最近の話題 2011年4月9日

1.IntelがXeon E3とE7シリーズプロセサを発表

  2011年4月5日にIntelは,Xeon E7シリーズとE3シリーズのサーバ,ワークステーション用プロセサを発表しました。Xeon E7シリーズはWestmere EXベースの製品で,最大10コア,20スレッドサポートとなっています。クロックは1.73GHzから2.4GHzの範囲で,大半の品種が105W,あるいは130Wという高電力プロセサです。Intelのネーミングですが,最初の数字の8は8チップ以上のマルチチップ,4は4チップ,2は2チップ構成をサポートしていることを意味しています。

  E7シリーズは7510または7512メモリバッファチップを経由してDIMMを接続する構造で,CPU 1チップあたり16枚のDIMMを接続することができるようになっています。7512は1.35Vのメモリをサポートしており,1.5Vのメモリと比較するとDIMMあたりの消費電力を1W削減できます。1Wは大したことはないように思うかも知れませんが,16DIMMでは16Wの節約ですから,100W程度のCPUの電力に比べても無視できない程度の節約になります。

 一方,E3シリーズはSandy Bridgeベースの製品で,シングルチップのマイクロサーバやワークステーションを主要な用途と想定しています。そして,最後の数字が5の品種はP3000 Intel HD Graphicsを内蔵しています。また,45Wと低消費電力のE3-1260LはGPUは2000となっています。

 
Processor
Frequency
Smart
Cache


TDP
Turbo Boost Technology;
Hyper-Threading Technology

Cores/
Threads

lkU Price
lnte1Gxeon Processor E7-8870 2.4 GHz 30M 130W Y 10/20 $4,616
lnte1Gxeon Processor E7-8860 2.26 GHz 24M 130W Y 10/ 20 $4,061
lnte1Gxeon Processor E7-8850 2 GHz 24M 130W Y 10/20 $3,059
lnte1Gxeon Processor E7-8830 2.13 GHz 24M 105W Y 8/16 $2,280
lnte1Gxeon Processor E7-8867L 2.13 GHz 30M 105W Y 10/20 $4,172
lnte1Gxeon Processor E7-8837 2.67 GHz 24M 130W Turbo; no HT 8 $2,280
lnte1Gxeon Processor E7-4870 2.4 GHz 30M 130W Y 10/20 $4,394
lnte1Gxeon Processor E7-4860 2.26 GHz 24M 130W Y 10/ 20 $3,838
lnte1Gxeon Processor E7-4850 2GHz 24M 130W Y 10/20 $2,837
lnte1Gxeon Processor E7-4830 2.13 GHz 24M 105W Y 8/16 $2,059
lnte1Gxeon Processor E7-4820 2 GHz 18M 105W Y 8/16 $I,446
lnte1Gxeon Processor E7-4807 1.86 GHz 18M 95W Noturbo;HT 6/12 $890
lnte1Gxeon Processor E7-2870 2.4 GHz 30M 130W Y 10/20 $4,227
lnte1Gxeon Processor E7-2860 2.26 GHz 24M 130W Y 10/20 $3,670
lnte1Gxeon Processor E7-2850 2GHz 24M 130W Y 10/20 $2,558
lnte1Gxeon Processor E7-2830 2.13 GHz 24M 105W Y 8/16 $I,779
lnte1Gxeon Processor E7-2820 2 GHz 18M 105W Y 8/16 $I,334
lnte1Gxeon Processor E7-2803 1.73 GHz 18M 105W Noturbo;HT 6/12 $774
lnte1Gxeon Processor E3-1280 3.50 GHz 8M 95W Y 4/8 $612
lnte1Gxeon Processor E3-1275 3.40 GHz 8M 95W Y,P3000 4/8 $339
lnte1Gxeon Processor E3-1270 3.40 GHz 8M 80W Y 4/8 $328
lnte1Gxeon Processor E3-1260L 2.40 GHz 8M 45W Y,2000 4/8 $294
lnte1Gxeon Processor E3-1245 3.30 GHz 8M 95W Y 4/8 $262
lnte1Gxeon Processor E3-1240 3.30 GHz 8M 80W Y 4/8 $250
lnte1Gxeon Processor E3-1235 3.20 GHz 8M 95W Y,P3000 4/8 $240
lnte1Gxeon Processor E3-1230 3.20 GHz 8M 80W Y 4/8 $215
lnte1Gxeon Processor E3-1220L 2.20 GHz 3M 20W Y 2/4 $189
lnte1Gxeon Processor E3-1225 3.10 GHz 6M 95W NoHT,P3000 4 $194
lnte1Gxeon Processor E3-1220 3.10 GHz 8M 80W NoHT 4 $189

