最近の話題 2011年2月12日

1.富士通とOracleがSPARC関係の協業の延長を発表

  2011年2月9日に富士通は,OracleとのSPARCの共同開発の継続と,共同開発やマーケティング,販売で広範囲な販売契約について合意したと発表しました。

  そして,SPARCプロセサに関しては,既に発表しているロードマップに沿って,今後3年間で15倍に性能を引き上げる開発を行って行くと述べています。このロードマップに関しては,昨年9月25日の話題で紹介しています。

2.TIがOMAP 5シリーズプロセサの詳細を発表

  2011年2月7日のSemiAccurate2月10日のマイコミが,TIのOMAP 5シリーズの発表を報じています。

  Texas Instrumentsは携帯用プロセサの大手で,最新の製品はARMのCortex A9のデュアルコアとPowerVR SGX540グラフィックコアと山盛りのI/Oインタフェースを集積したOMAP 4です。しかし,OMAP4を使ったスマートフォンは,まだ,市場に出てきていない状況ですが,その次のOMAP 5の詳細を発表したというものです。

  OMAP 5430と5432という2種類の製品を開発中で,5430はCotex-A15を2コアを搭載し,クロックは2GHzに達するとのことです。また,Cortex-M4を2コアを搭載し,リアルタイム処理をメインプロセサからオフロードし,リアルタイム性能を高めています。そして,メモリはLPDDR2を2チャンネルサポートし,Packge-on-PackageでDRAMを搭載します。使用するプロセステクノロジは28nmです。

  グラフィックスもデュアルコアのSGX 540-MPxにアップグレードされ,1080p60と1080p30で3D表示のビデオ処理のアクセラレータを搭載します。

  OMAP 5432はDDR3とDDR3L DRAMをサポートするチップで,タブレットなどのスマートフォンより大型の機器向けです。

  結果としてOMAP 4と比較して60%消費電力を削減し,プロセサ処理性能は最大3倍,グラフィックス処理性能は最大5倍改善されているとのことです。

  ただし,OMAP 5プロセサは今年後半のサンプル出荷,量産出荷は2012年後半とのことで,これを搭載したスマートフォンなどの製品が出てくるのは少なくとも1年半以上先になります。

3.WatsonのJeopardy!予行演習のビデオ

  1月15日の話題でJeopardy!の予行演習はWatsonが勝ったことを紹介しましたが,2011年2月9日のHPCWireがそのときのビデオを掲載しています。長さは3分40秒ですから,興味のある方は是非見て下さい。迫力ある展開で面白いです。Watsonの解答音声は合成音で,人間の解答者のように意気込んだ感じがないのが,余裕のように感じられます。

  ちなみに,私は,どの問題も分かりませんでした。

4.続Sandy Bridgeのチップセットのバグ

  読者の方から,2011年1月31日のAnandtechの記事にバグの内容の記述があるというメールを戴きました。

  それによると,問題はSATA Uポートのクロックを発生するPLLにあるとのことで,先週の話題で書いた,マイグレーションで配線が切れるという推測は,間違いで した。PLL部分にゲート酸化膜の薄いトランジスタが使われており,時間が経つとリーク電流が多くなり,結果としてSATAのビットエラーレートが増えたり,最悪,動作しなくなるというのは理解できます。I/OやPLLなどのアナログ的な回路にはロジックより高い電圧を使い,そのためにゲート酸化膜の厚いトランジスタを使うというのは使うというのは 一般的です。

  AnandTechの記事では,以前のSATA Uマクロでは使われていたがCougar Pointでは不要になった回路で,このバグの修正は,単にそのトランジスタへの電源の供給を切ることであると書かれています。電源を切るだけならメタル修正で可能なのは当然ですが,1個2個のトランジスタの電源接続を切るというのは普通は下層のメタル修正で,上層のメタル修正でできるというのは,ちょっと理解しがたい説明です。また,このバグはStep-Aでは存在せず,Step-Bで導入されてしまったと書かれて います。

  これを文字通り受け取ると,以前の設計では使われていた回路ではこの問題は無かった。Cougar Pointでも最初のStep-Aでは,この問題は無かった。Step-Bでの変更でこの回路が使われ問題が出た。しかし,本来,この回路は不要である。ということになりますが, これでは判じ物で訳が分かりません。

  前回の間違いに懲りずに仮説を立てると,本来のPLLの動作とは関係のないアイドル時にPLLを止めて省電力にするというような回路をStep-Bで組み込んだが,この部分にPLL用のアナログトランジスタではなく,ゲート絶縁膜の薄いロジックトランジスタを使ってしまった。というようなバグではないかと思われます。これなら,その回路の電源を切ってPLLを止める機能を殺せば問題なく動作します。

  また,この手のPLLのバグであれば,高温,高電圧の加速試験で見つかる筈ですが,これはStep-AのチップでやってOKであれば,Step-Bでは省略というのは普通であり,このバグがIntelのQAをすり抜けたというのは理解できます。

5.バグが影響しない用途にはCougar Pointの出荷を再開

  2011年2月7日のEETimesがCougar PointのSATAのバグが影響しない使い方をしている装置向けの出荷を再開したと報じています。

  6GbpsのPort0と1だけを使い,バグが影響するPort2〜5は使わないノートPCなどではバグは問題になりません。PCメーカーとしては早く製品を出したいので,このような措置が取られるのは当然です。そして,ユーザにとっても別段問題はないので,正しい措置だと思います。ただし,ライバルのAMDとしては,少しでも遅れてくれた方が望ましいでしょうが。

  また,このEETimesの記事では修正版の出荷開始は2月中となっており,当初の発表の2月の遅い時期よりも1〜2週間前進しています。

inserted by FC2 system