最近の話題 2012年10月20日

1.TSMCが16nm FinFETのロードマップを発表

  2012年10月16日のEE TimesがTSMCのテクニカルコンファレンスでのロードマップの発表を報じています。それによると,2013年にはCLN20SOCと呼ぶ20nmのプレナープロセス,2014年には16nmでFinFETを使うCLN16FF,そして2016年には10nmのCLN10が載っています。この20nmと16nmノードでは二重露光が使われ,レイアウトルールが従来とはかなり異なる点が出てくるとのことです。  

  16nmのCLN16FFはFinFETとなるのですが,バックエンドはCLN20と非常に良く似ているとのことで,配線層はCLN20と同じでトランジスタだけをFinFETに変えたという感じのようです。

  CLN20FFのデザインキットを2013年1月に提供するという目標で作業を進めており,基本となるスタンダードセルやSRAMの提供は1カ月後になるとのことです。そして,リスクプロダクション開始の時期は2013年11月の予定です。量産はリスクプロダクションの4〜5Q後とのことですから,2014年の遅い時期となる見込みです。

  CLN16FFはFinFETを使うのですが,リーク電力の特性は20nmのHigh-K MGのプレナートランジスタと同じとのことで,IntelのようにVtばらつきを抑えてリーク の削減できてはいないようです。しかし,発表者のCliff Hou氏によれば,20nmプロセスと比較して,最大35%の性能向上と最大35%の電力削減になるとのことです。

2.AMDが方針の変更を発表

  2012年10月18日にAMDは2012年3Qの業績と構造改革を発表しました。それによると3Qは$1.27Bの売り上げで,$157Mの赤字です。前年同期は,$1.69Bの売り上げで$97Mの黒字であったのに比べると大きく落ち込んでいます。このため,15%の人員を削減すると発表されました。これにより今年4Qの人件費を約$20M減らし,2013年全体では$190M減らすことができ,黒字転換という目論見です。ただし,退職金などで今年4Qには$80Mの特損を見込んでいます。

  基本的にPCがタブレットやスマホなどに押されて落ち込んでおり,この傾向は続くということで,事業の目標を変更するとのことです。従来,AMDは85%がいわゆるPCの分野の商品であったのですが,3年後には,40〜50%をより成長率の高いサーバ,組み込みコア,通信SoC,ゲーミング,超低電力のタブレット用プロセサなどの分野の製品に移行するという方針です。

  人員を減らして,これらの新分野の製品の開発を進める方法として,3rdパーティーのIPを積極的に利用していくという方針で,2012年10月19日のEE Timesは,ARMのIPの利用に目を向けていると述べています。

  しかし,これでうまく行くかどうかは難しいところで,2012年10月18日のThe Registerの記事によると,電話での説明会での,アナリストからのAMDのRead社長への締めくくりの言葉は”Good Luck”であったそうです。

3.CalexedaがARMサーバチップのロードマップを発表

  ARMベースのサーバチップを開発しているCalexedaが,ARM Techconに先立ってロードマップを発表しました。同社はARMサーバチップを開発するスタートアップで,現在は,EnergyCore ECX-1000というARM Cortex-A9 4コアのチップを販売しています。そして,このチップは1000個以上のCalexedaチップを接続するためのCalexeda Switchを内蔵し,5本の10GbEポートがでています。

  2013年にはMidwayのコードネームで開発されている4コアのCoartex-A15コアを搭載するチップを出す予定です。2012年10月17日のThe Registerの報道では,このA15は32bitのV7アーキで,40bitのメモリアドレスサポートとのことです。Midwayでは,仮想化もサポートされます。また,このチップでは,チップ間を接続するCalexeda Fabricも第二世代になり,負荷に応じて消費電力やルーティングを切り替える機能などがエンハンスされているとのことです。

  そして,2014年にはLagoというコードネームの,ARM64ビットのV8アーキテクチャをサポートするコアを4個以上搭載するチップを出す予定です。

  そしてLagoのFabricは数万〜数10万のチップを接続する倉庫サイズのデータセンター構築が可能であり,Fleet Servicesをサポートすると書かれています。Fleet Servicesが具体的にどのような機能であるのか明らかになっていませんが,巨大なシステムの管理の自動化や共通オペレーションの最適化が可能とのことです。

4.PenguinがARMベースのマイクロサーバを発表

  2012年10月18日のHPCWireが,Penguin社のARMベースのマイクロサーバの発表を報じています。PenguinはHPCクラスタの分野では良く知られている会社ですが,このARMベースのマイクロサーバで,いわゆるBig Dataの分野にも進出しようという目論見です。

  大量のデータを解析する用途では,I/Oが多くこれが性能の制約になり,CPUの能力はそれほど必要ないということが多いと言われます。このような用途では,CPUとして高性能のXeonは不必要で,能力は低いが電気を喰わないCPUが欲しいということになります。

  このUltimate Data X1(UDX1)という名称のPenguinのサーバは2Uサイズで,CalexedaのEnergyCore ECX-1000チップを4個搭載したボードを12枚収容できます。ECX-1000はCortex-A9コアを4コア集積しており,全体では192コアのシステムを構成できます。また,ECX-1000はDRAMコントローラ,10GbEのスイッチやインタコネクトのマ ネージングエンジン,SATAポートなどを集積しています。そして,各サーバノードには4GBのDRAMを搭載しています。また,この2Uのボックスに最大144TBのハードディスクを接続できます。

  ECX-1000はフル負荷の場合の消費電力は5Wとなっているので,48チップ合わせても240Wで,これはハイエンドのXeonなら2チップ分の消費電力です。

  このUDX1のお値段は,フル構成で$30K〜$35Kとのことです。

  なお,紹介が漏れましたが,2012年7月にBoston Ltdというイギリスの会社が,ViridisというARMサーバを発表しています。このサーバは4個のECX-1000チップを搭載するボードを2U筐体に12枚収容という仕様で,PenguinのUDX1とほぼ同じ仕様で,こちらの方が数か月早い発表です。

5.ASMLがEUV光源メーカーのCymerを$2.6Bで買収

  2012年10月17日のEE Timesが,ASMLがCymerを約2.6Bで買収すると報じています。Cymer社の2011年の売り上げは$594Mですから,この買収額は4〜5年分の売り上げに相当します。

  EUV露光装置の実用化は,遅れに遅れて10nm世代に間に合うかという状況ですが,その最大のネックはEUV光源の出力が上がらず,露光時間が長い点です。ASMLのプレ量産機の現在のスループットはウエファ7枚/時ということで,150〜200枚/時と言うArF露光装置に比べて遅く,それで値段が倍以上ですから, ウエファあたりの露光コストが高く,量産には使えません。

  ASMLは光源の出力を105Wに上げ,69枚/時を2014年に実現することを目標としており,光源メーカーのCymer社を買収し,一体となって光源の開発を加速しようということのようです。

  Cymer社はArFなどのDeep Ultra Violet光源やシリコン結晶の成長装置も作っており,これらのビジネスも含めての買収となりますが,$2.6Bはかなり大きな投資です。7月14日の話題などで紹介したように,ASMLはIntel,TSMC,Samsungから合計では$6B以上となる投資や開発資金を集めており,この資金を使っての買収と考えられます。

  EUV光源のメーカーとしてはウシオ電機とGigaPhotonという会社があり,ASMLはこれらの会社との関係も継続するとのことですが,ASMLがCymerの光源をメインにしてしまうと,ウシオやGigaPhotonが他の有望な顧客を見つけるのは大変そうです。

 

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