最近の話題 2013年3月2日

1.ISSCCで富士通研が32Gbpsのトランシーバを発表

  2013年2月18日のマイナビが,ISSCCでの富士通研究所の32Gbpsのトランシーバの発表を報じています。プリント基板で80cm程度まで32Gbpsで伝送できるとのことで,現状では6〜10Gbps程度のプロセサチップ間などの接続を大幅に高速化できるという技術です。

  特徴的なのは16Gbpsの2チャネルの信号を半サイクル位相をずらせて重ねるという方法を使っている点です。信号波形は両方のチャネルの出力が0の場合は0,どちらか一方の出力が0,他方の出力が1の場合は1,両方の出力が1の場合は2と3値になります。受信側の入力が1の時は,それだけではどちらのチャネルが1であるかは分かりませんが,0→1,2→1に変化したタイミングがどちらのチャネルの出力が変化する時であるかを見れば,両方のチャネルの送信データを正しく理解することができます。

  従来の方式で16Gbpsから32Gbpsへのシリアライズを行って32Gbpsの2値信号を出力しようとすると,消費電力の大きい高速で動作するマルチプレクサなどが必要となるのですが,3値のこの方式で電流出力型の出力ドライバを使えば,32Gbpsで動作する回路が不要となり,送信回路の電力を30%削減できるとのことです。

  また,帯域が広くなるため,従来の高域の補償だけでは不十分で0.1〜1GHzという中域の減衰も補償して周波数特性を平坦化する方式となっています。そして,受信信号のサンプリングクロックを同期させる従来の方法は,伝送速度が高速になるにつれて困難になるので,受信信号を2つのタイミングでサンプリングして,その電圧から補間を行って信号を推定するという方法を開発したとのことです。

  現状では,研究所レベルの技術ですが,今後,サーバのボード間のバックプレーンインタフェースなどへの適用を進めていくとのことです。

2.中国はGodsonプロセサの実用化を推進

  2013年2月20日のEE Timesが,ISSCCでGodson 3B1500プロセサを発表した中国科学院とLoongson Technology社の兼任のWeiwu Hu氏のインタビューに基づく記事を載せています。

  それによると,今回発表した32nmプロセスの8コアのGodson 3B1500チップはサンプル出荷が始まっており,次の28nmプロセスのチップも2ヶ月以内にテープアウトの予定だそうです。この28nmのチップがLoongson Technology社の最初の商用サーバプロセサとなる予定とのことです。

  32nmのチップはKVMやHadoopなどのオープンソースのソフトウェアが動いているとのことです。

  並行してデータベースやミドルウェアなどのソフトウェアの開発も行われており,Dawning,Great Wall,Inspurなどを含む10社がGodsonベースのサーバを開発中とのことです。

  また,Loongson社では上はスパコン用のチップから,パソコン用,組み込み用までのGodsonプロセサの開発を行っているとのことです。そして,Godsonベースのパソコンを数1000台作り,政府機関で試用していると述べています。また,32bitの組み込み用チップはHaierやHisenseのTVに使用されているとのことです。

  競合製品と比べると,性能では多少劣るが,コストやローカルのサポートという点で,中国市場では競争力があると考えているとのことです。国策ということで,中国のマイクロプロセサの開発,実用化は着実かつ広範に進められており,米国や日本などのレベルに追い付くのは時間の問題という感じがします。

3.Intelが14nmプロセスでAlteraのFPGAを製造

  2013年2月26日のEE Timesが,Intelが14nm FiFETプロセスでAltera社のFPGAを製造すると発表したと報じています。

  Intelは,これまでAchronics社とTablua社というスタートアップのFPGAメーカーとNetronome社のネットワークプロセサに22nm FinFETプロセスを提供し,ファブをやっていますが,製造量的には非常に少ないと見られています。

  これに対して,Altera社はFPGA業界ではXilinxに次ぐメーカーです。14nm FinFETプロセスで製造するのはハイエンドの製品だけとのことですが,それでも,これまでより量は拡大すると見られます。

  14nmプロセスが使用可能になるのは2014年で,このプロセスを使うAlteraのFPGAが出てくるのは2015年と見られています。

  TSMCやGlobal Foundriesも14nm FinFETプロセスを開発ていますが,これらのプロセスはトランジスタは14nm FinFETですが,配線は20nmプロセスと同じで,チップ面積としては20nmからあまり縮小はできません。一方,Intelの14nmは配線も14nmルールと見られ,これらのファブと比較すると,2倍程度の密度が得られると思われ,Alteraの競争力を強化しそうです。

  なお,Intelはネットワーク機器の大手のCISCOのASICを製造とか,Samsungへの依存度を下げたいAppleのSoCの製造などのうわさがありますが,これらの情報は確認されておらず,Altera向けの製造が始まると,初の規模 の大きなファウンドリビジネスということになると思われます。

4.Titanの受け入れ時期が遅延

  2013年2月27日のHPCWireが,Knoxvill Newsの記事を引用し,Oak Ridge国立研究所のTitanに不具合があり,受け入れ検査の完了が,最大1〜2ヶ月遅延すると報じています。

  テストジョブの95%以上を動作させるという検査に関しては既に92〜93%に達しており,もうすぐ基準に達する見込みなのですが,安定性テストに問題あり,受け入れ検査をパスしなかったとのことです。

  しかし,既に原因は判明しており,CPUとGPUを繋ぐコネクタ部の問題で,たまに通信エラーが発生するとのことです。ボードをCrayの工場に持ち帰って改良するというプロセスを行っており,これが完了すれば,動作安定性のテストを通せる見込みだそうです。

  受け入れ検査をパスするまで代金は払われませんが,Crayの会計年度末は12月31日で,1Qの業績には影響するかも知れませんが,年度をまたぐことにはならないと思われます。

  

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