最近の話題 2010年7月3日

1.Green 500リスト発表

  2010年6月30日にGreen500リストが発表されました。Top500はLINPACK性能でランキングを決めるのですが,Green500はTop500に入ったマシンをFlops/Wでランキングするリストで,省電力スパコンに注目を集めようというリストです。

  今回の結果ですが,首位は,ドイツのFZJに設置されたIBMのQPACEというマシンが獲得しました。このマシンはPowerXcell 8iを使うQCD用のスパコンで,計算ノード間をVirtex 5 FPAGを使ったスイッチで3次元トーラス接続を行っているシステムです。消費電力は57.54KWで,773.38MFlops/Wというスコアです。全く同じシステムがドイツのRegensburg大とWuppertal大に設置されており,同率首位が3システムです。

  そして,4位が深センの星雲システムで,2580KWで492.64MFlops/Wとなっています。中国のサイトでは498MFlops/Wとなっていたのに比べるとちょっと悪る目ですが,まあ,誤差の範囲でしょう。

  PowerXcell8iやAMD,NVIDIAのGPGPUを使ったシステムがGreen 500では上位に来ており,これらのアクセラレータを使ったシステムの平均は554MFlops/Wであるのに対して,その他のシステムの平均は181MFlops/Wと3倍の開きがあると述べられています。

  Top500に入るような大きなシステムでは,1台のAC電流計では電力を測定できません。そして,電力は時間とともに変化するので,電力の測定は容易ではありません。QPACEの値を見ると3システムとも全く同じで,LINPACK,電力ともに実測とは思えません。LINPACKはどれか1システムで測定し,電力はカタログ値の合計ではないでしょうか。こういう風にやると同率首位のシステムが出やすくなります。 と書いたら,牧野先生から,QPACEは手作りのマシンでカタログ値は無い,どれかのマシンで実測した筈とご教授を戴きました。また,Green 500リストへのリンクが違っているというご指摘も戴き,訂正しました。

  また,Flops/Wは,ノード間接続などの資源が少なくて済む小規模システムの方が高くなる傾向にあり,Top500の中では小規模なシステムがGreen 500の上位を占める傾向にあります。野球賭博ならハンデ師がハンデをつけて順位を決めるところですが,Green 500の場合,皆が納得するハンデがないので,小規模システム有利の状況とが続いています。本来はシステムの消費電力だけでなく,空調の電力も含めて評価すべきで,そうすればハードは同じQPACEでも,センターの工夫で空調電力が違うというような結果が出るはずですが,空調電力は気温によっても違うし,正確な値を出すのは至難の業です。

2.TSMCのプロセスロードマップ

 2010年7月2日のTech On!がTSMCの技術シンポジウムの事前説明会の状況を報じています。それによると,SiON絶縁膜の28nmのLPプロセスは既にリスク量産を開始しており,High-K Metal Gateを使うHP,HPL,HPMの順に2011年9月までにリスク量産を開始する。そして,2012年4Qには20nmの20Gのリスク量産を開始となっています。

 そして,28nm世代はArF液浸スキャナでやるが,20nmでは,マルチ電子ビームでの直描,波長13.5nmのEUVを是非実用化して欲しいという,しかし,ロードマップではArF液浸と革新的なRET/Layoutと書かれており,イマイチ, スループットなどの点でMEBDSやEUVの実用化に賭け切れないというジレンマを感じるスライドになっています。そしてその先の14nmではMEBDSやEUVが必須となっています。

 TSMCは2011年の早い時期にASMLのEUVのプレ量産機であるNEX:3100を入れる予定で,このマシンはNA=0.25で60Wafer/Hのスループットですが,14nm世代のEUVとしてはNA=0.35で100Wafer/Hの能力が必要という図になっています。

 ArF液浸スキャナも六畳間と同じようなサイズのマシンですが,EUVのNXE:3100の写真を見ると,八畳間を2つ繋いで高さを1.5倍にしたようなマシンで,ArF液浸スキャナが$40M程度に対して,プレ量産機でもNXE:3100は$80Mとのことです。MEBDSマシンの値段は聞いたことがありませんが,1万以上の電子ビームを使って露光するマシンも同じ程度の値段なんでしょうね。

3.IniniBandのロードマップ

  2010年6月29日のThe RegisterがInfiniBandのロートマップに関する記事を掲載しています。

  スパコンのインタコネクトとしては定番となった感のあるInfiniBandですが,高性能分野ではイーサネットを上回るスピードで性能向上が続くと書かれています。

  現在は1レーンで10Gbpsの速度のQDRが主流ですが,このQDRまでは8B10Bコードという方法でクロックを埋め込んでいました。つまり10Bitを送るのですが,実際に 送れるデータは8Bit分で,残りの2ビットはクロックを伝送するために使っていました。これに対して,将来のInfiniBandでは64/66コーディングという方法が採用されるとのことです。64/66コーディングではクロックを送るロスは3%程度で,ほぼ,生のデータレートで情報が送れます。

  2011年にはコーディングを64/66に変更して14Gbpsのデータ伝送を行うFDRや,26Gbpsのデータ伝送を行うEDRが実用化されるというロードマップになっています。更に,その先は,2014年にEDRの2倍で16倍データレートのHDR,さらにその先に次世代を意味するNDRが書かれているというロードマップとなっています。

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