最近の話題 2012年1月21日

1.ボンクラーズが米長永世棋聖に勝利

  2012年1月14日の毎日新聞が,日本将棋連盟会長の米長邦雄永世棋聖とコンピュータソフトの「ボンクラーズ」の公式対局を報じています。

  持ち時間3時間の対局で,先手のボンクラーズが113手で勝利を収めたとのことです。米長永世棋聖は「途中に見落としがあって気持ちを切り替えられなかった」と敗戦を振り返ったと書かれており,敗着があったようですが,コンピュータが勝ったのは事実です。

  対局に使用されたハードは富士通のブレードサーバであるBX400で,Xeon E5690を2個搭載したブレードを6枚使用しているとのことです。Jeopardy!に勝ったIBMのWatsonは数10億円という高価な巨大システムですが,ボンクラーズの方は,せいぜい数100万円程度の普通のサーバです。

  処理は,マスタノードが数手まで読み,その先は各コアで走るワーカープロセスに分散してその先の手を読み,結果をマスタに返して局面を総合評価するという形の並列処理になっており,コアが増えれば性能が上がります。アルゴリズム的には,ゲームで良く使われるα-βの刈込を行う探索を使っているようです。

  開発者は富士通研究所の伊藤英紀氏で,マスタノード側のプログラムを開発し,ワーカーノード側は有名なBONANZAのロジックが殆どそのまま使われているようです。ということで,ボンクラーズは「ボナンザ」「クラスタ」ということから名付けられたとのことです。

  米長永世棋聖は2003年に現役を退いているので,現役のプロ棋士に勝ったという訳では無いのですが,一昨年には「あから2010」が清水女流名人に勝っており,コンピュータが将棋のトッププロに勝つのは,それほど遠くない時期に実現しそうです。

2.Intelがオーバクロックに有償保証プランを発表

  オーバクロックのように,Intelの定格の範囲を超えた使用に対しては通常の保証は効かず,CPUチップが故障しても自己責任だったのですが,このほど,定格外の使用に 対しても交換するPerformance Tuning Protection Plan(PTPP)を発表したと2012年1月19日のThe Inquirerが報じています。

  このPTPPはCore i5-2500K,Core i7-2600K,,Core i7-2700K,Core i7-3930KとCore i7-3960Xが対象で,お値段は,Core i5とCore i7-2700Kプロセサは$20,Core i7-3930KとCore i7-3960Xは$35となっています。通常の定格内の使用で故障したチップは3年間は通常の保証で交換してもらえ,定格外の使用で故障しても,このPTPPを購入していれば,交換してもらえるというものです。

  The Inquirerの記事は,最近のプロセサチップは熱くなりすぎると命令の発行を抑えるというような機構が完備しているので,焼損するような使い方が難しく,このような保証をしても,実際に交換されるチップは少ないと見込んでいると考えられると書いています。

3.NVIDIAのKeplerはAMD GCNに勝つ

  2012年1月19日のSemiAccurateにCharlie Demerjian氏が,NVIDAの次世代GPUであるKeplerに関する記事を載せています。いつもNVIDIAには批判的な記事を書いているDemerjian氏がNVIDIAをほめているので,信ぴょう性があります。

  それによると,Keplerの発表は3月終わりから4月の初め頃の予定で,まだ,詳細は書けないが,すべての面においてKepler(GF104)はAMDのGraphics Core Nextを使うHD 7900シリーズに勝っており,このラウンドはNVIDIAの勝利と述べています。

  SemiAccurateが見たGF104ボードはプロトタイプではなく,非常に完成度の高いものであったそうです。TSMCからのA2シリコンは快調で,最終段階でバグが見つかるというようなことが起こらなければ,これで出荷が可能な見通しだそうです。

4.TSMCの28nmプロセスの状況は?

  2012年1月20日のEETimesが,TSMCの28nmプロセスはトラぶっているというアナリストの見解を報じています。Future HorizonのMike Bryant氏が同社の市場見通しに関するコンファレンスで述べたところによると,TSMCの28nmプロセスは歩留りに問題があり,現在,製造中の10品種のうち,6品種はうまく行っていないとのことです。

  TSMCの2011年4Qの決算は,前年同期比で売上が4.9%ダウン,利益が22.5%ダウンとあまり良くなかったのですが,この原因はTSMCの28nmではプロセスが安定せず,AppleのiPad3などに使用される予定のA6プロセサの注文が(特許係争などで関係が微妙な)Samsungに行っているからという報道もあります。

 一方,TSMCの決算発表では既に36品種のテープアウトを受け取り,28nmプロセスは順調に量産に入っており,2011年4Qの売り上げの2%は28nmプロセスの製品である。2012年には132品種のテープアウトが予定されており,今後,28nmプロセスの製品の売り上げは大幅に増加するという見通しが述べられています。

  NVIDIAのKeplerも,AMDのRadeon HD 7900もTSMCの28nmプロセスを使っている筈ですが,これらは大丈夫なのでしょうかね。

 

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