checkmark checkmark 6/ 12 $1712
Intel® Xeon® Processor E6510 1.73 Ghz 12M 2S 105W   checkmark 4 / 8 $744

  QPIの速度は6.4GT/sで,クロック周波数もAMDのMagny-Coursと同じようなもので,目立った違いはAMDが12コア,Intelは8コア,一方L3$はIntelの24MBに対して,AMDは12MBと半分といったところです。

  もうひとつの大きな違いはお値段で,AMDの最上位チップは$1386であるのに対して,X7560は$3692で,何と2.66倍です。

  そして,HPC用と銘打った2コア限定のX6550でも$2461です。まあ,市場に出ているサーバの8割くらいは2ソケットサーバですから,こちらの値段の方が実質的な影響が大きいと思いますが,これでも2倍弱です。

  Nehalem EXではメモリバスにSMI(Scalable Memory Interconnect)とよぶ最大6.4GT/sのインタフェースを採用し,その先にSMBというバッファチップを付けそこから4枚のDDR3 DIMMを接続する構成になっています。このSMIは実質的にはFBDIMMと同じもので,SMBはAMBから芋づる接続の機能を除いて,DIMMを4枚つなげるインタフェースに変えたものと思われます。しかし,1チップに2つのメモリコントローラを搭載し,それぞれから2本のSMIを出しているので,1CPUに最大16枚のDIMMを接続することが可能になっています。但し,今回発表された製品では最大速度は(SMIの最高速度が6.4GT/sなので)DDR3-1067で,1333はサポートされていません。

  また,メモリインタフェースとしてFBDIMMを使っているので,CRCによる伝送エラーの検出,訂正や1レーンの故障に対するフェイルオーバ機能があり,メモリコントローラはx4,あるいはx8チップの全ビット故障を訂正できるECC機能を持っています。

  さらに,8コアで8ソケットまでQPI直結でSMPを構成でき,合計64コアというある意味では巨大なシステムが作れるので,信頼度の向上に力を注いでいます。今回,3次キャッシュにはDECTED(2エラーの訂正,3エラーの検出)という強力なECCを付け,TAGにもSECDED ECCを付けています。更に,Itaniumと同様にECCで回復不能なエラーが出ても,直ちにダウンではなく,OSに通知してリカバリを行うMachine Check Architectureを採用しています。まだ,Itaniumのようにソフトエラーに強いラッチを使うとかレジスタファイルのECCというレベルと比べると見劣りしますが,それでもXeon系としてはかなり改善されています。

  そして,従来のQPI接続の共有メモリは実質的にはブロードキャストを行っていたのですが,64コアという大きなシステムではブロードキャストでは苦しいところで,今回はディレクトリベースのスヌープもサポートしているような記述がありますが,詳細は分かりません。

  また,I/O仮想化やライブマイグレーションに対応するFlexMigrationなどをサポートし,クラウド的な用途への対応も強化しています。

3.ASC計画の次世代スパコンはCrayに決定

  2010年4月1日のHPC Wireが,米国のエネルギー省のNNSA(National Nuclear Safety Administration)がASC計画で調達する次期スパコンCieloのメーカーとしてCrayを選択したと報じています。

  調達予算は$54Mで,2010年3Qに納入,2011年には増強が予定されています。ハードウェアとしてはCrayの次世代のBakerとなるようです。ASC Purple置き換えで核兵器シミュレーションに使用します。マシン自体はLos Alamos国立研究所に置かれ,Lawrence Livermore国立研究所とSandia国立研究所も使用するという計画です。

  

 

  

  

inserted by FC2 system