最近の話題 2011年3月26日

1.富士通が欧州でスパコンに再参入

  2011年3月22日に富士通は,HPCウェールズから総額£15Mでスパコンシステムを受注したと発表しました。ハードウェアとしてはBX 900シリーズのブレードサーバ約1400ノードからなり,ピーク性能は190TFlopsと発表されています。なお,BX 900はIntelのXeonを使うサーバで,富士通が開発中のKコンピュータとは別物です。

  このスパコンは英国のウェールズ地方のCardiffとSwansea大学を中心として,その他の拠点にも一部のノードを配置するハブとスポークの形態をとると報道されています。そして,ノード間の接続はMellanox社のInfiniBandで接続されるとのことです。

  なお,£15Mは日本円に換算するとほぼ20億円で,この金額には2015年までの4年間の保守費を含んでいます。

  ベクトルスパコンのVPPの時代には富士通は欧州でスパコンビジネスを行っていたのですが,その後,撤退し,今回の受注は10年ぶりの欧州カムバックとなります。

2.豊橋技術科学大がシリコン上にV-X属半導体の成長に成功

  2011年3月24日のEETimesが,豊橋技術科学大学の若原教授のグループがシリコンウェファ上にV-X属半導体を成長させることに成功したと報じています。

  100面から4度ずらせたn型シリコンの上に,V-X-N合金を使うMigration Enhanced Epitaxyという技術でGaPの薄い層を成長させて格子定数を合わせて,その上にn型のGaPN(ガリウム,リン,窒素)を成長させ,その上にp型のGaPNを成長させています。さらに,その上にn型のシリコンを成長させています。

  そして,一番上のシリコン層にPMOSトランジスタを作り,表面のn型シリコンをエッチングしてGaPN層を露出させた部分にGaPNのLEDを作ったチップをデモしたとのことです。

  IntelはInPのウエファをシリコンウェファにガラス系の糊で貼り付けるという方法で,格子定数を合わせて成長させることには成功しておらず,V-X属半導体を成長を直接成長させるというのは世界初ではないかと思います。ただし,成長させる物質が違うので,今回のGaPNでの成功がInPにそのまま適用できるというわけではないと思います。

3.OracleがItanium向けのソフトウェア開発を停止

  2011年3月23日のEETimesなどが,OracleのItanium向けのソフトウェアの開発を停止したという発表を報じています。Oracleは,IntelのManagementが,Intelはx86にフォーカスしており,Itaniumは終わりが近いと述べたといっています。そして,MicrosoftもRedHatもItanium向けの開発はすでに中止しているし,HPのApotheker CEOの最近の将来計画の詳細な発表でもItaniumに触れいていないと,Itanium向けの開発の停止を正当化しています。

  Itaniumのサーバを製造していた各社も,QPIに移行したTukwilaを使うサーバを出しておらず,Itanium 9300ベースのサーバを発売しているのはHPだけ主にはHPで,このオラクルの開発停止はHPとIntelにとってはかなりの打撃です。 なお,国内ではNECと日立はTukwilaベースの製品を出していますが,富士通はやっていないようです。

  オラクルはIntelの幹部が終わりが近いと述べたと言っていますが,2011年3月24日のThe Registerは,IntelとHPの反論を掲載しています。Intelは今年のISSCCで次世代のPoulsonを発表し,さらにKittsonの開発を進めており,Itaniumの将来に完全にコミットしているというOtellini CEOのステートメントを出しています。

  また,2011年3月24日のThe Inquirerは,HPは「オラクルの反顧客的アクションに対して顧客を守る」と題したプレスリリースを出し,オラクルのこの反顧客的な動きは,急落するSPARCサーバの市場シェアを回復するためにオラクルのサーバを買わせようとするものだという反論を掲載しています。

4.Intelのスマートフォンの責任者が辞任

  2011年3月23日のThe Registerなどが,IntelのUltra Mobility Groupの責任者のAnand Chandrasekher氏が辞任したと報じています。Ultra Mobility Groupはスマートフォンなどを担当する部門ですが,MeeGo OSを一緒に開発していたNokiaがMicrosoftに寝返ってしまい意気が上がりません。また,Atomベースの製品はNetbookではそこそこ成功したのですが,スマートフォンなどのより小型の携帯機器市場では,目立った成果がありません。

   Chandrasekher氏は,Barrett前CEOの技術補佐を務め,一時はOtellini氏の次期のCEO候補の最右翼と目されていた時期もあったのですが,このところ存在感が薄くなっていました。辞任の理由が自発的なものか,詰め腹を切らされたのかは分かりません。後任は,アーキテクチャグループのVPであるMike Bell氏とDave Whalen氏が共同GMになるとのことです。

@848244

  

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