最近の話題 2011年4月16日

1.北京IDFでのSkaugen氏のキーノート発表

  2011年4月12日と13日に北京でIntel Developer Forumが開催されました。基調講演にはOtellini社長などの最高幹部は登場せず,多少,さびしい感じです。そのなかで面白かったのが,IntelのデータセンターグループのGeneral ManagerのKirk Skaugen氏の講演で。

  2015年のクラウドの方向性として,Federated,AutomatedとClient Awareというキーワードを上げました。Federatedはプライベートとパブリックを含めて多数のクラウドを統合して一体として使えるようにする技術,Automatedはより運用を自動化する技術ですが,Client Awareは,クラウド側のサーバがクライアント側のデバイスの能力を理解してそれに合わせて情報を提供するという技術だそうです。ということで,Intelはこの方向で開発をするようですが,具体的にどのような機能が組み込まれていくのかについては言及されませんでした。

  製品関係では,マイクロサーバ向けにXeon E3シリーズを出したが,引き続きAtomベースのサーバチップを出す。これはECCやVMをサポートし,10W以下とのことです。

  そして,I/O接続バスに関して,2012年にはUSB3.0をサポートすると表明しました。USB3.0は5Gbpsです。そしてIntelは既に10GbpsのThunderboltを発表しているのですが,これらは共存できると述べました。しかし,どのような形で共存するのかについては言及されませんでした。

  ということで,あまり新しい話は無いのですが,面白かったのはItanium関係の発表です。Skaugen氏はXeonにはMCA(Machine Check Architecture)が導入され,2個のDRAMチップの故障までエラー訂正できる機能も装備され,いまや,Xeonの高信頼機構はItaniumと同等で,一部には上回っている点もある。この惑星上に(Itaniumで出来て)Xeonでは出来ない処理は無いと述べました。そして,ItaniumとXeonの関係は上下ではなく,並列で,どちらを選ぶかは使いたいOSで決まると述べています。つまり,Windows Serverや標準のLinuxを使う場合はXeon,HP-UXやNECのACOS,BullのGCOSなどを使う場合はItaniumという分け方です。

  そして,2012年に出す予定のPoulsonの開発が順調であることを示すように,Poulsonのウエファを見せました。Poulsonのチップですが,大体30mm×16mmといった感じで,Tukwilaが700mm2というのに比べるとかなり小さい感じです。

  Itaniumベースのサーバの売り上げは,AMDのOpteronベースのサーバの売り上げより多いとのことで,Itaniumの開発はペイしているのかもしれませんが,この発言を聞くと,正常な経営感覚を持ったソフト会社ならItanium向けのソフトの開発に資源を割こうとはしないと思います。

2.中国の2社がItaniumサーバを開発

  2011年4月14日のThe Registerが,キーノートの中で,Skaugen氏が述べた中国のHuawei(華為)とInspur(浪潮)の2社がItaiumサーバを開発している という点について掘り下げた記事を載せています。

  Huaweiは通信機器の大手でXeonベースのサーバも作っているのですが,このItaniumサーバはTELCO向けのハイエンドサーバということで,HPのSuperdomeのようなハイエンドの高信頼製品という感じです。

  Inspurのシステムも32way Itanium Fault-Tolerant Severと書かれており,ハイエンドの高信頼システムです。このシステムはプロセサやサーバなどのテクノロジを開発する中国の国家プロジェクトである863プロジェクトの一環として開発したものだそうです。

  数から言えば,2〜4ソケットのx86サーバをEthernetやInfiniBandで繋ぐ分散メモリのシステムが多いのですが,巨大な共通メモリが欲しいという用途は無視できない程度に存在し,銀行の勘定系や東証などの基幹サーバには大規模SMPサーバ(メインフレームを含む)が使われています。このため,中国が国家の基盤システムとして863プロジェクトで高信頼の大規模SMPサーバの開発を推進するということは理解できます。しかし,このアプローチでは,Itaniumが米国から買えなくなるとダメなので,龍芯プロセサもハイエンドSMP用というようなバージョンの開発も視野に入っているのでしょうね。

  ということで,Itaniumサーバを開発しているのは本家のHPとNECといったところで,それ以外にはSupermicroが4ソケット製品を出しているのとBullがメインフレームのエミュレーション用にItaniumを使っているといったところだったのですが,それに華為と浪潮が加わって1.5倍になりました。なお,日立もHA8500というItaniumサーバがありますが,写真を見るとHPと同じで,HPのOEM製品と思われます。

3.IntelがZ670 Atomプロセサ(Oak Trail)を発表

  2011年4月11日のEETimesなどが,Oak Trailのコードネームで開発されていたIntelのZ670プロセサの発表を報じています。このZ670とSM35チップセットの組で,消費電力は4Wとのことで,ネットブックやタブレットを主要なターゲットとしています。そして,GMA600 GPUとビデオ処理機能が集積されています。

  Z670はAtomアーキテクチャで,クロックは1.5GHzで2スレッドのHyperThreadをサポートしています。ということで,初代のAtomと性能は大差ない感じですが,消費電力が少ないところが売りです。Windowsが使え,Meegoもサポートされているということで,OSに選択肢が広いことが売りですが,どこまでARMの市場に食い込めるかは見ものです。

  またZ670は45nmプロセスを使っていますが,次世代のCeder Trailは32nmプロセスを使いデュアルコアで,チップセットの機能も含めてワンチップになるとのことです。登場時期は今年後半の予定です。

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