最近の話題 2013年1月12日

1.タブレットSoCはApple,NVIDIA,スマホはQualcomm

  2013年1月7日のEE Timesが,Strategy Analysis社の市場シェア調査の結果を報じています。それによると,2012年の3QのタブレットSoC市場は約$900Mで,AppleのAシリーズが53%と過半数のシェアを占めているのですが,NVIDIAが17%でそれに続き,NVIDIAはNon-Appleのタブレットではトップシェアとのことです。また,この市場は,前年同期と比較すると77%伸びているとのことです。

  一方,スマホプロセサの市場規模は$3.8Bで,前年同期から58%の伸びとなっています。この市場の42%をSnapdragon を擁するQualcommが占め,第2位はExynosを持つSamsungが27%で,第3位はMediaTekの12%で,BroadcomとEricksonが続くとのことです。初期には携帯用のプロセサでトップだったTIは,今回はベスト5落ちという結果になりました。

  なお,スマホ用ではLTEのベースバンドモデムを内蔵しているQualcomm,Samsung,MediaTekが強いという状況であり,NVIDIAは2013年末までには ,Tegra 4では外付けのi500のベースバンド用プロセサを内蔵するGrayを出して,上位メーカーを追い上げようという状況です。

2.NVIDIAがTegra 4とゲーム機Shieldを発表

  2012年のCESにおけるNVIDIAのTegra 4の発表を,2013年1月7日のEE Timesなどが報じています。Wayneのコードネームで開発されてきたこのチップは,CPUはCortex A15を4コア,GPUは72CUDAシェーダーコアを搭載しています。

  現在の製品であるTegra 3はCortex A9コアで,CUDAシェーダーコア数も12であるので,CPUコアは1世代進み,GPUはコア数は6倍に強化されています。また,最高クロックスピードは1.9GHzとのことで,Tegra 3の1.4GHzから36%向上しています。その結果,Tegra 4は,Web閲覧性能はTegra 3の2.6倍とのことです。

  なお,今回は,チップサイズ,消費電力,クロック周波数などは発表されていません。

  Tegra 3はTSMCの40nmプロセスで製造されているのですが,Tegra 4は28nmプロセスとなっています。トランジスタ密度は単純計算では2倍となるのですが,CPUやGPUの強化でトランジスタ数も増えているので,チップサイズは 大きくなっているかも知れません。

  また,Tegra 3と同様に,低負荷の場合には低電力コアに切り替えて電力を抑える機構が搭載されています。チップ写真では5コアとも同じに見えるので,Tegra 3のCompanion Coreと同様に半導体プロセスで低リークコアを作っていると考えられ,Cortex A7との間で切り替えるARMのbig.LITTLEは使っていないようです。

  そして,Tegra 4には,NVIDIAが買収したIceraのi500 LTEソフトモデムチップがオプションで接続できるようになっており,LTE接続のスマホやタブレット でのLTEサポートを容易にする作りになっています。

  同時に,NVIDIAはTegra 4を使う製品であるProject Shieldを発表しました。Shieldは5インチのディスプレイとゲームコントローラをクラムシェル構造にしたようなもので,Androidベースの携帯型のゲームマシンです。また,HDMIをサポートし,家庭の大型TVスクリーンでゲームを楽しむこともできる構成になっています。今回のCESで展示されたものはプロトタイプで,製品は変わる可能性があるとのことですが,一方,数か月以内に出荷可能という話もあり,完成度は高いと考えているようです。しかし,Androidの携帯ゲームはスマホやタブレットを使うユーザが多い現状では,Shieldが成功するかどうか,アナリストの意見は割れているようです。

3.Qualcommが次世代のSnapdragon 200〜800のサンプル出荷を開始

  NVIDIAがスマホ市場を窺う状況で,トップシェアのQualcommもSnapdragon 200〜800という新製品を投入します。2013年1月8日のEE Timesが,これらのSoCのサンプル出荷の開始を報じています。

  今回発表のSoCには,現在のSnapdragonのKraitコアをアップグレードしたKrait 300コアとKrait 400コアが使われています。Qualcommはこれらのコアの詳細を発表していないのですが,EE Timesは,Krait 300はKraitと同じ28LPプロセスを使っていますが,クロックを1.7GHzから1.9GHzに引き上げており,一方,Krait 400コアは,28HPMプロセスで設計されたコアで,2.3GHzクロックと書いています。

  ハイエンドのSnapdragon 800は,Krait 400を4コアと,Adreno 330 GPUを搭載し,いわゆる4K×2KのUltraHDビデオ表示をサポートします。Adreno 330は,現在のAdreno 320と比較して計算性能は2倍以上と書かれており,シェーダーコアを倍増していると思われます。そして,カテゴリ4の150Mb/sのLTEモデムも集積しています。また,メモリはLPDDR3サポートとなり,最大12.8GB/sのバンド幅を持ちます。

