最近の話題 2011年7月23日

1.SeaMicroが768コアサーバを発表

  2011年7月18日のThe RegisterがSeaMicroの768コアサーバの発表を報じています。IntelのAtomプロセサを使う高密度サーバメーカーのSeaMicroについては2010年6月19日の話題2011年3月5日の話題で紹介していますが,最初のSM10000,次のSM10000-64ともに512コアだったのですが,今回,50%コア数を増やしたSM10000-64HDを発表しました。

  使用しているAtomプロセサは1.66GHzクロックのN570で,SM10000-64と同じですが,1枚のマザーボードに搭載する数を4個から6個に増やしています。一方,SeaMicroが開発したインタコネクト用チップは4個のままです。このため,コアあたりの消費電力は18%減少しているとのことです。

  SM10000-64HDのお値段は$237,000とのことで,SM10000-64と比べて1.5倍のコア数で1.436倍のお値段となっており,コアあたりの値段ではほとんど下がっていませんが,同じ10Uの体積で1.5倍の処理能力という点が売りです。

2.UltraSPARC T4はシングルスレッド性能を重視

  2011年7月18日のThe RegisterがOracleの次世代SPARCであるT4プロセサについて報じています。Oracleは現在,このT4プロセサベースのサーバのベータプログラムへの参加者を募っているそうです。

  現在のT3は16コアですが,このT4はコア数を減らして8コアになるとのことです。しかし,ハード担当のHetherington副社長の発言として,高効率のマルチスレッド実行と高速のシングルスレッド性能を両立させるとのことで,T4のシングルスレッド性能は,T3と比較して最大5倍の性能と書いています。

  クロックは2.5〜3.0GHzと書かれており,1.65GHzのT3と比較すると,クロック比では1.52〜1.82となります。これにコアサイズの倍増を加えると3倍程度の性能が可能ではないかと思われます。さらに,シングルスレッドの場合は,他のアイドルのコアのリソースを流用することにより性能アップすると考えられるので,5倍という数字は可能性がある数字と思います。ただし,具体的にどのような構造であるかは,8月後半のHot Chips 23まで待たなければなりません。

3.nVIDIAの始まり

  2011年7月22日に東京ミッドタウンで開催されたnVIDIAのGTCワークショップに行ってきました。創立者の一人でリサーチ担当の上級副社長のChris Malachowsky氏が基調講演を行うということで,新しい技術情報が聞けるのではないかと期待していたのですが,残念なから,新しい情報はありませんでした。

  しかし,Malachowsky氏は,これまで社外では知られていないというnVIDIAの始まりの話をしてくれました。最初は創立者の3人がDenny's(いわゆるコーヒーショップで,日本にもある)に集まってビジネスプランを練っていたが,普通のお客が変に思うといけないので,店が,裏手にある部屋を貸してくれたので,そこで計画を練ったとのことです。後で,どこのDenny'sと聞いたら,Berryessa Roadと680の交点の店と教えてくれました。

  日本では,制服の警官がマクドナルドやロッテリアにパトカーを止めて休んでいるというのは考えられないのですが,カリフォルニアではパトカーが何台か止まって,警官の溜まり場というコーヒーショップがあちこちにあります。このDenny'sもそういう店で,パトカーが良く止まっていたそうです。しばらくは気が付か無かったそうですが,道路からパトカーを撃つ人がいて,その貸してくれる部屋には幾つも銃弾が貫通した穴があったそうです。それで,ここはダメということで2寝室のアパートを借りて,そこで仕事をすることにしたとのことです。

  最初は創立者の名前や頭文字を使った社名を考えたのですが,どうもしっくり来ず,enVisionという名前を考えたのですが,登録された商標を調べると,トイレットペーパーでその商標があることが分かって没になり,NVIDIAを考えたそうです。そして,デザイナーが頭のNを小文字にした方が格好が良いというのでnVIDIAになったのだそうです。

  なぜ,今のところに会社を構えたのかと聞くと,現会長兼CEOのJen-Hsung-Huang氏がそこに住んでいたからとのことでした。Intelの本社と近いということは考えなかった のかという質問に対しては,そのころは,そんなことは全く念頭に無かったとのことでした。

4.Sandia Cooler (補遺)

  先週の話題で紹介したSandia Coolerですが,2011年7月20日のマイコミの記事も参照ください。

  マイコミのまじつぶでは,この技術に期待するコメントが多く寄せられ,関心の高さをうかがわせました。また,この毎週の話題のページへのアクセスは,通常,1500前後なのですが,あちこちでリンクして戴いたので,先週は5000を超えました。そして,この技術を実用化するのにどういう問題が残っているのかというコメントもありました。

  筆者はメカ屋ではないので,良くわかりませんが,止まっている状態では空気流がなく,回転フィンのプラテンとベースプレートがくっついてしまいます。この状態では静止摩擦が大きいので,多分起動できないと思います。試作品では外部からの力で回転フィンをベースプレートに押し付けているのですが,これを回転フィンの向きを少し変えて,回転で空気をある程度上方向に押すことにより,プラテンをベースプレートに押し付ける力を発生させるという構造が論文では提案されています。

  そうすると,スプリングでプラテンを持ち上げて置き,静止時にはくっつかないようにして,回転するとフィンの空気の流れでプラテンを押し付けてエアギャップを小さくするという手が採れるのではないかと思います。これがうまく行けば,安全に起動と停止ができるようになると思います。

  もう一つ本質的な問題は回転体がファンなどに比べて重いことで,完全に対称に出来ていないと,振動が発生し,軸受けの寿命も短くなります。ただし,これが実用上問題になる程度なのかどうかは,私には分かりません。

  それから,騒音ですが,正確な測定は行っていないが,通常のファンよりもずっと騒音レベルは低いと論文に書いてあります。また,回転フィンの上にカバーを付けると,触った時の危険度は減ると思いますが,騒音が大きくなり,モーターの消費電力も増えると書かれています。もちろん,ファンにカバーを付けなくても,扇風機と同様のファンガードを付ければ良いので,これは大した問題ではありません。なお,回転フィンの側面は回転方向から見て,手を切ることはなく,はじかれる程度で大きな危険はないと思います。

 

  

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