  E3シリーズですが,4コアで消費電力に余裕があるということもあり,低電力のL品種を除いて3.1GHz以上と高クロックの仕様となっています。また,同じクロックの品種でP3000 GPUの有無を比べると電力が15W違っており,これがGPUの消費電力のようです。そして,最高速の3.5GHzクロックのE3-1280はGPU無で95Wとなっており,3.4GHzのE3-1270と比べると3%弱のクロックアップに15W(20%弱)を使っているという計算になります。

  今回の発表ですが,タイトルはPerformance + Reliability + Security = Intel Xeon Processor Formula for Mission-Critical Computingとなっており,信頼性(Reliability)が高く,ミッションクリティカルに使えると書かれており,これではItaniumの出番はありません。OracleがItaniumには先がないとの印象を持ち,サポートをやめたのももっともという気がします。

2.Itaniumの将来は?

  2011年4月7日のThe RegisterがItaniumの将来に関する記事を載せています。

  前述のように,信頼性の点においてもXeonがItaniumに迫ってきているのですが,Intelの公式ポジションは2012年にPoulson,2014年にKittsonを出すことになっています。そして,HPはItaniumベースのサーバを2010年までは供給すると表明しているので,これに従えば,さらに1〜2世代のItaniumチップの開発が必要になります。

  しかし,IntelやAMDのx86は来年までのロードマップしか発表していませんし,IBMはPOWERのロードマップは発表していません。2010年9月25日の話題で紹介したように,SPARCは2015年までのロードマップを発表していますが,Itaniumはこれと同程度までのロードマップが発表されているということになり,Itaniumのロードマップは発表という点ではx86系よりはっきりしています。

  興味深いのはNEC AmericaのIT Platform GroupのGMのMike Mitsch氏の発言で,NECはNECチップセットを使ったQuickpath InterconnectべースのItaniumチップをサポートすると述べています。この発言がTukwilaを指すのか,Poulsonを指すのかは明確ではありません。更に興味深いのは,The Registerは,このItaniumベースのマシンはGCOSとACOSを走らせるNECのメインフレームと書いており,QPIサポートのマシンはGCOS,ACOS用でLinuxやWindowsをサポートする計画はないと書いている点です。

  NECはACOS2はiAPX-7000,ACOS4はi-PX9000というハードウェアで動作します。i-PX9000のCPUがどのようなものであるかは公表されていないのですが,名称から見て,Itanium 9000シリーズのCPUである可能性は十分にあります。Unisysは昔のメインフレームの命令アーキをx86でエミュレートしているので,ACOSの命令アーキをItaniumでエミュレートは十分ありうる話です。

  なお,この製品はACOS,GCOS用でLinuxはサポートしないと述べられていますが,NECはItanium 9300(Tukiwla)ベースのNX700iシリーズのunixサーバを発売しています。また,日立もHA8500というTukwilaベースのUnixサーバを発売しています。3月26日の話題では,思い込みで日本の各社はTukwilaベースの製品は出していないと書いてしまいましたが,訂正いたします。一方,富士通は東証などにはItaniumベースのPRIMEQUESTサーバを納めた筈ですが,現在のPRIMEQUESTのページではItaniumベースの製品は消えてしまっています。

  Intelのサーバプロセサの責任者であるKirk Skaugen氏は4月12〜13日に開催される北京IDFでItaniumの将来に関する発表がなされると述べているので,来週には,もう少し方向性が明らかになると期待されます。

3.Facebookがサーバ仕様を公開

 2011年4月7日のEE TimesなどがFacebookのサーバとデータセンターの仕様公開を報じています。FacebookはOpen Computeプロジェクトを推進しており,同社のエネルギー効率の高いサーバとデータセンターの仕様を公開しました。

 サーバのマザーボードはAMD製とIntel製がありますが,どちらも12.5VDC入力で同じサイズになっています。サーバのシャシーはトレイのような感じで,上蓋や全面パネルがなく,マザーボードや電源,HDDのどはむき出しの状態です。サーバの厚みは66mm(2.6インチ)という独特のサイズで,42インチの標準ラックに30台搭載されます。また,ラックの上部には2台のスイッチが載ります。そして,ラックは通常のラックを3本連結したTriplet Cabinetとなっており,これに90台の2ソケットサーバを収容できます。

