最近の話題 2011年1月8日

.AMDがFusion APU 4品種を発表

  2011年1月4日にAMDは,CESのプレアナウンスでFusion APU 4品種を発表しました。この報道は色々なところに載っていますが,1月4日のPCWatchの記事が発表スライドなどが掲載され,もっとも充実しています。

  従来,Zacateと呼ばれていたものがE-Series,Ontarioと呼ばれていたものがC-Seriesという正式名称になりました。どちらも40nmプロセスを使用して,BobcatコアとGPUを搭載しています。E-SeriesはTDPが18W,C-SeriesのTDPは9Wとなっています。

  E-350は1.6GHzクロックのBobcatコアが2個,E-240は1.5GHzクロックで1コアです。C-50は1.0GHzクロックのBobcatコアを2コア,C-30は1.2GHzクロックのコアが1コアとなっています。Bobcatコアは32KBのL1$と512KBのL2$を内蔵しています。

  GPUの詳細は明らかにされていませんが,DX-11対応でSP数は80で,Tech On!の記事によるとE-Seriesではクロックが500MHz,C-Seriesが280MHzとなっているので,大衆向けのディスクリートグラフィックス程度の能力と思われます。

  なお,PCWatchの記事では,CPU-メモリ,CPU-GPU間のバンド幅が27GB/sとなっていますが,発表スライドでは2チャネルのDDR3 800-1066となっているので,CPU-メモリは17GB/sにしかなりません。

2.IntelがSandy Bridge 29品種を発表

  2011年1月5日にIntelはSandy Bridgeのコードネームで開発していたプロセサを第2世代のコアプロセサと銘打って開催中のCESのプレスカンファレンスにおいて発表しました。

  発表製品の一覧はこのリンクを参照して戴くとして,モバイル用は,2.5GHz(ターボ最大3.2GHz),2コア+3MB L3$,のi5-2520Mからクロック2.5GHz(ターボ最大3.5GHz),4コア+8MB L3$のi7-2920XMまで6品種が発表されました。これらのチップはIntel HD Graphics 3000を搭載し,GPUのクロックは650MHzで最大1300MHzまでターボが効きます。

  モバイル用チップは下位の2コアのチップは35W,4コアのチップは45Wで,最上位のi7-2920XMは55Wとなっています。また,1000ロットで購入時のお値段(単価)は最低が$225で,最高が$1096となっていますが,i7-2820QMはクロックが2.3/(ターボ)3.4GHzと若干低いものの,TDPは45Wでお値段は%586とほぼ半値です。

  また,モバイル用にはCPUクロックとGPUのターボ周波数が若干低い品種が4種発表されています。最下位のi3-2310Mは2.0GHzクロックでターボ無,2コア+3MBで,GPUターボが1100MHzとなっています。これもTDPは35Wです。

  そして,低電力モバイル用は,1.4/2.3GHzクロック,2コア+3MB,TDP 17Wのi5-2537Mから2.3/3.2GHzクロック,4コア+8MB,TDP 25Wのi7-2649Mまで5品種があります。HD Graphicsは3000ですが,ベースクロックは17W TDPn品種では350MHz,25W TDPの品種では500MHzと下がっており,ターボ周波数は品種によりますが,900MHzから1100MHzとこちらも低めに抑えられています。お値段は$250〜$346となっています。

  デスクトップ用は,2.93GHz,ダーボ無,2コア+3MB,TDP 65Wのi3-2100から3.4/3.8GHz,4コア+8MB,TDP 95Wのi7-2600Kまで8品種です。お値段は$117〜$317となっています。これらのデスクトップ用のチップはHD Graphics 2000で,ターボ周波数は品種によって1100MHz,あるいは1350MHzとなっています。

  ローパワーデスクトップ用は,2.5GHzクロックでターボ無,2コア+3MBのi3-2100Tから,2.8/3.8GHz,4コア+8MBのi7-2600Sまでの計6品種が発表されました。これらのプロセサはHD Graphics 2000でターボは1100MHz,あるいは1350MHzとなっています。そして,TDPは下位のTプロセサは35W,4コアのi5 2500Tは45Wで,その他のSプロセサは65Wとなっています。

  HD GraphicsのExecution Unit(NVIDIAのCUDAコア相当)は,2000は6個,3000は12個であり,モバイル用は内蔵GPUで間に合わせるように3000を使い,デスクトップは,ハイエンドのグラフィックスが欲しい人は外付けのディスクリートグラフィックスを買うので,エンタプライズ用PCの用途なら2000でも十分という考え方と思われます。

  製造プロセスは32nmで,これらの全品種でダイは共通という噂もあります。

  なお,CESでの発表ということもあり,Intelの発表文ではHDの映画をダウンロードして見られるIntel Insiderや,その映画をワイヤレスでセキュアにHD TVに転送して見るWireless Display(WiDi)機能が前面に出ています。また,ビデオの編集やトランスコードを高速化するQuick Sync Videoも目玉となっています。

3.NVIDIAが高性能ARMプロセサの開発を表明

  NVIDIAのCESでの発表は,大部分の時間はTegra2に割かれたのですが,最後に高性能のARMコアを独自に開発してGPUと同一チップに集積するというProject Denverが発表されました。同時に,NVIDIAはARMのアーキテクチャライセンスを取得したことが発表されました。Tegraの場合はコアのライセンスでARMの設計をそのまま使っているのですが,アーキテクチャライセンスの場合は,命令セットは互換にする必要がありますが,ハードの作りはフリーハンドになります。

  同社のブログにチーフサイエンティストのDally先生が書いていますが,現状でもARMはモバイル分野ではトップのアーキテクチャであるが,Project Denverは,ARMアーキの適用範囲をPCからサーバやスパコンまで広げると大変な勢いです。

  2010年11月20日の話題で紹介したように,NVIDIAはDARPAの契約に対するECHELONプロジェクトを発表しており,ここで使われるプロセサは,シングルスレッド性能の高い汎用プロセサコア8個と8CUDAコアのSMを128個搭載することになっています。2011年1月5日のThe Registerの記事によると,最初のDenverコアは2013年のMaxwell GPUと同時期ということになっているので,ECHELONではさらに後の世代が使われることになると考えられますが,NVIDIAとしては高性能CPUコアを自前で開発するという方向に舵を切ったようです。

  前の記事のように,AMD,IntelともにGPUを本格的にCPUチップに統合する製品が出てきており,今後,内蔵GPUの性能は徐々に上位に上がってくるのは明らかで,NVIDIAの市場は狭まるばかりです。Tegraは一つの回答ですが,この分野は競争相手も多くローマージンの市場で,大変です。

  ということから行くと,自前のCPUコアを持ってCPU,GPU複合チップを作り上位のコンピュータ分野に進出するというのは当然の戦略です。しかし,これはIntelやAMDに正面から決戦を挑むというアプローチで,チップ開発だけでなく,ソフトや開発ツール,マーケティングなどを含めて,非常に体力を必要とします。

  同日にMicrosoftがWindows 8では,ARMとARMベースのSoCをサポートすると発表しており,これはNVIDIAにとっては強力な援軍ですが,x86用とは別のバイナリが必要で,ドライバも別開発となり,単にOSの移植だけでない大きなハードルがあります。

 

  

 

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