最近の話題 2012年10月6日

1.Haswell,Nights Cornerはオンチップレギュレータを採用?

  2012年10月1日のPCWatchが,後藤さんのIntelのJustin Rattner CTOのインタビュー記事を載せています。

  この記事によると,Near Threshold Voltageロジックは,低アクティビティ時間での消費電力の低減などから順次採用が進むという感じで,商品での採用には,まだ,数年はかかるという話ですが,オンチップレギュレータに関しては,Rattner氏は,来年2月のISSCCでHaswellに関する論文を発表できると思うと語っています。

  また,Knights Cornerでも効率的なパワーデリバリが行われていると述べています。

  現在のマルチコアCPUでは,全部のコアに供給する電圧は同じで,アイドルのコアは電源スイッチのトランジスタをオフにするという方法が使われています。これをコアごとに負荷に応じたクロック周波数と,それに必要な最低の電圧 の電源を供給するようにすれば,より電力効率を高められます。しかし,そうするとコアごとにVRM(Voltage Regulator Module)が必要になり,電源ピンの数も多く必要になります。

  電源電圧を制御するレギュレータをチップに集積してしまえば,多数のVRMと電源ピンという問題を解決できるのですが,何しろ,コアごとに10Aオーダの電流を流す必要があるので,大きなトランジスタが必要となります。また,効率を高くするにはスイッチングレギュレータとする必要がありますが,そのためにはエネルギーを 蓄積するインダクタ とキャパシタが必要になります。

  大きなトランジスタと言う点では,現在の電源スイッチのトランジスタと同程度のサイズで良いのですが,耐圧は高くする必要があります。通常のVRMでは,数10KHzから,せいぜい数100KHz程度のスイッチですが,オンチップのトランジスタの場合は数10〜数100MHzで動作させられ,それだけ,エネルギーを供給する時間が 短くなり,インダクタンスやキャパシタも小さくて済みます。しかし,必要なサイズのインダクタやキャパシタをチップ上に作るのは難しいので,これらはパッケージに搭載というような形態が現実的ではないかと思います。

  インダクタを複数の出力で共用するという方式を使えば,Haswellの場合は,8コア程度ですから,コア電源は1個〜2個のインダクタで済むと思われますが,キャパシタは電源の系統の数だけ必要です。 メニーコアのKnights Cornerも話が出てきますが,64コア集積と言われるKnights Cornerでは,より多くのインダクタとキャパシタが必要で,個別のコアではなく,コアのグループごとにオンチップのレギュレータを置くというような方式も考えられます。

  コアの電源電圧をオンチップレギュレータで制御するようになれば,当然,その他の電圧ドメインの電源もオンチップレギュレータで供給することになるでしょう。そうすると,プロセサパッケージには3V〜12V程度の1種類の電源供給で済むようになり,VRMの削除に加えて,電源配線パターンも細くなり,基板のレイアウトもすっきりします。 一方,インダクタやキャパシタを多数搭載するパッケージは複雑になり,コストもアップします。

  いずれにしても,コアごとのように,細粒度で電源電圧を最適化できると,ダイナミック電力を削減するという点で大きな効果が期待できます。

2.ロシアのElbrusがARM用のx86エミュレータを開発

  2012年10月2日のEE Timesが,ロシアのElbrus社のARM用のx86エミュレータの開発を報じています。現状のコードでは,ARMネーティブで実行する場合と比較して40%程度の性能ですが,これから最適化を行う部分を開発し,2014年末には80%を上回ることが出来ると考えていると書かれています。

  開発したコードはx86命令のバイナリトランスレータで,メモリフットプリントは1MBと比較的小さなメモリで動作するとのことです。

  これにより,ARMプロセサでx86のバイナリが動かせることになり,重要ではあるが,効果は限定的というのが,アナリストやARMのエグゼクティブの見方だそうです。

  2004年5月29日の話題で紹介したように,ElbrusのエンジニアはIntelに吸収されたと思っていたのですが,まだ,活動しているのですね。

3.AMDがGPUでのJavaの高速化でOracleと協力

  2012年10月2日のEE Timesが,AMDのGPUでのJavaの高速化でOracleと協力するという発表を報じています。AMDは,Oracleと他のOpenJDKのメンバーでProject Sumatoraを立ち上げ,JavaでCPU+GPUのヘテロジニアスなコンピューティング環境が使えるようにするとのことです。

  Project Sumatraでは,parallel JAVAやRootBeerのAPIであるAparapi,GPU用のJavaコンパイラを整備するとのことです。また,Scala,JRuby,JythonなどのJVMベースの言語でのGPUサポートのガイダンスを作ることも可能性があるとしています。

  このような環境が整備され,JAVAの実行効率が改善されれば,AMDのAPUのサーバでの採用を後押しすることになります。

4.QualcommがHSAに参加

  2012年10月3日のEE Timesが,AMDが中心となって創立したHeterogeneous System Architecture Foundationに創立メンバーとして参加すると報じています。

  HSA Foundationは,業界標準となる,ヘテロジニアスなコンピュート環境のオープンな仕様を作ろうという団体で,AMD,ARM,Imagination Technologies,MediaTek,SamsumgとTIが創立メンバーとして参加していますが,これにQualcommが加わるわけです。

  AMDもライバルであるIntel,NVIDIAは参加していませんが,スマホ分野では大手のSamsung,TIに加えてSnapdragonを持つQualcommの参加は,AMDのHSAの推進には大きなプラスです。

  

  

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