最近の話題 2012年5月12日

1.Intelは2014年に14nm Atomを出荷

  IntelはAnalyst Dayにおいてタブレットやスマートフォン分野のロードマップに触れ,2014年には14nmプロセスを使うAtomを出すと述べたと2012年5月11日のThe Registerが報じています。

  Intelはこの分野では,現在のz2460のグラフィクス性能を倍増するz2580を今年末までに出し,来年には22nmプロセスを使うMerrifieldを出す。Merrifieldは単なるプロセスシュリンクではなく,完全新設計のSoCで,ゲームチェンジャーであるとのことです。

  そして,2014年には14nmプロセスを使うチップを出すというロードマップです。 ムーアの法則の2倍のペースと言っていますが,それはスタートには遅れたプロセスを使っていたのを,最新のプロセスに追いつくように微細化を進めるということで実現されており,Atom強化の意欲はわかりますが,技術的には特別なことはありません。

2.組み込みコア市場の78%をARMが独占

  2012年5月10日のEE Timesが,Linley Groupの2011年の組み込み市場のレポートについて報じています。

  それによると,2011年にはCPUコアを組み込んだチップの出荷は10B個に達し,その78%がARMコアを使用となっています。ARMは7.9Bチップについて平均4.6セントのローヤリティーを受け取っています。総額は約$360M(おおよそ300億円) となります。

  2位はSynopsysのARCコアの10%で,第3位のMIPSは6.5%程度です。MIPSコアのチップの出荷は656M個で平均7セントのローヤリティーで,新しい顧客を見つけないとMIPSは生存できないレベルと書かれています。

  そして,組み込みDSPコアの出荷は2010年から44%増えて2011年には1.16Bチップに達したのですが,その90%がCEVAのライセンスという結果です。そして,2位はVerisiliconのZSPコアで,シェアは9%です。

  組み込みグラフィックスコアは2011年には300Mチップを超え,その82%がImagination Technologyのコアとのことです。これにはAppleがImaginationを使っていることなどが貢献しています。そして,2位のVivanteが8%,3位のDMPが6%と続き,ARMのMaliは4%で4位とのことです。しかし,SamsungがMaliを採用したことと,CPUコアと合わせたARMの営業力などを考えると,ARMはシェアを拡大していくと見られています。

  組み込みの世界では,IPは寡占でトップメーカーが市場の殆どを握っています。ここで,ARMとImaginationはイギリスの会社で,気を吐いています。一方,我が国は,こういうトップの強い商品が作れていない感じがします。

3.MIPSがARMのCortexに対抗するAptivコアを発表

  2012年5月11日のEE Timesが,MIPSのAptivコアの発表を報じています。マルチコア構成が可能なAptivはMIPS32 R3アーキテクチャに基づくコアで,最上位のproAptiv,中間のinterAptiv,下位のmicroAptivがあり,ARMのCoretx-Aシリーズ,Cortex-Rシリーズ,Cortex-Mシリーズの対抗で,最上位のproAptivはCortex-A15の対抗になるとのことです。

  Aptivコアのライセンスは今年中頃から開始されるとのことです。

4.AMDが次世代APUを近々発表か

  2012年5月8日のDigitimesが,AMDが今月のうちにも32nmプロセスで製造されるTrinity APUを発表すると報じています。この5月の発表はノートPC用だけで,デスクトップ用の発表は8月となるとのことです。そして,タブレット用の消費電力4.5WのHondo APUの発表はWindows8のリリースに合わせて,今年4Qになると書いています。

  TrinityはGlobalFoundriesの32nmプロセスで製造され,プロセサコアがBulldozerからPiledriverに変わり,現在のLlano APUに比べてCPU性能は25%アップ,GPU性能は50%アップとのことです。

.スパコンはZettaFlopsには到達できない

  2012年5月7日のHPC Wireが,Thomas Sterlingインディアナ大教授とのインタビューを載せています。Sterling先生は,現在全盛のクラスタ型スパコンの原型であるBeowulfクラスタを発明し,HPCクラスタの父と呼ばれる人です。

  Sterling先生は,中国などが米国との差を詰めてきているが,これはテクノロジの拡散(民主化)よりも国家政策の影響が大きいのかという質問に対して,現在のスパコン能力の伸びのモーメンタムはアジアやロシアが大きく,差を詰めているというより,彼らが差を拡大していると見るべきと述べています。これは,米国のスパコン開発を強化すべきという煽りの面がある発言と思われますが,中国やロシアの開発を脅威とみていることは確かと思われます。

  現状からExaScaleへの移行は,これまでのTerScaleやPetaScaleへの移行とどう違うのかという質問に対しては,1Bを超える並列性を利用するには従来の方法の延長ではダメで,より高い並列性を引き出すことが必要であり,また,規模の増大から信頼性や消費電力に対しても新しい考え方が必要と述べています。

  そして,現在の個別の浮動小数点演算を実行していく方式では,64ExaFlops位が限界で,ZettaFlopsには決して到達することは出来ないと述べています。ZetttaFlopsを達成するためには,量子コンピューティングやバイオコンピューティングのようなものやより高次の概念を処理するMetaphoricコンピューティングのような,現在では想像できないような技術が必要になるであろうとのことです。

6.SGIが米空軍の研究所から1.5PFlopsのスパコンを受注

  2012年5月9日のHPC Wireが,SGIがAir Force Research Laboratoryにピーク性能1.5PFlopsのSGI ICE Xシステムを納入すると報じています。  

  このシステムはIntelのXeon E5-2600を2ソケット搭載するIP-115 Twinブレードを1ラックに72組搭載し,32ラックで,2304 Twinブレード,9126ソケット(73,728コア)で,ピーク演算性能は1.5PFlopsを僅かに超えます。そして,ストレージはSGI InfiniteStoregeで6.72PBの容量となっています。ファイルシステムはSGI Lustreです。

  これでお値段はストレージと4年間のサポートを含めて$27.8M(約22億円)とのことです。

  富士通のFX10を使う東大のOakleaf-FXはピーク1.13PFlops,ローカルとグローバルを合わせてストレージは3.2PBです。FX10のお値段は,富士通の発表では,シングルラックモデルで5000万円よりとなっており,これが近畿大が入れた12ノードモデルのお値段とすると,96ノードフル搭載すれば,この8倍とまではいかなくとも,4倍の2億円とかになるのではないかと思います。Oakleaf-FXは50筐体なので,これだけで100億円です。これは(私の推測した)定価ですが,50%値引きでも50億円で,このSGIのシステムは,Flops/$では,かなりお買い得という感じです。

 

 

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