最近の話題 2012年8 月4日

1.東工大のTSUBAME-KFCとTSUBAME2.5

  7月26日のNVIDIA GTC Japanで,東工大の松岡教授がTSUBAME-KFCとTSUBAME2.5について,講演の中で明らかにしました。

  TSUBAME-KFCは2013年2月稼働予定の,コンテナ型サーバを油につける実験機で,チキンはフライにするとカロリーと保存性が良く なるので,同じ鳥類のTSUBAMEもフライにするとエネルギー効率と信頼性が上がるという洞察(?)を実証するマシンです。

  まず,オイルがCPUやメモリの熱を吸収し,その熱を水で冷やし,水はクーリングタワーで冷やすという構造で,冷却は水を廻すポンプの電力程度で,大幅に冷却電力を減らせます。また,温水を有効利用すれば,PUEは1.0以下にもなり得ます。ただし,オイルに潜ってのプリント板の交換は難しいですし,オイルに浸かったプリント板が修理できるのかなど,保守性には難がありそうです。

  2013年7月完成予定のTSUBAM-2.5は,現在の2.0のGPUをFermiからKeplerに交換して,単精度浮動小数点演算性能を12PFlops程度,倍精度浮動小数点演性能を4PFlops程度に上げるというアップグレードです。これが実現すれば,単精度では京スパコンを超えます。最近,発表されたアステラス製薬との創薬の共同研究などでは,単精度で済む計算も多いので,この単精度性能は威力を発揮しそうです。

  そして,これらの成果を踏まえて,2014年度には,倍精度演算で25〜30PFlopsのTSUBAME-3.0へと発展させるというロードマップです。

2.AMDがAppleからアーキテクトを引き抜き

  2012年8月1日のThe Registerなどが,AMDがJim Keller氏をAppleから引き抜いたと報じています。Keller氏はiPadやiPhoneに使われているA5プロセサなどの開発部門のDirectorだった人で,AMDではプロセサ部門のチーフアーキテクトとしてVPのPapermaster氏にレポートすることになるとのことです。

  Keller氏は元DECで,21164などをやり,その後,ローパワーのPowerPCプロセサを開発するPA Semiの創立メンバーになっています。そして,一時はAMDに在籍し,x86-64アーキテクチャの開発にも携わったgとのことです。最も最近はAppleのCPU開発部門のDirectorでAシリーズのARMコアのプロセサの開発を指揮していたとのことです。当時の上司がPapermaster氏で,彼が腹心の部下を引っ張ったのではないかと思われます。

  AMDがARMコアのプロセサをやるのかどうかは分かりませんが,Keller氏が低電力の携帯用SoCプロセサの開発に寄与することは確実で,AMDとしてはローエンドAPUに磨きをかけてタブレットやスマホ市場への進出を考えているのでしょう。

3.ARMがMali T604 GPUでOpenCLサポート

  2012年8月3日のThe Inquirerが,ARMのOpenCLサポートに関して報じています。Mali-T604 GPUのOpenCL実装が標準に適合していることの認証を,OpenCLの標準団体であるKhronosコンソーシアムに申し込んだとのことです。

  OpenCLがサポートされれば,グラフィックスや画像処理コードが書きやすくなり,他のGPUへの可搬性も良くなるので,スマホやタブレットのソフトの開発者には朗報です。また,他社のGPUを内蔵するプロセサチップでのOpenCLのサポートにも弾みが付くと思われます。

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