最近の話題 2010年10月30日

1.中国の天河1AシステムがLinpack 2.5PFlopsを達成し,次回Top500で首位に

  2010年10月28日にNVIDIAは同社のGPUを使う中国の天河一A号が2.507PFlopsを達成し,次回Top500で首位と発表しました。この件に関して,同日のCNETはTop500の主催者の一人であるDongarra教授のインタビュー記事を掲載していますが,Dongarra先生が首位ということを認めているので間違いありません。

  また,Dongarra先生は,米国以外でもこのようなことができる,これは米国に対するRed Flagだと述べており,かつての地球シミュレータショックと同じ受け取り方のようです。これは予想されたことですが,これを梃にスパコンロビーが動いて米国のスパコンにより多くの予算が注ぎ込まれることになるのでしょうね。そうなると,日本は更において行かれてしまいます。

  このTianhe-1Aシステムは2.93GHzクロックのWestmereを14336個,NVIDIAのM2050を7168個となっており,WestmereのデュアルソケットにM2050を1台という構成で,東工大のTSUBAE2.0に比べるとCPUリッチな構成です。Westmereが70.32GFLops,M2050が515GFlopsですから,全体ではピーク性能は約4.7PFlopsで,Linpack性能のピーク比は53.3%で従来よりも上がっています。

  CNETのDongarraインタビューで,中国はインタコネクトチップを独自に作り,InfiniBandの2倍のバンド幅と述べられており,先週の話題で書いた国産の「飛騰」プロセサは,プロセサではなくインタコネクトチップだったようです。2010年10月28日のEETimesは,Galaxyと呼ばれるこのインタコネクトのバンド幅は160Gb/sでQDRのInfiniBandの2倍と書いています。また,トポロジーはFat Treeだそうです。

  また,2010年10月28日のThe Registerはこの独自インタコネクトはArchと呼ばれ,ポートの双方向の合計バンド幅は160Gbit/sで,総バンド幅は64Tb/s以上。スイッチのレーテンシは1.57usと報じています。そして,Tianhe-1A全体では262TBのメインメモリと2PBのストレージを持ち,計算ノード筐体112本,ストレージ筐体8本,インタコネクトスイッチ筐体6本,I/O筐体14本で構成され,消費電力は4.4MWだそうです。

  それから,NVIDIAのプレスリリースではNVIDIAのGPUはTop3の内の2システムで使われていると述べられており,東工大のTSUBAME2.0は天河,Jaguarに次いで3位になるようです。

  しかし,1年前のTihanhe-1からCPUもGPUも変わっており,写真では筐体も違っているので,名前はAが付いただけですが,実質は全取り換えのようです。

2.米国はExaFlopsシステムの開発に$5B以上を投入か

  2010年10月29日のThe Registerが,米国はExaScaleスパコンの開発に$5B+を投入と報じています。

  実は,これはEuropean CommissionがIDCに委託したHPCのレポートの中の一部の記述で,レポート自体はヨーロッパのHPCをどうすべきかについて述べたもののようです。

  しかし,その中で,米国のDoEは複数台のExaScaleシステムを開発するために$5B以上の予算を要求すると述べています。今回の天河のTop500首位は,米国は2位で良いとは思っていないHPCロビーにとっては強い後押しになりそうです。

@798668

 

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