最近の話題 2011年5月14日

1.Intelが新アーキテクチャのAtomを開発か

  2011年5月11日のCNETが,Intelが新アーキテクチャのAtomプロセサを開発すると報じています。

  Atomは省電力の小型CPUということで,Pentium 3のインオーダマイクロアーキテクチャで作られたのですが,WindowsベースのNetbookではある程度の成功を収めたのですが,SmartphoneなどのWindowsが必須でない分野ではARMの牙城に食い込めていません。

  Intelはこれらの性能的にローエンドの分野は古い小型のプロセサコアで十分と思っていた節がありますが,ARMの性能があがり,かつ,低電力ということでモバイル製品では劣勢になっています。また,Netbookでも省電力を主要命題として新設計されたAMDのBobcatと比較すると見劣りするという状況になってきています。

  つまり,Intelがこの分野で戦っていくためにはAtomの性能,電力を改善する必要があるという状況です。先週の話題で紹介した22nm世代でのFinFETの採用は電源電圧を下げて消費電力を減らすには効果がありますが,それだけでは不足で,Core 2プロセサのようにアーキテクチャの改良とプロセスの改良を組み合わせたTick-Tock型の開発を行うことにしたとのことです。

  この新アーキテクチャのAtomはSilvermontというコードネームで開発され,2013年に22nmプロセスで登場すると書かれています。

2.TileraがTile-Gxプロセサの商品ラインナップを発表

  2011年5月10日のThe Registerが,ネットワーク技術の展示会であるInteropにおけるTilera社のTile-Gxファミリプロセサの発表を報じています。Tile-Gxは2009年10月31日の話題で紹介していますが,その時は36コアの製品は2010年の4Qと言っていたのですが,それが半年あまり遅れたことになります。

  16,32,64,100コアと4種の製品を作ることは以前の発表から変わっていませんが,今回,ネットワークプロセサ向けの8000シリーズ,マルチメディア処理用の5000シリーズ,超高効率サーバ用の3000シリーズと3種の味付けのプロセサを商品化することが発表されました。それぞれの分野で必要なインタコネクトやI/Oの数が違うので,それらのニーズに合わせて3つのシリーズを作ったとのことです。

  しかし,合計12種のチップを開発するのはコスト的に大変ですから,チップとしては4種で,3つのシリーズは不要な部分の接続と電源を切るなどの手段でカストマイズしているのではないかと思われます。

  今回発表された最上位のTile-Gx8100はクロックは1.5GHz,100コアでキャッシュの総量は32MB。そのうちの25.6MBは各コアに内蔵された256KBのL2$で,これは全体として一つのコヒーレントなキャッシュとして動作します。そして,4つのメモリチャネルを持ち,1TBの物理メモリ空間をサポートしています。なお,Gxではプロセサコアは64ビットアーキテクチャになっています。そして,I/Oは80Gb/sのパケットと96Gb/sのPCI-eを持ち,消費電力は55Wとなっています。

  今回はInteropという場でもり,仕様が発表されたのはネットワークプロセサ用の8000シリーズだけで,5000と3000シリーズの仕様は発表されませんでしたが,3000シリーズを使うとラック1本に約2万コアが収容でき,28nmプロセスを使う200コアのStrattonができると4万コアに倍増します。Strattonの時期ですが,2013年だそうです。

3.シンガポールのZiiLABS社がタブレット用プロセサを発表

  2011年5月12日のSemiAccurateがシンガポールのZiiLABSという会社のタブレット用プロセサの発表を報じています。ZiiLABSはシンガポールのメディア関係の装置の大手のCreative社の子会社です。

  SemiAccurateの記事では,現在サンプル出荷中のZMS-20チップはARMのCortex A9のデュアルコアCPUと48FPコアのGPUを集積し,2TFlopsの演算性能をもつと書かれています。 しかし,同社のWebサイトではCortec-A8ベースのZMS-8までで,ZMS-20についての記述は見つかりません。

  このGPUですが,同社がStemcell Computingと呼ぶ再構成可能なプロセサになっており,各PEは32ビット,あるいは16ビットの浮動小数点演算ができると書かれているので,性能は16ビット演算の場合の値であると思われます。また,ZMS-05は24PEで8GFlopsと書かれているので,PEあたり333MFlopsということになります。ZMS-20は48PEですから,PEは同じ構成でクロックが3倍に上がったとしても全体で50GFlops程度でとても2TFlopsにはなりそうにありません。

  Cortex A9のデュアルコアという点ではNVIDIAのTegra2やAppleのA5の対抗チップですが,後継のZMS-40チップはTegra3などと対抗する4プロセサコアで,GPUも96FPコアと倍増していますが,時期は未定となっています。

4.NCSAのBlueWatersセンターのビデオ

  2011年5月12日のHPCwireが,NCSAが地元住民向けのセンター見学会の時に撮影されたビデオを載せています。素人の撮影らしくうまい撮影ではないし,周囲の雑音も大きくて説明員の声も良く聞き取れないのですが,ある程度の感じは分かります。

  POWER7の筐体とおぼしきものがかなり並んでいますが,他のセンターのように列になっていないで,離れて置かれているのが印象的です。1筐体7300ポンドと説明しているので,約3.3トンですから,詰めて置いたら床がもたないのかも知れません。また,床下にケーブルや冷却水を通すのですが,ビデオを見た感じでは二階という感じでかなり高そうな床でした。

  説明員がPETボトルの水を飲みながら説明したりするのは日本のセンターの公開では考えられません。また,参加者の多くが青いフリスビーを持っているのは景品として配ったのでしょうかね。東工大のTSUBAMEセンターで貰った資料がTSUBAMEのロゴ入りの特製のプラスティックのペーパーフォルダーに入っていたことはありますが,日本のセンターを見学して資料以外のものを貰った経験はありません。

5.iPad2はCray-2並みのスパコン

  2011年5月9日のNY Timesが,Top500の主催者の一人であるJack Dongarra教授のiPad2のLINPACK性能の推定について報じています。iPad2のデュアルARMコアのA5プロセサは,Dongarra先生のグループの研究者の 各種の測定に基づく推定ではLINPACKで1.5〜1.65GFlopsの性能を持っており,4プロセサのCray-2と同程度の性能だそうです。1985年に8プロセサのCray-2は世界一のスパコンであったので,iPad2もタイムマシンで25年前に持っていけば世界で有数のスパコンということになります。

inserted by FC2 system