最近の話題 2012年1月28日

1.IntelがQLogicのInfiniBand部門を買収

  2012年1月23日のThe Registerなどが,IntelのでQLogicのInfiniBand部門の買収を報じています。買収額は$125Mとのことです。QLogicはEthernetやSANなど も手掛けているネットワーク機器のメーカーですが,HPC向けのInfiniBandは手放して,ビジネス向けのネットワークに経営資源を集中するという考えのようです。

  Intelは今回はExaスケールに向けての買収と言っています。ExaマシンではインタコネクトI/FもCPUチップに内蔵して ,エネルギー効率を上げる必要があると思われ,現在のHPCでの標準のインタコネクトともいえるInfiniBandの技術を手に入れるというのは理解できます。

  Intelは今回の買収でInfiniBandスイッチの技術を手に入れ,以前にEthernetのスイッチを手掛けるFulcrumを買収して手に入れているので,両方のスイッチの技術が揃ったことになります。ということで,データセンターのスイッチビジネスにも乗り出せるようになったわけで,今後が注目されます。しかし,Intelの買収もStrong ARMやLevel Oneの通信プロセサのように失敗というものも多く,Intelがデータセンタースイッチビジネスに乗り出すのか,それで成功するかどうかは未知数です。

2.SamplifyがHPC向けのデータ圧縮技術の製品化を発表

  2012年1月25日のHPC WireがSamplify社のデータ圧縮についての記事を載せています。マルチコアプロセサのコア数が増えて処理能力が上がるほどにはメモリバンド幅は増えず, データの供給速度が性能ネックになっています。気象コードはメモリバンド幅が必要なコードで,NASAのECCO (Estimating Circulation and Climate of Ocean)プログラムでは,Pleiadesシステムのピーク演算性能の1.4%の性能しか出ないとのことです。

  SamplifyはPrismという汎用の信号圧縮製品や超音波のビーム成形システムなどを作っている会社ですが,APAXと呼ぶ汎用データの圧縮製品を発表しました。整数,あるいは浮動小数点データを圧縮し,ロスレス圧縮の場合は2:1程度,ロスを許容する圧縮では4:1〜8:1程度までデータ量を圧縮でき,その分,実効的なメモリバンド幅とメモリ容量が増えたことになるという訳です。

  製品としてはCPUで圧縮伸長を行うソフトとしての提供と,ハードウェアのIP(RTL)を提供してチップや装置メーカーがLSIに組み込むという形態です。

  同社の出資者であるSchlunbergerはソフト,日本のマミヤはFPGAにIPを組み込むという形で,同社の製品の有用性を検証したとのことです。

  MPI通信のドライバのような場合は,送受の両側に圧縮と伸長を入れればうまく行きますが,メモリの場合は,圧縮するとメモリ上の格納アドレスが変わってしまいます。 また,データの値によって圧縮率が変わるので,値を書き換えると元の位置には収まらないということが起こります。

  メモリのデータ圧縮に関しては2001年7月1日の話題でIBMのMXTテクノロジを紹介しています 。この場合,メインメモリは圧縮形式で,キャッシュに入れるところで伸長するという方法でしたが,いろいろと難しいことがあったようで,1世代で終わり,その後の製品には採用されていません。

  Samplifyのデータ圧縮ロジックは数100論理ゲートと書かれており,簡単なロジックのようですが,これでそんなにうまく圧縮でき,かつ,メモリのアクセスなどもうまく行くのでしょうか?

@958475

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