最近の話題 2012年9月8日

1.Hot Chips 24から

1.1 Intelがスマートフォン用Medfieldを発表

  Hot Chips 24においてInteはMedfieldを発表しました。この発表については2012年9月8日のPC Watchに後藤さんが詳しい記事を書いておられます。

  Medfieldは32nmプロセスで作られるスマホ向けのシステムで,現世代のMoorestownと比較すると,スタンバイパワーは33%ダウンの14nW,ブラウジングパワーは0.85Wで29%ダウンと電池寿命を延ばしています。なお,Medfieldはシステム全体の名称で,SoCの名称はPenwellです。

  Penwellは,にPackage on PackageでSoCの上にLPDDR2 DRAMを搭載してボード面積を削減しています。また,PoPにすることにより,DRAMまでの配線も短くなり,消費電力減にも貢献します。メモリとの転送速度は800MT/sで,ピークバンド幅は6.4GB/sとなっています。

  また,高解像度化が進むモバイルデバイスに対応するため,ビデオは1080pエンコードをサポート,カメラも16M-pixel対応,Graphicsは前世代比2.5倍の2000MPPSに性能アップしています。

  Medfieldは,発展途上国のスマホには採用され始めていますが,まだ,先進国の大手には食い込めておらず,今後の動向が注目されます。

1.2 IBMはPOWER7+を発表

  Hot Chips 24において,IBMはPOWER7+を発表しました。POWER7が45nmプロセスを使っているにに対して,POWER7+は32nmプロセスにシュリンクしていますが,8コアで567mm2というチップサイズはPOWER7と全く同じです。ただし,eDRAMのL3キャッシュは32MBから80MBに増加し,総トランジスタ数は2.1B(6TSRAMで作れば5.4B必要)となっています。

  クロック周波数は発表されませんでしたが,32nmシュリンクと電力管理の改善で,コアのクロックは最大25%アップとのことです。

  POWER7+では,暗号化サポートのためのAsymmetric Math Functions,Advanced Encryption Standard/Secure Hash Algorithm,そしてRandom Number Generatorというアクセラレータが追加されました。また,メモリの圧縮を行う842 Proprietary Compression Algorithmを実行するアクセラレータが追加されていますが,詳細は不明です。

  電力管理では,従来のNap,Deep Sleepに,新たにWinkleというステートが追加されました。これは20年寝込んだRip van Winkleにちなんだ命名だそうです。Deep SleepではCore+L2をパワーオフして80%の電力削減を行い,5msで復旧できるのですが,Winkleではそのコアに対応するL3スライスの電源もオフにすることにより,電力を95%削減することが出来,10ms以下の復旧時間とのことです。

1.3 IBMが新メインフレームCPU zNextを発表

  Hot Chips 24において,IBMは次世代メインフレームzNext(正式名称は,zEnterprise EC12)のプロセサを発表しました。これは2010年のHot Chips 22で発表されたzEnterproise 196の後継にあたります。

  zEC12は32nm SOIプロセスを使い,6コアと48MBのeDRAMキャッシュを集積しています。コア数はz196の1.5倍,L3キャッシュは2倍です。チップサイズは297mm2でメタル配線15層,2.75Bトランジスタで,信号は1071バンプ,電源は10000+バンプとなっています。

  そして,クロックは5.5GHzと商用プロセサとしては,最高を誇っています。メインフレームは並列実行が難しい処理でも性能が出るというのが一つの売りですから,クロックの向上は重要です。しかし,2年前のz196が5.2Gzだったので,向上分は6%程度と,伸びは鈍化しています。

 zEC12ではトランザクションメモリがサポートが取り入れられました。JavaのConcurrent Linked Queueのベンチマークでは,HardwareTMの使用で性能が2倍というデータが示されています。

2.HPがXeon Phiを使う1PFlopsのスパコンを受注

  2012年9月5日のHPC Wireが,HPがDoEのNational Renewable Energy Laboratory (NREL)から1PFlopsのスパコンを受注したと報じています。

  このシステムは,第1フェーズでは,IntelのE5-2670 Sandy Bridgeを搭載するHPのProliant SL230とSL250で構成され,一部のSL250ノードにはKnights Cornerが搭載されるとのことです。そして,2013年夏の第2フェーズでは,プロセサをIvy Bridgeに替え,Xeon Phiが600チップ,Xeonが3200チップとなり1PFlopsを超えるとのことです。

  これでお値段は$10Mとなっています。

  このシステムは75度(約24℃)の気温程度の温度の水で冷却する温水冷却方式を採用し,排水温は95度(35℃)程度になります。この温水は暖房に使用されるとのことで,スパコンシステムのPUEは1.06になるとのことです。35℃だとここからエネルギーを取り出すのはあまり効率が良くなさそうですが,クーリングタワーで気温まで冷やしても冷凍機ほどエネルギーを必要としないので冷却に必要なエネルギーが少なく効率的です。

  ただし,「京」スパコンのようにコジェネを使っている場合は,コジェネの熱出力で冷凍機を動かすので,必ずしも冷凍機がエネルギー消費を押し上げるとは限りません。

3.SamsungもASMLに770Mユーロを出資

  2012年8月28日のThe Registerが,Intel,TSMCに続いて,SamsungがAMSLに出資すると報じています。€503MでASMLの株の3%を取得するのと合わせて,研究開発に€276Mを出すとのことです。

  ASMLは,これで外部からの出資を仰ぐのは終わりで,これ以上のパートナーは探さないということなので,この3社だけがASMLのEUV露光技術に他社より早くアクセスできるという点で優位な立場になりました。

  Intel,TSMC,Samsungの3社でASMLの株の23%を持つことになるとのことです。この3社へのASML株の売却で得た資金ですが,自社株の買戻しに使い,株主の還元するそうです。

 

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