最近の話題 2012年7月28日

1.ARMとTSMCがFinFETプロセス開発で協力

  2012年7月23日のEE Timesが,ARMとTSMCは,次世代の64bit ARMプロセサコアをTSMCのFinFETプロセスに最適化するという複数年の契約を結んだと報じています。この契約は,来年量産が始まる20nm世代の先の協力に関するもので,2015年の後半に予定される16nmプロセス向けと考えられます。

  TSMCは,この世代では同社としては初めてFinFETを使う予定で,FinFETのIPを開発し,実際のプロセサをFinFETプロセス向けに最適化するパートナーの存在はプロセスの完成に大きな力になります。一方,ARMもトップファウンドリのTSMCのFinFETプロセスで,早い時期にARMコアが製造可能になることは,コアのライセンスビジネス上,非常に重要です。

  EUV露光は,まだ,この時期に量産ができるようになるのかどうか心もとない状況ですが,TSMCの16nm FinFETプロセスの開発も,ARMが乗ってきたということで,一歩前進という感じです。

2.オーストラリアの電波望遠鏡にCrayがCascadeを供給

  南米チリのアタカマ高地に建設中のALMAの次の大型電波望遠鏡プロジェクトは,Square Kilometer Arrayと言い,その名の通り,全パラボラアンテナの合計面積が1平方kmという高感度システムです。なお,ALMAのパラボラ面積は100平方m位ですから,その10倍です。ただし,ALMAは16GHzから950GHzという高い周波数の電波を受信するのに対して,SKAは70MHzから10GHzとALMAより低い周波数帯をカバーすることになります。

  このSKAの建設地ですが,オーストラリア,ニュージーランドと南アフリカの2か所が候補に残っています。

  このオーストラリアのSKAの道筋を付けるシステムであるAustralian Square Kilometer Array Pathfinder(ASKAP)というシステムを建設しており,このデータ処理用にCrayのCascadeスパコンが使われると2012年7月24日のHPC Wireが報じています。

  このCascadeシステムは,IntelのXeonプロセサとCrayの新開発のAriesインタコネクトを使い,IntelのXeon Phi(MIC)プロセサの搭載もアナウンスされています。ASKAPシステムは2013年から使用を開始し,遅くとも2014年の第2フェーズではXeon Phiが組み込まれると見られています。

  このシステムのピーク演算性能は1.2PFlopsと書かれています。

3.オーストラリアの,もう一つの電波望遠鏡にIBMがiDataPlexを納入

  2012年7月25日のHPC WireMurchison Widefield Array (MWA)がIBMのiDataPlex dx360 M3を選択したと報じています。MWAは80MHzから300MHzの周波数帯をカバーする電波望遠鏡で,パラボラではなく,4096基のダイポールアンテナのアレイで電波を受信します。

  この4096基のアンテナからのデータを処理するのが,このiDataPlexということになります。このシステムの規模は公表されていませんが,8GB/sの速度で受信データを処理すると書かれています。

4.アンドロメダと銀河の衝突の対策は?

  2012年5月31日にNASAは,Hubble宇宙望遠鏡の観測結果に基づき,約4B年後にはアドロメダ銀河と我々の銀河(Mikly Way)が正面衝突すると発表しました。

  5月に米国で開催されたNVIDIAのGTCのJen-Hsun Huang CEOの基調講演の中で,この衝突をTesla GPUでシミュレーションし,両方の銀河がどのように変形していくかというビデオを見せました。この後のプレスのQ&AセッションでInsight64のNathan Brookwood氏が,Jen-Hsunに「この衝突にNVIDIAはどう対処するのか?」と質問しました。その時の答えは「最近,聞いたばかりで,まだ,考えていない。これから考える」というものでした。

  8月26日にNVIDIAは東京ミッドタウンでGTC Japanを開催し,元CrayのCTOで,現在はNVIDIAのTesla部門のCTOを務めるSteve Scott氏が基調講演を行い,この衝突のビデオもその講演に含まれていました。ということで,プレスQ&Aの時に,Scott氏に対策は出来たのかと質問してみました。答えは,「Jen-Hsunからその話は聞いていない。私の考えでは,お金を貯めて,別の星に移住するのが良いと思う」というものでした。

  しかし,銀河系やアンドロメダ銀河の中の星ではダメで,相当遠くの銀河系の星に移住する必要があります。そうなると,通常の航行では無理で,NVIDIA GPUのWARPを空間ジャンプも出来るように改良する必要があります。衝突するまで39億年くらいで,マージンを見ても30億年以内に開発すれば間に合います。

  こんな先まで人類がいるかって?多分,居ないでしょうね。

@1024220

 

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