  その結果,Snapdragon 800は,現在の製品であるSnapdragon S4 Proと比較して75%の性能アップと発表されています。そして,Krait 300を4コアとAdreno 320 GPUを使うSnapdragon 600は,S4 Proと比べて40%性能アップとのことです。

  これらのチップを使った製品の登場は,2013年後半と見られています。

4.AMDがノート,タブレット用のKabiniとTemashプロセサを発表

  2013年1月8日のPC WatchがAMDの発表記者会見を報じています。

  Kabiniは,x86アーキテクチャのJaguar 4コアで,TDPが15W程度で,UltraThinノード向け,TemashもJaguar 4コアですが,TDPが5W程度とタブレット向けとなっています。製造プロセスは28nmとのことです。

  このクラスではIntelは2コアの製品しかなく,4コア搭載で性能をアップしているのが売りです。記者会見では,Kabiniを搭載したUltraThinノートとIvy Bridgeのノートで同じ処理を実行し,Kabiniの方が早く終わるというデモを見せています。

  これらのチップにはGCNベースの新GPUが搭載されており,TemashのタブレットとIntelのClover Trailベースのタブレットで3Dゲームを実行し,Temashの方が圧倒的に速いというデモも行ったとのことです。

  これらのチップは既に出荷を開始しており,今年の中頃には搭載製品が登場するとのことです。

5.IntelはZ2420搭載スマホと7W IvyBridgeを発表

  CESでのIntelの発表を2013年1月11日のTech On!などが報じています。

  Atom Z2420は,Lexingtonのコードネームで開発されてきたSoCを使うスマホのリファレンスマシンを展示しました。シングルコアでクロックは1.2GHzと低めですが,フルHDのエンコード/デコードができる性能を確保しているとのことです。売りはお値段で,$20以下とのことです。また,現時点でAcer,インドのLava,ケニアのSafaricomがZ2420を使うスマホの開発を表明しているとのことです。

  また,2コアのAtom Z2580を採用したスマホの展示です。Clover Trail+と呼ばれていたZ2580は現行のZ2460に比べて性能は2倍で,消費電力は同じとのことです。CESでは,このSoCを搭載したLenovoのIdeaPhone K900が展示されていたそうです。

  更にタブレット向けのBay Trailの試作機を発表しました。Bay Trailは22nmプロセスを使う4コアのSoCで,現行の32nnmのClover Trailに比べて性能は2倍で,バッテリで24時間動く設計とのことです。

  確かにスマホの販売台数はPCを上回るのですが,Z2420の売値はPC用プロセサの1/10で,10倍売らないと同じ売り上げ金額にはなりません。しかし,タブレットの販売がPCを上回るのも時間の問題という情勢になっており,PC用プロセサに頼っているとゆでガエルになってしまいますから,Intelも必死ではないかと思います。

  また,IntelはSDP(Scenario Design Power) 7WというIvy bridgeの低電力版を発表しました。2013年1月9日のARS Technicaは,この消費電力削減はマーケティングによってなされたと書いています。

  Pntium 2129Yはクロックが1.1GHzでSDP 7W,Core i3 3229Yはクロック1.4GHz,Core i5 3339Yはクロック1.5GHzでターボでは2.0GHz,Core i5 3439Yは1.5GHz/2.3GHz,Core i7 3689Yは1.5GHz/2.6GHzで,全てSDP 7Wとなっています。しかし,TDPを見るとPentium 2129Yは10W,Core i3とi5プロセサは全て13Wとなっています。

  Core i5 3317Uと今回発表の3339Yを比較すると,どちらも2コア4スレッドで,Intel HD Graphics 4000を搭載しています。3317Uのクロックは1.7GHz/2.6GHzですから,3339Yのクロックは0.2GHz/0.6GHz下がっています。また,HD Graphics 4000のクロックも3317Uが350/1050MHzに対して3339Yは350/850MHzとターボの上限が200MHz下がっています。これでTDPは3317Uが17W,3339Yが13Wです。

  CPUコアのクロックが1.7GHz→1.5GHzですから12%ダウンで,クロック低下で可能となる電源電圧の低減も合わせると20〜30%のTDP低減は実現可能と思われ,3339Yとしてローパワー用の特別なチップを作る必要はなく,3317Uのチップの検査規格を変えるだけでTDP 13Wは対応できそうです。

  そして,TDPはある意味では最大消費電力ですが,SDPは実際の使用状況での消費電力で,アイドルや低負荷の状態も含まれています。その意味ではSDPは想定したシナリオで使う場合は,この程度の電力ですよという参考情報とも考えられ,従来のTDPと同等には考えられません。その意味ではマーケティングによる低電力化というARS Technicaの指摘は当たっていると思います。

 

  

 

 

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