最近の話題 2012年7月14日

1.IntelがASMLの15%の株を取得

  2012年7月9日のEE Timesが,Intelがオランダの大手露光機メーカーのASMLの15%の株を取得すると報じています。投資の目的は,EUV露光の開発と,450mmウェファ対応の露光機の開発を促進するためとのことです。

  まず,最初は$2.1Bで10%の株を取得し,遠くない将来に$1B程度で5%を取得するとのことです。ASMLは,25%の株をパートナーに持ってもらう計画で他の会社とも話をしており,Intelの持ち分は,将来的にも15%以上にはならず,議決権においても制約が付けられているとのことです。

  また,最初のフェーズではIntelがAMSLの450mmウェファツールの開発に$680Mを投資し,第二フェーズでは,追加の5%の株の取得と合わせて$340MをEUVツールの開発に投資するという計画で,総額は$4.1Bの投資となります。

  微細化の最先端を走るIntelはEUVのニーズも一番強く,製造量が大きいので,450mmウェファによるコストダウンも重要で,これらのツールの開発を促進するには装置メーカーへの投資もやむなしということでしょうね。まあ,EUVに関してはNikonはASMLに大きく遅れていますが,このIntelの投資と開発パートナー参加は決定的で,最先端の露光装置メーカーとしてのASMLの地位は不動になると思われます。

  残りの10%のASMLの株は,EUVに熱心なSamsungやTSMCは興味を示すと思われますし,IBMやGlobal Foundriesも可能性があります。

  また,7月11日の日経によると,ASMLからの情報提供は資本関係の有り無しで違ってくるとのことで,最先端露光装置に関しての情報提供はIntelとその他の投資をした会社になり,ASMLから話の来ていない東芝,ルネサスなどの日本の会社は,その点でも不利になりそうです。

2.米国DOEがFastForwardプログラムをスタート

  2012年7月12日のHPC Wireがエネルギー省(DOE)のFastForwardプログラムの開始について報じています。Extreme Scaleコンピューティングのハードウェア,ソフトウェアを開発するというプロジェクトで,DOEのOffice of ScienceとNational Nuclear Security Administrationから出ているとのことで,サイエンス側と核兵器側の両方の利用が考えられているようです。

  FastForwardプログラムの全貌は明らかにされていませんが,Lawrence Livermore National Securityを通しての契約となり,現在,プロセサとメモリ関係の研究開発では,Intelが$19M,AMDが$12.6M,また,プロセサの研究開発でNVIDIAが$12M,そして,ストレージとI/O関係の研究開発でWhamcloudが金額不明の受注と書かれています。なお,Whamclodの金額については,噂とのことですが,The Registerの記事では,約$8Mと書かれています。

  Intelでは,フェローのShekhar Borkar氏, HPCエコシステムのCTOのMark Seager氏,そしてIBMから移籍したAlan Gala氏がFastForwardを担当するとのことです。Intelは次世代システムの耐故障性,エネルギー効率が高くスケーラブルなプロセサテクノロジ,メモリアーキテクチャなどの研究は開発を行うとのことで,受注額はプロセサとメモリを合わせて$19Mとのことです。プロセサは,MICの延長線のものとなるが,画期的なアプローチが追加されると述べられています。また,メモリはMicronと協力してHybric Memory Cubeをベースとして研究を行うそうです。

  AMDは現在のAPUの延長線でHeterogenious System Architectureのプロセサを研究開発する考えです。受注額はプロセサ関係が$9.6M,メモリ関係は$3Mとなっています。なお,メモリに関してどのようなアプローチをとるのかは,まだ,明かせないとのことです。

  そして,NVIDIAはDARPAのUHPCプロジェクトで研究してきたEchelonプロセサがスタートポイントになるとのことで,受注額は$12Mとなっています。

  プロセサは3チームの並列開発になるのですが,ストレージとI/OはWhamcloud 1チームの受託で,チームにはEMC,CRAYとHDFグループが参加します。

  FastForwardの契約は2年で,その後のExaScaleのシステムの開発は,今後の予算状況次第と書かれています。

3.IntelがWhamcloudを買収

  2012年7月13日のHPC Wireが,HPC系のクラウド会社であるWhamcloudを買収と報じています。 前の項目で紹介したように,WhamcloudはAMDと同時に,FastForwardプロジェクトでのストレージとI/O関係の研究を受託しており,これを加えると,FastForwardの判明した分の半分以上をIntelが受託したことになります。

  また,WhamcloudはLustreファイルシステムの開発の元締め的存在で,富士通は,京に採用されたLustreベースのFEFSの開発で,同社と協力関係にあります。

  Intelは,インタコネクト関係でFulcrum,QLogic,CRAYのインタコネクト部門を買収しており,これに続いてHPCのクラウドサービスやHPCの標準ファイルシステムの感があるLustreに強いWhamcloudを手に入れ,HPC総合企業への体制を着々と築きつつあるようです。しかし,Intelの買収は本業以外では,殆ど失敗の連続ですから,巨大HPC企業になるのかどうかは予断を許しません。

 

 

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