最近の話題 2011年12月10日

1.SuVoltaと富士通半導体が0.4V動作のSRAMを発表

  2011年の12月5日から7日に掛けてWashington DCで開催されたIEDMで,SuVolta社と富士通半導体が 32.3  Advanced Channel Engineering Achieving Aggressive Reduction of VT Variation for Ultra-Low-Power Applicationsと題する論文で,0.4V動作のSRAMを発表しました。この発表に関して,2011年12月4日のEE Timesが事前発表に基づく記事を掲載しています。

  SuVolta社のDeeply Depleted Channel(DDC)トランジスタは,チャネル領域の表面がドーピング無の層,その下に中間レベルのドーピングのVt調整層,その下に空乏層の伸びを止める高ドープのスクリーン層という3層の構造になっているのが特徴です。各層の厚みは数nmから10nm程度とのことです。

  微細化されたトランジスタではチャネル領域の体積が小さいので,その中に入る不純物原子の数が100個を切るという状況になっており,この数がランダムなゆらぎでばらつくので,トランジスタのVtが大きくばらつくようになってきています。SRAMを作る場合,SRAMを構成する何100,何1000万個のトランジスタの内で,Vtが最悪の方向にばらついたメモリセルでも動作する必要があるので,電源電圧をあまり下げられません。

  SuVoltaのDDCはチャネル表面付近には不純物がない層を使っているので,このような不純物原子数のばらつきが無く,Vtのばらつきを通常のトランジスタの1/2程度に抑えることが出来,結果として,65nmテクノロジで製造した576KbitのSRAMを最小で0.425Vまで動かすことに成功したというものです。

  論理回路はSRAMより低い電源電圧でも動くので,SRAMに必要な電圧がLSIの電源電圧を決めており,これが低くできれば,CV2fの消費電力を大幅に削減できます。

  SuVoltaのDDCに関しては,2011年6月16日のマイナビに詳しい記事が掲載されています。

2.D-waveの量子コンピュータ

  2011年12月8日のマイナビがD-wave社の量子コンピュータに関する記事を載せています。5月28日の話題で紹介したように,D-wave Oneと名づけられた商用機の1号機をLockheed-Martin社が購入しており,同社と南カリフォルニア大学が共同で量子コンピュータの使い方を研究しており,その発表がSC11で行われたとのことです。最適化やマシンラーニングに適しているとのことですが,まだ,共同研究を初めて間もなく,具体的な成果が出る前の段階のようです。

  D-wave Oneは128qubitを集積しており,SC11で示されたスライドでは,この規模だと通常のコンピュータと同じ程度のスピードで,あまり優位はありません。しかし,現在開発中の512qubitのチップが実用化されると,通常のコンピュータでの処理時間はbit数の指数関数で増加するので,32万年かかる計算が,量子コンピュータなら数秒で終わるというように大きなメリットが出てきます。その時に向けて,128qubit機で利用技術を磨いておこうというのは,理解できます。

  なぜ,Lockheed Martinがこの量子コンピュータを買ったのか疑問に思っていたのですが,SC11の会場で聞いた噂では,カナダの政府筋がLockheed Martinから何かを買い付け,その見返りにカナダの製品を買ってくれというバーターの取引があり,D-wave Oneが選ばれたとのことです。ということで,現状でこれに使うという用途があるというより,金額がバーターの条件に見合って,その他の候補よりは意味がありそうということで選ばれたようです。

3.TACCがStampedeを入れるためデータセンターを拡張

  2011年12月7日のHPC Wireがテキサス大のTACCのデータセンターの拡張計画を報じています。StampedeはTACCが導入を予定しているIntelのMICを使う10PFlopsのスパコンで,9月24日の話題で紹介しています。

  このスパコンを入れるため,11,000平方フィート(約1000平方メートル)の面積をデータセンターに追加するとのことです。約30m四方ですから,まあ,設置面積はこんなものかという感じです。既に10月から建設は始まっており,2012年の6月には建物は完成の予定です。そして,Stampedeは2012年の遅い時期に納入され,2013年1月にはフル稼働の予定です。

 

 

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