最近の話題 2012年10月27日

1.ARMの3Qは18%増収

 2012年10月23日にARM社は2012年3Qの業績を発表しました。それによると,売上は$227.9Mで,前年同期と比較すると18%の増収です。ヨーロッパの景気が落ち込む中,素晴らしい業績です。また,ARMはプロセサを設計するコストは掛りますが,製造するコストは掛らないので,売り上げの47%が利益という素晴らしい商売です。

 そして,3Qには29件のプロセサライセンス契約を獲得し,2.2B個のARMプロセサが販売されたとのことです。プロセサ1個あたりの平均のラインセンス料は4.85セントです。

  ARMというとiPhoneやiPadなどのモバイルデバイスを思い浮かべますが,収入の40%はTV,DVDプレーヤ,セットトップボックス,車のアンチロックブレーキなどに使われるプロセサからとのことで,単価の違いを考えると,これらの組み込み用に使われている方が多いようです。

2.AppleがA6Xプロセサを使うiPadを発表

  2012年10月23日にAppleはA6Xプロセサを使う第4世代のiPadを発表しました。このタブレットは9.7インチで2024×1536ドットのRetinaディスプレイを使うのは,現在の製品と同じですが,プロセサがA5XからA6Xにアップグレードされ,プロセサ性能も,ディスプレイ性能も2倍に向上しているとのことです。

  同日のEETimesによると,このA6XプロセサはデュアルコアのARMプロセサと4コアのGPUを搭載とのことで,iPhone5で使われているA6のグラフィックスコアを3コアから4コアに強化したものと思われます。2012年10月24日のPC Watchの後藤さんの記事によると,A5Xが45nmプロセスで作った大きいチップであるのに対して,A6Xは32nmプロセスで,32nmの製造プロセスが立ち上がっ たので,A5Xの製品を発売半年で止めて,コスト的にも安い32nmのプロセサう使う製品に切り替えたとのことです。しかし,これまで1年サイクルであったのに,半年での新しいモデルの発表は,A5Xモデルを買ったユーザにはショックでしょうね。

  また,予て噂されていた,7.9インチのディスプレを搭載するiPad miniも同時に発表されました。こちらは1024×768ドットと1/4のピクセル数で,A5プロセサを使っているそうです。A5プロセサは45nmプロセスでiPhone 4Sに使われたのが最初ですが,後藤さんによると,これも32nmプロセスに変わってコストダウンされているそうです。しかし,7.9インチで30%程度液晶面積が大きいとは言え,AmazonのKindle Fire HDが$200を切るのに対してiPad miniは$300を超えるので,まだ,価格差は大きいようです。

3.SamsungがデュアルA15搭載のExynos 5開発ボードを発表

  2012年10月26日のThe Inquirerが,SumsungのExynos 5開発ボードの発表を報じています。このArndaleボードは,クロック1.7GHzのCortex-A15デュアルコアと,クワッドコアのMali-T604 GPUを集積したチップを搭載しており,CPU,GPUともに強力で,ハイエンドのタブレットなどをターゲットとしています。このチップはSamsungのHigh-K,Metal Gateの32nmプロセスで製造されます。

  このArndale開発ボードはGPUやカメラセンサー,NFC,タッチスクリーンをサポートできます。Arndaleボードのお値段は$249ですが,NFCや7iと10.1inのタッチスクリーンをサポートするには拡張ボードの接続が必要とのことです。

4.$99でスパコンボードを手に入れよう Adapteva社のParallellaプロジェクト

  2012年10月7日のThe RegisterがAdapteva社のParallellaプロジェクトについて報じています。この記事を読んで,興味は持ったのですが,基本となるEpiphany Wチップについては8月25日の話題で紹介しており, 今回はプロセサ自体の話題でもないのでと思いパスしてしまったのですが,読者の方から,紹介して欲しいというご要望を戴きましたので取り上げました。

  このEphiphany Wと呼ぶプロセサは独自命令のRISCコアを64個集積するチップで,単精度浮動小数点演算で100GFlopsを2Wの電力で実現するとのことです。なお,Parallellaプロジェクトのページでは,ピーク性能は90GFlopsとなっています。そして,このチップはGlobal Foundries社の28nmプロセスで製造される予定です。

  このような並列プロセサのサポータを集めるのに,Adapteva社が 使ったのがKickstarterというやりかたです。Kickstarterは革新的なプロジェクトを考え,実行に移そうという人達の資金集めを助ける組織で,Webでプロジェクトの詳細を公表し,寄付 (あるいは出資)を募ります。このParallellaのようにハード開発のプロジェクトよりも,自主製作の映画を作りたいとか独自アイデアのゲームを作りたいので資金を集めたいという方が,Kickstarterの使い方としては多いようです。 ただし,Adaptevaとしては,資金集めといいうよりは,Epiphanyチップを使って開発を行うサポータを集めるという色彩の方が強いように思われます。

  Kickstarterは,目標額と期間を決めて,寄付を募り,目標額に達する金額が集まると,その額が出資者のクレジットカードから差し引かれ,Kickstarterの手数料などを差し引いて,プロジェクトの提案者に資金が渡ります。一方,目標額に達しない場合は,出資者のカードから引き落としは無く,募集は無かったことになります。

  目標額に達した場合,出資に対する何らかの見返りがあるのが普通で,詳細はそれぞれのプロジェクトのページに記されています。

  Parallellaプロジェクトの場合は,出資金額の最低は$1で,$25以上なら プロジェクトのTシャツ,$99以上だと16コアのEpiphany Vチップを搭載したParallellaボード,$199以上だと,このボードが2枚,あるいは64コアのEpiphany Wチップを搭載したボードが貰えます。 ただし,Epiphany Wチップを搭載したボードの出荷予定は2013年5月となっています。

  出資申込みの締切は,米国東部夏時間で10月27日土曜の午後6時となっており,日本の土曜の午後1時の時点では,出資者の総数は4191人で,総額は$766.911となって います。まだ,18時間を残して目標額の達成です。しかし,ストレッチゴールの$3Mは難しそうです。

  来年5月まで待てば$199でEpiphany W開発ボードが手に入るのですが,$10,000以上出資すると,64コアのEpiphany Wの評価キットがすぐに提供され,開発が始められるという見返りのクラスもあり,この区分に7人が出資表明しています。これを使ってビジネスをするつもりなら,6か月の先行は大きいので,1万ドル出しても価値があるのでしょう。

@1056137

 

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