  これらのマザーボートもカスタムで,サーバに必要な機能だけに絞って通常のマザーボードと比較すると部品数を22%減らして,重量を6ポンド削減しているとのことです。AMD製はTDP 85WのOpteron 6100シリーズのプロセサを2個搭載し,24枚のDIMMを接続できます。また,Intel製はTDP 95WのXeon 5500シリーズのプロセサが2個でDIMM枚数は18枚となっています。そして,省電力という点で,プロセサに電源を供給するVRMは30%〜90%負荷の範囲で91%以上の変換効率を持つことと規定されています。

 そして,電源もカスタムで開発したもので,入力は277VACで出力電圧は12.5Vで,450W出力となっています。変換効率は20%負荷で90%以上,50%負荷で94%以上,100%負荷で91%以上と規定されています。また,AC入力だけでなく,48Vのバッテリを接続してバックアップできるようになっており,停電の場合は自動的にバックアップに切り替わり連続して運転できるようになっています。

  また,データセンターは外気で冷却できるようになっており,オレゴン州のPrinevilleに建設した新しいデータセンターではPUEが1.07と言っています。普通のデータセンターはPUEは1.5程度で,古いセンターでは2を超えるのに比べると大幅に高い効率です。ただし,外気で冷却する場合は気温が影響するので,オレゴンのように比較的涼しい地域でないとこの値は実現できないと思われます。

  Googleもカスタムのサーバやで外気で冷却するデータセンターを作っているのですが,これは自社の競争力の源泉の一つということで,その仕様は公開していません。また,マイクロソフトはNDAベースでデータセンターの仕様を提供しているのですが,Open Computeプロジェクトのように一般公開はしていません。

4.TSMCのChang CEOの基調講演の7つのポイント

 2011年4月5日のEE Timesが,TSMCのTechnical ConferenceにおけるMorris Chang CEOの基調講演の7つのポイントをまとめています。

 それによると,第1点は東日本大震災の影響は,TSMC自体はほとんど克服したが,顧客のサプライチェーンの問題があり,1〜2四半期は影響がでる。しかし,それより長引くことはないという意見です。第2点は,半導体業界の見通しで,日本の被災とその他の影響を込みにして,今年の成長率を4%と予測しています。これは数か月前にTSMCが出した7%という成長率からはかなり下がっています。第3点は成長のドライバーについてで,スマートフォンやタブレットがPC,携帯電話に続く第3のキラーアプリになっているとしています。

 第4点はTSMCの28nmプロセスの開発状況で,既に75品種のテープアウトを受け取ったことを明らかにしました。そして,28nmのHigh-K,Metal Gateプロセスについても評価が終わり,量産を開始できる状態になっていると述べています。

 第5点は3D実装に関してで,TSMCはThrough Silicon Viaの開発に多額の開発費を注ぎ込んでおり,System-Level-Scalingというパラダイムシフトを実現する技術と位置付けていると述べています。

 第6点は450mmウエファに関してで,450mmの実用化には多くのチャレンジが残っているが,2013-2014年ころにパイロットラインを作り,2015-2016年ころに量産に移すという計画を変えていないとのことです。

 第7点は技術的競争力に関してで,TSMCは競合するファウンドリ他社をリードしていると述べています。

 TSMCは40nm世代ではプロセスが安定せずトラぶったのですが,28nmプロセスの開発はそれに比べると順調というのが一般的な見方です。また,他社は75ものテープアウトを受け付けているということはないので,その点では,TSMCがリードしています。

 しかし,High-K,Metal Gateをまともに量産出荷しているのはIntelだけで,TSMCを含めて他社はやっと,立ち上がり始めたという状況で,どこが安定してHigh-K,Metal Gateを量産できるようになるかは,まだ,はっきりしません。

5.NVIDIAのTegra 3はNEONを実装か

  2011年4月6日のSemiAccurateが,NVIDIAのTegra 3のARMコアはNEON命令セットを実装すると書いています。NEONはx86のSSEに相当する64/128ビットのSIMD命令です。従来,NVIDIAは同社の内蔵GPUと機能が重複するということでNEONを実装してこなかったのですが,Tegraのアプリケーションを作る側からいうと,CPUとGPUで仕事の分担を分け,GPU側はCUDAでプログラムするということが必要になります。

  ということで,やはりNEON命令をサポートしてほしいという要求が強かったものと思われます。

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