最近の話題 2010年12月18日

.ECが3PFlopsのスパコン導入を発表

  2010年12月15日のHPCWireがヨーロッパのスパコン整備を担当しているPRACE(Partnership for Advanced Computing in Europe)がSuperMUCと呼ぶ3PFlopsのスパコンをドイツのライプニッツスパコンセンターに導入すると発表したと報じています。稼働時期は2012年の予定で,世界一は狙えないもののかなり良い位置につけると思われます。

  システムの納入者はIBMで,iDataPlexに次世代のIntel CPU(Sandy Bridge,あるいはIvy Bridge)を搭載すると書かれています。また,チューリッヒのTEHのシステムで使われた60℃の水を使った水冷クーリングを採用すると書かれています。マイクロチャネルを使った冷却器をチップ接触させる冷却で,熱抵抗を減らし,チップ温度は上限である85℃を十分下回ると書かれています。

  冷却だけを考えると,このような高温の水を使うのは不利ですが,排水の温度が最大65℃と高いので,暖房などに排熱が利用できるというメリットがあります。

 そして,メインメモリは384TBで,10PBのGPFSのディスクシステムが付き,システムインタコネクトとしてはFDR(Fourteen Data Rate)のInfiniBandが使われるそうです。

  このスパコンの建設費は83Mユーロ(約92億円)で,このシステムを設置するためにセンターを拡張する工事に50Mユーロかかるとのことです。

2.IBMのWatsonシステムが人間のチャンピオンとJeopardy!で対戦

  2010年12月9日のHPCWireが,IBMのWatsonシステムが,Jeopardy!で,過去最多の$3Mあまりの賞金を獲得したBrad Rutter氏と最多連続チャンピオンのKen Jennings氏と来年の2月14,15,16の3日間対戦すると報じています。

  Jeopardy!は米国の人気クイズ番組で,主催者が答えを言い,回答者はそれに対する質問を述べるという独特の形式になっています。Wikipediaに載っている例では,「5280」という答えに対する正しい質問は「1マイルは何フィートか?」というように,質問に対する正しい答えを言うより難しい感じです。

  毎回,6つのジャンルの中から問題が出されますが,普通の英語で読み上げられる問題をWatsonは認識して,正しい質問形式の答えを出す必要があります。解答のニュアンスなども含めた自然言語の高度な理解と,幅広い雑学の知識との高速なマッチング能力が必要となります。

  今回の3ラウンドの勝負のチャンピオン賞金は100万ドルで,2位は30万ドル,3位は20万ドルだそうです。2人のプレーヤは賞金の50%,IBMは賞金の100%を慈善活動に寄付することを表明しています。

3.SGIも高速トレーディング用のオーバクロックマシンを発売

  10月16日の話題で,Approが高速トレーシング用にオーバクロックしたサーバを発売という話題を紹介しましたが,12月17日のThe Registerが,SGIもこのようなオーバクロックマシンを出すと報じています。

  EVGA社のマザーボードを使い,6コアで3.3GHzクロックが定格のWestmere-EPを2ソケットでという構成で,これを4.3GHzにオーバクロックしています。オーバクロックしないマシンの消費電力は300W程度ですが,このマシンは4Uという大きなサイズで,消費電力は700W程度とのことです。CPUの冷却は3Uの高さの大きなフィンを付けるというモデルと,水冷のブロックをチップにつけて冷やすモデルの2種類があるとのことです。

  当然,このようなオーバクロックはIntelの補償は受けられません。強力な冷却でチップ温度は定格内に抑えたとしても,トランジスタの接合やゲート絶縁膜に掛かる電圧は高くなっており,トランジスタや配線,ビアなどを流れる電流は増加しています。このため,HCIやNBTI,PBTIなどによるトランジスタの劣化やゲート絶縁膜のマイクロクラックなどトランジスタの劣化が加速されます。また,配線やビアも電流が増えるとエレクトロマイグレーションによる断線までの寿命が短くなります。

  通常は,このような劣化や消耗的な故障に対して,5年とか10年とかの寿命があるように設計されるのですが,電圧や電流を増やすと加速度的に寿命が短くなります。SGIとしてはCPUは少なくとも1か月はもつが,これまでの初期的なテストの結果からみると1年はもたないと考えていると書かれています。そして,より正確な寿命が分かったら,それに応じて値段を決めるそうです。

  まあ,1か月で交換となると結構大変ですが,1年も経てば,多少とも定格クロックが高いとか,オーバクロック幅が大きいとかの新しいプロセサが出て来て,システム交換するのでしょうから,1年もてば十分なのでしょうね。

@815964

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