最近の話題 2012年3月17日

.1.AMDのLlanoは好調,Bulldozerは不調

  2012年3月15日のThe RegisterがIDCのx86チップのマーケットシェアの調査結果を報じています。それによると,x86チップの市場は前年比13.2%伸びて,2011年には$41Bになったとのことです。その中でIntelのシェア は0.1%増加して80.3%となり,逆にAMDのシェアは0.1%低下して19.6%となっています。

  ということで,市場全体でのIntelとAMDのシェアに大きな変化はないのですが,ラップトップの分野では,AMDはLlanoが健闘し,シェアが2.7%アップして16%になり,Intelは2.6%ダウンして83.8%になったとのことです。

  しかし,サーバ分野では,Intelのシェアが1.4%アップして94.5%となり,AMDのシェアは1.5%ダウンして5.5%になり,Bulldozerは不調です。デスクトップの分野でもAMDのシェアは1.6%ダウンして26%になり,ここでもBulldozerは不調です。

  また,IDCは2012年のx86市場は5.1%伸びると予想しています。

2.AppleのThe new iPadのA5X SoC

  日本でも3月16日にAppleの新iPadが発売され,早速,解体レポートがあちこちに報じられています。新iPadの大きな特徴は2048×1536という高解像度のRetinaディスプレイを搭載している点です。このディスプレイをサポートするため,プロセサはiPad2のA5から,A5Xという拡張版になっています。

  A5Xですが,A5と同様にプロセサはARM Coretex-A9のデュアルコアと考えられます。また,グラフィックス部はA5ではPowerVR SG543MP2という2シェーダーコア版であったのに対して,高解像度ディスプレイをサポートするため,4シェーダーコアのPowerVR SGX53M4とシェーダー数を倍増しています。解体した写真から,2012年3月15日のAnandtechの記事は,A5Xのチップサイズを10.8o角と推定しています。このチップ面積はA5とほぼ同じで,GPUやビデオ系などが2〜4倍の増えているので,製造プロセスはA5が45nmであるのに対してA5Xは32nmになっているものと推定されます。

  A5ではPackage on PackageでA5のパッケージに2個のLPDDR2 DRAMを搭載していたのですが,A5XではDRAMは標準のLPDDR2の4Gbit品を2個使い,プリント板の裏側に実装しています。

3.天文シミュレーション用アクセラレータGRAPE-8

  東工大の牧野教授と一橋大商学研究科の台坂准教授の研究グループが,消費電力46Wで960GFlopsの演算性能を持つ天文シミュレーション用のGRAPE-8プロセサボードを開発したと発表しました。

  1989年のGRAPE-1から続いているGRAPEの8代目ということになります。今回は,eASIC社のメタル1層でカストマイズする構造化ASIC Nextreme 2を使い,1個のチップに40演算を行うパイプラインを48本集積し,それを250MHzのクロックで動かしています。これで消費電力13Wで480GFlopを実現しています。但し,演算は,それぞれの部分で必要な精度で行っているので,一般的な倍精度浮動小数点演算で480GFlopsの演算能力があるということではなく,等価的に480GFlops分の能力があるという表現です。

  PCI Expressボードに,このチップを2個とインタフェースや制御用のALTERAのFPGAが載り,全体の消費電力が46Wで960GFlopsになっています。このボード2枚を消費電力200Wのパソコンに挿入したシステムは,(計算が良くわかりませんが)6.5GFlops/Wの効率となり,Green500トップのBG/Qと比べて3倍以上のエネルギー効率と書かれています。しかし,Green500はLINPACK性能のFlopsなので,同一レベルで比較するのは公平でない気がします。

  それから,地惑の牧野先生は理解できますが,GRAPE-8は商学への応用も考えているのかしら?

  Grape Projectのページは最近メンテされていないようで,GRAPE-8の話は載っていません。

4.Ivy Bridge遅延の真相は?

  3月3日の話題でSemiaccurateの記事を引いて,Ivy Bridgeは6月に遅延かという話題を紹介しましたが,ニュースソースのSemiAccurateは2012年3月13日の記事で,遅延の理由は,前の記事で書いた22nmプロセスの製造問題ではなく,大口の注文が変更になり,低電力のLV,あるいはULVで,GPUのシェーダー数が6個のGT1から,16個のGT2モデルに切り替わったため,製造に時間が掛るという理由と報じています。

  そして,SemiAccurateは2012年3月13日の記事で,この大口注文はAppleのMacBook用の注文と書いています。AppleはMacBookにNVIDIAのKeplerシリーズのディスクリートGPUを搭載する予定であったのですが,先週の話題で紹介したように,SemiAccurateの記事によると,2月中頃にTSMCの28nmプロセスでの生産が突然止まり,Kepler GPUの供給が怪しくなったので,急遽,Ivy BridgeをGT1からGT2に変更して対応するため注文の切り替えが行われたと推測しています。これにより,少なくともローエンドのMacBookではKeplerの採用は無くなり,ハイエンドではIvy BridgeのGT2では能力不足なので,Keplerの供給を待つことになると見ています。

  他のニュースソースでの裏付けは取れませんが,良くできた話で,辻褄はあっています。

 

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