最近の話題 2011年1月29日

1.SonyがARMベースの次世代ポータブルゲーム機NGPを発表

 2011年1月27日のCNETがPSPの後継にあたるSonyのNGPの発表を報じています。発売時期は2011年の年末商戦の時期だそうです。

 CPUは4コアのARM Cortex-A9で,最先端のスマートフォンがせいぜい2コアであるのに比べると2倍のコア数を持っています。また,グラフィックスはImagination TechnologyのSGX543MP4+で,iPhone4のグラフィックスの4倍の性能と書かれています。これらのCPUとGPUはワンチップに集積されているようですが,詳細は発表されていません。

 要するにハードウェア的にはスマートフォンと同じ汎用ARM CPUコアとのPowerVR GPUコアを使用し,数を増やしてスマートフォンの2〜4倍の性能を持たせたものと言えます。しかし,スマートフォンの進歩は速いので,NGPが従来のゲーム機のように長い更新周期になるとすると,すぐに追い越されてしまいます。2011年1月28日のPCWatchに後藤さんが書いているように,ゲームの操作性ではスマートフォンには追いつかれないとしても,なかなか難しい戦いになりそうですね。

 まあ,スマートフォン側のゲームもCPUやGPUのコア数が倍増したら,短い期間でそれに対応できるかどうかは疑問ですし,機種を変えたらキャラクタが倍速で動かれても困るので,単純には進歩しないと思います。

2.スパコンへの投資と論文数や研究資金獲得に相関

 2011年1月24日に,アーカンソー大のApon教授らが,米国の研究機関のスパコへの投資がNSFの新規研究資金の獲得と発表論文数と統計的に意味のある相関が得られたと発表しました。

 しかし,投資を継続することが重要で,スパコン環境を維持しなかった研究機関では,2年後には研究資金獲得や論文数の減少が見られたとのことです。

 どうのように統計を取るのか難しそうですが,まあ,スパコンが研究の加速に役に立つという結論は,一般的な期待と矛盾しないと思います。

3.Microsoftのデータセンターとサーバの方向性

 2011年1月27日のEETimesがLinley Data Center ConferenceでのMicrosoftのデータセンターグループのDileep Bhandarkar氏の発表について報じています。

 Bhandarkar氏は,過去に何回か命令アーキテクチャの変更を経験してきたが,大変であった。命令アーキテクチャの変更を決断するには性能/価格や性能/電力で2倍かそれ以上のメリットが無いと引きわないが,ARMはその基準に達していないと切り捨て ています。

 そして,IntelのAtomやAMDのBobcatのような省電力コアを16個搭載し,I/Oインタフェースも集積したチップが最適とのことです。これをハーフサイズのマザーボードの2個搭載し,各チップに4枚のLow Power  DIMMを接続します。19インチラックにこのハーフサイズボートを96枚搭載して,ノード間の接続は,現在はGbit Ethnernetを使っているが,2年後には10GbEに移行する そうです。

 このサーバ仕様は他社にも採用して貰って,業界標準にして量産でコストダウンを図りたいと述べています。これは秘密主義のGoogleとは対照的なアプローチで す。

 データセンターの消費電力を減らすため,外気温が低い場合には外気を使う とか,データセンターの温度を華氏85度(39.44℃)にするなどの方法を採り,コンテナも現在より大型の20フィート長で160Kw仕様のものを検討していると述べられています。

4.IBM Fabグループの20nm以降のロードマップ

 2011年1月24日のSemiAccurateがCommon Platform ConferenceでのIBMのキーノートを報じています。

 それによると,2012年に20nm,2014年に14nm,2016年の11nmという予定で,32/28nm世代は第2世代液浸スキャナを使うのですが,20nm世代ではSource Mask Optimizationと第3世代液浸,14nm世代では第4世代液浸と二重露光を採用するそうです。EUVは開発に進捗次第で,14nm世代の一部の層の使用できるかも知れないが,11nmでもダメで二重露光に頼らざるを得ないという見通しとしています。

 SMOですが,例えば,長方形のパターンを投影すると角が丸まってしまうので,ドッグボーンとかミッキーマウスとか言って,マスクパタン-ンの角に張出しを付けて丸まりを抑えるということがやられていました。このようなマスクパターンの補正は高度化し,波長オーダのパターンを露光するマスクでは光の干渉をシミュレートして,干渉した結果が意図したパターンに近づくようにマスクパターンを変更しておくという技術があります。また,照明光の方向や照度分布も解像度に影響するので,リング状の光源を使うこともかなり以前から行われています。これを更に進化させ,ディジタルに光源の照度分布を変えるという技術が出てきています。これらを組み合わせた露光の最適化技術がSMOと呼ばれていますが,IBMのいうSMOがどのような技術であるかの詳細は分かりません。

 トランジスタは22nmでは現在と同じバルクとPDSOI CMOS,14nmはFinFET,11nmではFinFETとExtremely Thin SOI,8nmと5nm世代はシリコンナノワイヤ,そして3nm世代はナノチューブやグラフェンなどのカーボン材料と述べられています。

 Metal Gateの製法に関しては,32/28nmでは現用のGate Firstを使い,20nm世代ではGate Lastに変更するそうです。Gate Firstはセルフアラインでソース,ドレインを形成するのでトランジスタの性能が高く,密度的にも有利なのですが,その後のプロセス温度に耐えるゲート材料が必要,また,低温プロセスにする必要がありプロセスが難しく歩留まりが下がるという難点があります。一方,Intelなどが使っているGate Lastは最初はダミーのゲートを作り,高温のプロセスが終わってからダミーゲートを取り除いて,本物のハフニウム系の絶縁膜とメタルゲートを形成するので,若干,寸法精度が悪く,トランジスタの寄生容量が増える,サイズが大きくなるという欠点があります。まあ,しかし,微細化が進むと,プロセスマージンの広いGate Lastの方がベターということなのでしょうね。

@829322

inserted by FC2 system