最近の話題 2011年3月19日

1.M9.0の巨大地震で東北地方に大被害

  8000人以上の方々が亡くなり,行方不明の方も含めると死者が2万人にもなろうかという大災害で,まだ,ライフラインが復旧せず,物資も不足な避難所で多くの方々が寒くて不便な生活を強いられています。また,福島の原発の状況は極めて不安点で,冷却が出来ずに使用済み核燃料棒が破損すれば,高濃度の放射性物質がばらまかれてしまう恐れがあります。 一昨日から放射線濃度の高い中で危険を冒してのヘリや消防車での放水が始まりました。関係者の勇気と努力には頭が下がります。しかし,1日の100トンの水が必要というのと比較すると本当に焼け石に水という感じで,極めて心配です。

   追加です。初日のヘリからの放水の映像を見ると,頑張った隊員の方には申しわけないですが,殆ど入ってない感じで,焼け石に水だったのですが,3月19日の自衛隊の消防車の映像を見ると,1割,床を伝ってという分も含めると,もう少しプールに入っているかなという感じがしました。東京消防庁の屈折 放水塔消防車の放水映像は,まだ,見ていませんが,20mの高さから注水すれば,もっと効率はよさそうです。それで毎分3トンで13時間なら合計2300トンで,歩留り1割としても230トンが使用済み燃料のプールに入った計算で,1日の蒸発量の2倍程度です。この放水車とポンプ車を買う稟議を通した人には国民栄誉賞をあげるべきだと思います。体を張って頑張った隊員も偉いけど,この消防車がなければ話にならなかったわけですから。

  また,3月18日の毎日新聞が,3月14日の夜に,東電が福島原発から職員全員を退去させるという打診を行ったのに対して,菅首相がこれを拒否したと報じています。東電としては,職員に死んでもやれとは言えないでしょうが,後は,政府と自衛隊で何とかしてというのも無責任です。

  松岡先生のTwitterで話題になっているUCSBのBenjamin Monreal準教授の福島原発事故の評価のスライドをKEKの野尻先生らが日本語に翻訳されたものが公開されています。分かりやすいと思います。

   国立天文台の牧野先生のブログに原発事故関連のリンクや,先生の分析などの大量の情報が載っています。Grapeのサーバが落ちているのか繋がりにくい状況ですが,繋がったら見てください。通常は一日に数行しか書いてないことが多いのですが,事故以来,山のように書いておられます。 と書いたら,牧野先生からメールがあり,ミラーサーバが立ち上がっているそうです。こちらはアクセスできました。また,今回の原発事故を考察したページも公開されています。

  それから,「コンピュータ設計の基礎」の原稿料が入ったので,ささやかですが,その中から5万円を日本赤十字に,そして,Delta航空からもマイレージの寄付のe-mailが来ていたので,アカウントに残っていた4万6000マイル余りを寄付いたしました。いささかでも復興に役に立てればと思っております。

  現金での寄付というと,なかなか余裕がないのですが,航空会社のマイレージならばという方は多いのではないでしょうか?読者の皆様もマイレージの残りをチェックされ,可能ならば寄付を検討戴けませんでしょうか?Delta以外の航空会社もやっているようです。

2.電子部品にもパニック買い

  首都圏でも,米やカップ麺などの食料品,乾電池,懐中電灯などの非常用の物資が店の棚から消えていますが,電子部品についてもパニック買いが入り,NAND FlashやDRAMなどのスポット価格が急上昇していると,2011年3月17日のEETimesが報じています。

  東北地方にある半導体工場は地震での直接のダメージを受けていますし,直接のダメージはなくても東日本の会社は電力供給が制限されることから,生産量が落ちると予想されます。

  また,信越半導体とSUMCOはシリコンウェファの大手ですが,今回の地震の影響を受けた地域の工場で世界の需要の20%が生産されていたとのことで,原料ウェファの供給も厳しくなる可能性があります。また,3月14日のEETimesの記事によると,LSIを封入するBTレジンというエポキシ樹脂材料は,世界の使用量のほぼ全量を三菱ガス化学の2工場で製造していたとのことです。三菱ガス化学によると,福島県西白河にある製造子会社のエレクトロテクノ社は 復旧の努力中で4月上旬から一部の製造を開始予定とのことです。もう一つの三菱ガス化学の鹿島工場 は損傷は大きくないものの原料供給の見通しが立たず,再稼働には時間がかかるとのことです。

3.iPad2も日本製部品の供給に問題か

  2011年3月17日のEETimesがAppleのiPad2も日本からの供給に頼る部品があり,供給に問題があると報じています。プロセサはSamsung製ですが,NAND Flashは東芝,DRAMはElpidaで,電子コンパスは旭化成エレクトロニクスの子会社のAKMセミコンダクタ,タッチスクリーンのオーバレイガラスは旭硝子,リチウムイオンバッテリーはApple Japanの名前があり日本製とみられるそうです。

  FlashやDRAMは他社からの調達が可能ですが,その他の部品の代替調達は容易ではありません。これらのサプライヤーの工場がすべて被害を受けているわけではないのですが,原料の調達などが制限を受ける可能性があります。

4.オークリッジ国立研究所が20PFlopsマシンを調達

  2011年3月7日のHPCwireが,オークリッジ国立研究所がピーク20PFlopsのTitanと呼ぶスパコンシステムを調達すると報じています。Top500 2位のJaguarを持ちCrayとのパイプの太いオークリッジ研ですから,TitanもCray製で,現在のXE6に大量のNVIDIAのTesla GPUをつけたシステムと想像されます。2011年中には一部が設置されプロトタイプとして運用が始まり,2012年に20PFlopsのフルシステムになる予定です。

  ピーク性能はBG/Qを使うSequoiaと同じ20PFlopsですが,BlueGene系のシステムはピークの80%程度のLINPACK値を出しているのに対して,Tesla GPUベースのシステムは50%程度しか出せていないので,TitanはLINPACKではSequoiaに勝てないとみられています。

  お値段は$100Mとのことで,$200Mを超えるといわれるBluewatersよりは,かなり安上がりです。我が国の京コンピュータの総額1000億円は建屋の建設費や技術の開発費も含んでいるので単純な比較はできませんが,平成22年度予算と23年度予算案のシステム製作費(システムソフトウェアの開発費を含む)の合計は457億円(約$570M)なので,かなり高くついています。

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