最近の話題 2011年12月17日

1.JEDECがWideIO DRAMの規格を近く公開

   2011年12月16日のEETimesがWideIO DRAMの仕様が12月のうちか,1月にはリリースされると報じています。

  DRAMのメモリバンド幅の向上が,プロセサなどの処理系の必要とするデータ供給の増加に間に合わないという事態になっています。特に,モバイル系ではGPUやビデオの高画素化について行けないという問題が顕著になってきています。このような用途に向けてJEDECで開発が進んでいるのがWideIOというDRAM規格です。

  WideIOはTSVを使ってチップを積み上げる3Dや2.5D LSI用で,300端子のTSVを4チャネル備えています。300端子の中の信号は193本で,128ビットのデータを伝送できます。残りの信号線はアドレス,コントロール,クロックなどに使われています。TSVやマイクロバンプのピッチは最低40nmとなっています。

  消費電力を抑えるため,転送速度は低く,266MT/sのSDRとなっています。しかし,信号線が多いので,ピークデータ伝送速度は17GB/sになります。現状のLPDDR2-533が.5GB/sであるのに対して2倍のバンド幅ですが,消費電力は減少するとのことです。(配線長が違うので,公平な比較ではありませんが)

   2011年12月16日のEETimesの記事にも,Samsungの試作WideIOチップが報じられていますし,2011年12月12日のEE Timesの記事では,ST-Ericssonが2個のマルチコアSocチップをまたぐようにWideIOメモリチップを載せた2.5D LSIの開発を報じています。

2.Global Foundriesが20nmチップのテープアウトを発表

  2011年12月14日のEE Timesが,Global Foundriesが20nmの製造プロセスを使うチップのテープアウトを受け付けたと報じています。このチップはARMと協力して開発しているTechnology Qualification Vehicleと呼ばれるもので,単なるテストチップ以上のものだそうです。このチップを使って,ARMのCortex-Aシリーズプロセサ向けに半導体プロセスを最適化すると述べられています。

  具体的には書かれていませんが,Cortex-Aプロセサで使われている各種の基本回路などを搭載し,その動作速度や電力,あるいは動作マージンや歩留りなどが評価できるようになっているのだと思われます。

  20nmプロセスは28nmプロセスと比較すると,速度は最大35%速く,消費電力は半分とのことです。

  また,同時に,Global Foundriesは28nmプロセスで製造したCortex-A9を2.5GHz以上のクロックで動かすというデモを行いました。Cortex-A9プロセサは従来の40nmプロセスでは1.0〜1.4GHz程度のクロックで,28nmプロセスでも1.6GHz程度で,2GHzを超えるという発表は,これが初めてと思われます。これがオーバークロックで なく,通常の動作で実現されたとすると,大したものです。

  そして,28nmのHigh Performance Plus(HPP)プロセスが使えるようになると,更に性能を改善できるそうです。このHPPプロセスでは電源電圧を0.85Vに下げて電力を減らすと書かれています。本当に,電源電圧を下げて,かつ,性能を上げられるなら,これも大したものです。

3.Intelの研究所では14nmプロセスが動いている

  2011年12月12日のEETimesが,Nordic HardwareのIntel北ヨーロッパのManaging DirectorのPat Bliemer氏のインタビュー記事を引いて,ItelはLabレベルでは,既に14nmプロセスが動いていると報じています。

  Intelは,当初の予定では,今年の終わりから来年初頭にかけてIvy Bridgeなどの22nmプロセスの製品を出荷することになっています。そして,tick-tockモデルでは2年後に次世代の14nmプロセスの製品の出荷となる筈で,研究所レベルから量産に移行するのに必要な期間を考えると,必要な要素技術を組み合わせた原型となる14nmプロセスが,研究所レベルでは既に出来上がっているというのは当然の話です。少なくとも,次世代14nmプロセスの開発が大幅に遅れているという事態ではないと言えます。

  なお,IntelのIvy Bridgeの出荷は5月になりそうですが,これは開発がトラぶっているという理由ではなく,AMDのBulldozerの性能が低く,現在のSandy Bridgeで十分対抗できるため,急いでIvy Bridgeを投入する必要がないからと見られています。

4.J.P.MrganがMaxelerのスパコンを導入

  2011年12月15日のHPCWireが,J.P.MorganがFixed Income TradingというオペレーションにMaxelerのデータフロースパコンを導入したと報じています。J.P.Morganは従来から,GPUやFPGAを使う高速処理に熱心で,GPUに関しては8月6日の話題,FPGAに関しては7月16日の話題で紹介しています。

  今回のシステムは以前のGPUやFPGAを使ったシステムとは用途が違うようですが,膨大な数のシナリオでのリスクとゲインを分析して売り買いを決めるということは同じです。従来の通常のコンピュータのシステムでは何時間も掛っていた処理が数分でできるようになるとのことです。

  そして,2台目のスパコンも発注されており,このスパコンはx86では12,000コアで128TFlopsのシステムに性能的には匹敵しますが,コストや電力,設置面積は大幅に少なく,電力と設置面積では1/25とのことです。

5.GoogleがBletchley Parkに55万ポンドを寄付

  Bletchley Parkは,2次大戦中にドイツ軍の暗号を解読する英国の部隊が置かれたところで,Turing BombeやColossusといった暗号解読専用のコンピュータが開発され,使用されました。現在はコンピュータの歴史博物館になっているのですが,予算不足からかなり荒れてきているとのことで,資金を募って改修する計画です。この改修に関して,2011年12月15日のThe Registerが,Bletchley ParkへのGoogleの寄付を報じています。

  第一段階の改修に関してHeritage Lottery Fundから4.6Mポンドが得られることになったのですが,さらに1.7Mポンドを募金で集める必要があるとのことです。この募金額の1/3弱にあたる550Kポンド (約6600万円)をGoogleが寄付するとのことです。これはこれまでにBletchley Parkが得た寄付の中では最大の寄付額だそうです。

  なお,Googleは,2011年にはトータルで約100Mの寄付を行っており,これはその一部です。

  

  

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