最近の話題 2013年3月9日

1.2012年4Qサーバ市場シェアはCISCOが躍進

  2013年3月4日のThe Registerが,IDCの2012年4Qのサーバ市場シェアの発表を報じています。

  それによると,出荷台数は2.1M台で,前年同期から3.9%ダウンですが,売り上げは$14.6Bで3.1%の増加となっています。なお,これらの数字はメーカーでの出荷ベースで,システムインテグレータや代理店などの売り上げとはずれがあります。

  メーカー別では,$5.34Bの売り上げのIBMがトップで,2位が$3.63BのHP,3位が$2.22BのDELLと続いています。そしてOracleが$602Mで4位,富士通が$501Mで5位,CISCOが$480Mで5位ですが,IDCのランキングではこの3社は差が殆ど無いとのことで3社とも4位となっています。

  前年同期比では,IBMは3.1%増,HPは3.2%減,DELLは5.7%増,Oracleは17.8%減,富士通は3.5%増,CISCOは50.7%増となっており,CISCOの躍進が目立ちます。このペースで行けば,来年にはCISOCはOracleや富士通を抜いて単独4位になりそうです。サーバに進出して,まだ,4年の新参のCISCOがここまで大きなシェアを取るのは大したものです。

  IBMはzEC12の出荷でメインフレームの売り上げが$1.8Bと55.6%伸びたのがシェアの向上に大きく寄与しており,市場全体で台数減なのに金額増となったのも,高価なメインフレームが増えたことが貢献しています。ただし,これはzEC12の登場に伴う一時的現象とみられます。

  2012年全体では8.1M台で売り上げ総額は$51.3Bで,前年と比較すると台数では1.5%ダウン,金額deha1.9%ダウンとなっています。

  googleやFacebookなどの大規模データセンターに設置される高密度サーバは$705Mで,前年同期から66.4%の増加です。この内,192,000台は標準品ではなく,カスタムのサーバとのことです。これらの高密度サーバの平均売上金額は$3672となり,かなりローマージンの製品で,価格競争の厳しい世界です。

  OS別ではWindowsを使用するサーバが$6.7Bでトップで,金額としても昨年より3.2%増加しています。Unixベースのサーバは$2.6Bで,24.8%減となっています。一方,Unixの延長であるLinuxベースのサーバは$3Bで12.7%増となっており,Unix-Linux合計では$5.6B,8.5%減となっています。

2.Intelの新CEOはAppleのファブビジネスを推進するか?

  2013年3月7日のReuterがIntelの今後の方向についての分析を掲載しています。

  IntelのOtellini CEOは,予てより5月での引退を表明しており,間もなく,Intelに新しいCEOが誕生します。Otellini氏からは社内からの昇格を望むという発言もあったのですが,最近の取締役会の意向としては,社外からのリクルートという方向が強まっているとのことです。

  一方,IntelはPC分野ではプロセサや周辺チップで圧倒的なシェアを持ち,プロセス技術でも他社を1周(2年)以上リードするという圧倒的な技術開発,製造技術を誇っています。しかし,PCの売れ行きに陰りが出てきて,最近では半導体工場のキャパシティーが余ってきていると見られています。

  半導体工場は生もので,すぐに陳腐化してしまうので,活きの良いうちに売らないと大損害となります。先週の話題で紹介したAltera社のFPGAの製造などはキャパシティーを売り切るという政策の一環と思われます。

  IntelはPCに変わって主流となってきているスマホやタブレット分野では,若干の採用例が出てきているものの,先行するApple,Qualcomm,Samsungなどに大きく水をあけられています。この分野でのチップのシェアが取れないと,半導体の製造量が減り,ひいては設備投資や開発費が減り,製造技術のリードも減るというダウンスパイラルに陥ることも考えられます。

  ということで,Intelの新CEOは,この問題に取り組む必要があると見られています。

  成長分野で強い商品を持つのがベストですが,ここで,製造量の落ち込みを補う解の一つとして業界でささやかれているのが,AppleのA6とその後継のSoCの製造を担当するという取引です。Macquarie社のアナリストはAppleのSoCの製造を行えば,2015年には$4.2B(約4000億円)の売り上げが見込めるとのことで,相当の製造量と売り上げが見込めます。

  一方,Appleは,現在はSamsungでSoCを製造しているのですが,製品や特許訴訟などでSamsungとは角を突き合わせている状況で,半導体の製造でSamsungには依存したくないので,代わりになるファブとしてIntelは魅力的と見れれていると思われます。

  業界の関係者によると,AppleとIntelは接触を持っているとのことですが,まだ,何も決まっていないとのことです。

  方向としては両者の利害が一致しているとしても,Appleにとっては,チップの値段や供給保証などが問題になるでしょうし,Intelにとっては,売値と投資に見合う購入保証などが問題になると思われるので,時間のかかる交渉になると思われます。

  しかし,Intelは,ある程度,お尻に火がついて来ている状況で,新CEOの考え方で大きく事態が動くこともあり得るというのがロイターの観測です。

3.PS3ベースのヨルダン初のスパコン

  2013年3月7日のHPC Wireがヨルダン初のスパコンについて報じています。IMAN1と呼ばれるこのスパコンの開発は2010年1月に開始され,2011年10月にはパワーオンしていたとのことですが,2013年3月6日にヨルダンで開催されたMENA ICTフォーラムで正式に発表されました。

  このスパコンは2260個のPS3のデバイス(CELLプロセサの意味?)を使用するで,性能は25TFlopsとのことです。CELLチップのピーク性能は230GFlopsなので,2260個あればピーク性能は520TFlopsで,25TFlopsは約5%の実効性能しか出ていません。その意味では技術レベルは,まだまだ,という感じですが,やってみるという努力は買えます。

  中東ではサウジアラビアのKAUSTのBlueGeneが最も性能の高いスパコンですが,これはIBM製で,チップは米国製ですが,ヨルダンで設計,製造されたIMAN1は,中東初の自主開発スパコンと言えます。

  なお,IMANはアラビア語でfaith(アラーの教えに忠実という意味?)を意味するとのことです。

  

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