最近の話題 2011年10月29日

1.ARMが64ビットアーキのARMv8を発表

  2011年10月27日にARMは,開催中のARM TechConにおいて,64ビット処理をサポートするARMv8アーキテクチャを発表しました。

  従来のARMv7は32ビットアーキテクチャで,32ビット仮想空間を複数サポートし,物理的には40ビットの空間のサポートするところまでARMv7を拡張しきましたが,本格的な64ビット空間はサポートしていませんでした。ARMプロセサの牙城であるスマートフォンやタブレットなどではこれで十分ですが,サーバやスパコンにもARMを使おうとすると,64ビット化が必要という状況になっています。

  これに対するARMの回答が今回のARMv8です。ARMv8ではAArch64とAArch32という主要な実行モードを持ち,AArch64では64ビットデータ処理を行う新命令 セットA64をサポートします。そして,AArch32は従来の32ビット命令をサポートします。そして,TrustZone,仮想化,NEON,Advanced SIMDなどのARMv7の主要な機能は,ARMv8でそのまま,あるいは拡張された形でサポートされるとのことです。

  ARMのコンパイラやARMv8のFastModelは,既に64ビットに対応するようになっているとのことです。

  現在はARMv8の仕様書はライセンスを受けたパートナに開示されていると書かれており, 一般公開は2012年後半の予定です。そして,ARMv8ベースのプロセサの公開は2012年,サーバなどのプロトタイプの公開は2014年の予定とのことです。

2.AMCCがARMv8プロセサをデモ

  2011年10月27日のEETimesがAMCCのARMv8アーキテクチャのプロセサのデモについて報じています。AMCCは,nVIDIA,Microsoftと並ぶ,ARMの64ビットアーキ開発のパートナで,最も早くARMv8にアクセスできる立場にあります。

  AMCCのX-Geneプロセサは4命令イシュー,O-o-O実行のARMv8コアを複数搭載し,クロックは3GHzとのことです。そして,80GB/sのファブリックを通してEthernet MAC,PCI express,SATAなどをサポートしています。しかし,現時点でこのチップが出来ているわけではなく,デモされたのは,FPGAで作られたエミュレータで,これは1月から出荷されます。

  本当のチップは2012年後半にサンプル予定とのことです。

3.22nm世代のLSIの開発費は$120M〜$500Mか

  ARM TechConでのTSMCとCadenceの基調講演について2011年10月25日のEETimesが報じています。

  TSMCのR&D担当のSVPのShag-Yi Chiang氏は,基調講演において,22nm世代の後はプレナートランジスタはrun out of steamで,FinFETに移行する。テクノロジ的には7nm世代より先の微細化も可能であるが,7nm世代以降は経済的なチャレンジが大きいと述べています。

  また,Cadence DesignのR&DのSVPのChi-Ping Hsu氏は,32/28nm世代のプロセス開発に業界が使った費用は$1.2B程度あったが,22/20nm世代では,これが$2.1B〜$3Bに増加する。そして,1種類のチップの開発費も32/28nm世代の$50M〜$90Mが,22/20nmでは$120M〜$500Mに達すると述べています。結果として,32/28nm世代では開発費の元をとるには30M〜40M個のチップを販売すれば良かったが ,22/20nm世代では60M〜100M個販売する必要があると述べています。

  仮に,チップの開発費が世代ごとに2.5倍になるとすると,15nm,10nm,7nmと進むと($120M〜$500M)×2.5×2.5×2.5=$1.9B〜$7.8Bとなります。そして,元を取るための販売量は世代ごとに2倍とすると,7nm世代では9.4億個〜15.6億個を販売しないと元が取れないということで,極めて大きなハードルとなります。

4.nVIDIAの第3世代TegraプロセサKal-Elは11月9日に登場

  2011年10月25日のEETimesがnVIDIAのKal-Elが,ASUSのTransformer Tabletに搭載され,11月9日に発売されると報じています。

  Kal-Elはスーパーマンがクリプトン星で産まれたときに両親が付けた名前で,この第3世代のTegraチップもスーパーマンになってほしいというnVIDIAの期待が感じられます。

  Kal-Elですが,ARM Cortex-A9を4コア搭載するのですが,おまけに最高クロックを500MHzに制限して低消費電力化したコンパニオンコアと呼ぶ第5のA9コアを搭載しています。最高負荷の時は4コア全部を動かし,負荷が減るにつれて動かすコアを減らし,電力を下げていきますが,1コアで,クロックを下げたりして省電力に務めても処理能力が余ってしまうようになると,高速の4コアは止めて,低電力の5番目のコアを動かします。最も低電力のLP0状態での消費電力は,現世代のTegra2チップと比較すると28%減っているとのことです。

  このため,アクティブスタンバイやASICが処理を担当するオーディオやビデオ再生時にはプロセサ電力を下げることができます。ということで,ASUSのTransformerの電池寿命は14.5時間となっています。

  なお,Kal-Elは8月末から9月初めに登場の予定だったのが,2か月ほど遅れましたが,Kal-El向けのソフトのチューニングに時間が掛ったためと説明されています。

@924655

 

  

  

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