最近の話題 2012年12月15日

1.Intelが22nm FinFET SoCプロセスを発表

  2012年のIEDMでの22nm FinFET SoCプロセスの発表を2012年12月10日のEE Timesが報じています。

  SoC向けなので,6月のVLSI Symposiumに発表されたプロセスより低リークトランジスタのバリエーションが増え,次の表のようになっています。

  HPはVLSI Symposiumの発表では,HPは,0.8V電源で,1.26mA/umと0.65uA/umとなっていましたが,今回の発表では,0.75Vで1.08mA/umと0.91mA/umと,NMOSとPMOSのバランスが良くなっています。また,0.75Vを標準の電源とすると,従来に比べて20%程度は低い電源で,40%近い動作電力の減少が見込まれます。

  追加になったLP(Low Power)はIdsatはHPの40%程度ですが,リーク電流は30pA/umとHPの1/3300となっています。ULP(Ultra Low Power)はIdsatは30%程度になりますが,リークはLPの更に半分の15pA/umです。回路のスピードは,ほぼ,Idsatに比例するのでHPに比べるとクロックは落ちますが,超低リークなので,待ち受け時間の長いモバイルデバイスには威力を発揮します。

  22nmFinFETは,32nmのプレナーデバイスと比較すると同じIdsatでのリーク電流は,NMOSでは1/30,PMOSでは1/10程度に減少しています。また,DIBLも30〜35mVと従来の1/3に減少しています。

  HPやSPのトランジスタのリークは大部分がoffリークですが,30pA/um以下になると,High-k絶縁膜のゲートリークやドレインからサブストレートへのリークも見えてくるレベルで,これを達成するには各種のバランスを取って特性を合わせる必要があるとのことです。

   しかし,各種のVtの異なるトランジスタを作るために,IntelはFinに不純物のドーピングを行っています。そうすると,不純物原子の統計的ばらつきでVtがばらつくという問題が避けられません。また,キャリアの移動度も下がります。本来のFinFETはドーピング無のFinでゲート金属のワークファンクションでVtを決めるという考えなのですが,HPからULPの4種のトランジスタに4種のワークファンクションの異なる金属を選び,それらをプロセス的に両立する方法で付けるというのは,現在では不可能なのでしょうね。

2.ST Microが28nmのFDSOIのプレ量産開始を発表

  2012年12月11日のEE Timesが,STMicroeletronics社の28nmFDSOIプロセスでのプレ量産の開始を報じています。シリコンを完全に空乏化するFD(Fully Depleted)SOI(Silicon On Insulator)プロセスは,FinFETと並んで短チャネル化に向いたトランジスタ構造です。

  また,今回の28nmに続いて,2013年3Qには20nmのFDSOIのプロトタイプの製造を始めるとのことです。

  ST EriccssonのNovaThorというベースバンドモデムとアプリプロセサを集積したチップを試作し,0.6V電源で800MHzで動作し,電源を上げれば2.5GHzで動作とのことで,かなり広いDVFSが可能としています。

  FinFETではトランジスタ構造が大きく変わり,設計ルールも変わるのでEDAでの対応が大変と言われますが,FDSOIはプレナー構造なので,このような問題が少ないと言われます。また,埋め込みOxideの厚みも薄くしたUTBB FDSOIになると,裏側からのバイアスでVtをコントロールできるようになり,ドープ無でも各種のVtが実現でき,かつ,ダイナミックにVtを変えることもできるようになるというメリットがあり,FDSOIはFinFETの有力な対抗馬です。

3.Intelが低電力Atomサーバチップを発表

  2012年12月11日のEE Timesが,IntelのS1200シリーズと呼ぶ,低電力のAtomサーバチップの発表を報じています。Centertonのコードネームで開発されてきたこの製品は,32nmプロセスで製造されるデュアルコアのプロセサで,最上位のS1260はクロック2GHzでTDPは8.5Wとなっています。S1240とS1220はクロックが1.6GHzで,S1240は6.1W,S1220は8.1WのTDPとなっています。

  お値段は,S1260をトレイ単位で買った場合の単価が$65とのことです。

  メモリはECCやメモリスクラブをサポートし,DDR3 1333MHzのDIMMが使用できます。I/Oインタフェースは,PCI EXpress2.1 x8のポートとUSBポートを内蔵していますが,Ethernetは外付けになります。ブロックダイヤを見ると,HDDとネットワークインタフェースがCPUから出ているように書かれていますが,専用のポートは無いので,PCI Exress経由の接続になると考えられます。

  Atomは,64bitアドレス空間をサポートしている点が,現在のARMのサーバ用チップに対して優れている点で,これに10W以下のTDPというメリットを加えたという製品で,HP,DELL,Supermicroなど既に20社が採用を決めているとのことです。

  ARMは64bitアーキテクチャのARMv8命令セットをサポートするA50シリーズのコアを発表しましたが,製品が出てくるのは2014年の予定で,それまでは本格的なサーバ市場への進出は出来ません。一方,S1200自体は10W以下といってもPCIe経由でEthernetコントローラとHDDコントローラを付けなければなりません。CalxedaのARM A9 4コアのECX-1000 SoCは32bitアーキとは言え,HDDコントローラやFabric Switchを内蔵し,4GBのDIMMを含めて5Wですから,まだまだ,Intelのソリューションは高電力です。

  Intelは,22nmプロセスを使うAvotonを来年には出す予定で,Avotonではコアの設計を一新してOut-of-Orderコアとして性能を上げ,Ethernetコントローラも内蔵するとのことです。2014年時点で,両社の64ビットアーキの低電力サーバチップの消費電力,性能,そしてお値段がどうなるのか興味深いところです。

 

 

  

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