最近の話題 2011年1月15日

.IntelがNVIDIAに$1.5Bの特許使用料を支払い

  FSBの時代にはNVIDIAはIntelプロセサ用のチップセットを作っていたのですが,IntelのプロセサがNehalemとなってインタフェースがQPIとDMIに移行してから,IntelはDMIはライセンス契約に含まれないと主張して,NVIDIAはチップセットが作れなくなりました。

  これで,IntelがチップセットのビジネスからNVIDIAを追い出し,自社のチップセットの市場シェアを向上させたのですが,この相互の特許ライセンス訴訟でIntelはNVIDIAのGPU関係の特許の使用権を失うことになり,Intel GPUの製造,販売に問題が出てきます。

  これを解決するため,今回,IntelはNVIDIAに5年間で$1.5Bの特許使用料を払うことになったと2011年1月10日のCNETなどが報じています。

  NVIDIAは,このお金を次世代のTegraやProject Denverに注ぎ込んで,チップセットビジネスが無くなったロスをカバーする製品を開発していくのでしょうね。

  特許について言うと,このように開発会社間では権利が入り組んでいるので,一方的にどちらがかが勝つということは少なく,クロスライセンス+ポートフォリオに差がある場合は現金での補償でカタが付くことが多いのですが,パテントトロルのように自社では何も作っておらず,特許も使ってないという会社が相手の場合は大変です。特許の趣旨からいえば,使わない会社が権利だけを主張するのは趣旨に反すると思うのですが,うまい線引きが難しい,米国のようにたくさんの特許を持っている国はそのメリットを減ずるような仕組みの変更には反対というような事情があるので,なかなか難しいのですが,特許法の原点の立ち戻って,パテントトロルを締め出すようにシステムを見直すというのは必要ではないかと思います。

2.AMDのDirk Meyer CEOが突然辞任

  2011年1月10日のEETimesなどが,AMDのDirk Meyer CEOの辞任を報じています。取締役会長のCalflin氏の発表では,AMDの企業価値を高めるためには新しいリーダーが必要と役員会が判断し,Meyer氏と合意したとなっています。

  しかし,APUが出荷に漕ぎ着け,業績も特に悪くはない状況でCEOが退任するのは異常事態です。そして,CFOが臨時CEOとなり,本当のCEOは,これから後任を探すということは,突然の辞任であることは明らかです。

  AMDは上記の趣旨の発表以外に辞任の理由を説明していませんが,一部の報道によれば,今後の成長市場と見られるタブレットやスマートフォン分野のチップの開発に消極的で,他社に遅れてしまったことを取締役会が問題視したのに対して,Meyer氏と取締役会の意見が対立し,解任されたという見方があります。取締役会から刺された(Knifed)という表現を使っている報道もあります。

  Meyer氏は,DEC Alphaを開発したエンジニアで,AMDに移ってHTを使うOpteronを開発し,当時は技術的にIntelに差をつけました約2年前にCEOになり,AMDのプロセサ開発の立て直し,半導体部門のGlobal Foundryへの分社と財務内容の改善などの実績を上げたのですが,開発方針の対立からAMDを去ることになったのは残念です。

3.IntelはIvy Bridgeのテストチップを試験中

  2011年1月14日のThe Inquirerが,1月13日の投資家向けの集まりにおけるIntelのOtellini CEOの発表を報じています。

  Sandy BridgeがCESで正式発表され,各社から一斉にSandy BridgeベースのPCが発表されていますが,この次世代のIvy Bridgeの設計は既に完了し,テストチップが作られ,評価が行われるところだそうです。

  そして,IvyBridgeに使われる22nmプロセスは歩留まりの改善を行っている段階で,今年後半には量産を開始できる予定とのことです。

4.Jeopardy!の予行演習はWatsonが勝利

  昨年12月18日の話題で紹介したIBMのWatsonシステムと過去の2人のチャンピオンとのJeoparty!のマッチは,2月14日〜16日に行われる予定ですが,それに先立って行なわれた予行演習を1月14日のThe Registerが報じています。

  Watsonは,2人の過去のチャンピオンのBrad Rutter氏とKen Jennings氏と,Jeopardy!の本番と同じ形式で対戦し,その結果は,Watsonは$4,400の賞金を獲得したのに対して,Rutter氏は$3,400,Jenningus氏は$1,200とWatsonの勝利に終わったとのことです。

  この予行演習は,人間側の出場者にコンピュータと対戦する機会を与え,コンピュータがどのようにプレイするかに慣れさせることが目的だそうです。

5.英国のBletchley ParkがEDSACの再建を計画

  2011年1月14日のThe Inquirerが,英国のコンピュータ博物館であるBletchley ParkがElectronic Delay Storage Automatic Calculator (EDSAC)を再建すると報じています。EDSACは水銀遅延線メモリを持ち,世界初の実用的なストアードプログラム方式のコンピュータです。

  EDSACの再建には25万ポンドと3年の歳月が必要とのことです。なお,名称にも含まれている水銀遅延線ストレージは水銀の環境問題があり再建には使用できないとのことで,他の方式のメモリが使われるようです。

  英国は歴史的なマシンの再建に熱心で,ロンドンの科学博物館はBabbageのDifference Engine No.2を再建していますし,Bletchley Parkは2次大戦の暗号解読コンピュータであるTuring BombやColossusを再建しています。

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