最近の話題 2013年4月20日
1.今年のIntelのサーバ製品ラインナップ
2013年4月10日のThe Registerが,北京のIDFでの今年のサーバチップの発表のプレビューを報じています。先週の話題で紹介したAvotonなど3種のAtomと13WのHaswellベースのXeon E3に加えて,Ivy Bridgeベースの8コアのXeon E5,10コアのXeon E7を出す予定になています。
Xeon E5は20MBのL3キャッシュを搭載し,PCIe3を80レーン搭載となっています。そしてTDPは60/80/95/115/130Wというラインナップです。そして,E7は30MBのL3キャッシュと144レーン搭載ですが,PCIeは2.0と書かれています。Xeon E7のTDPは130Wとなっています。なお,E5は2ソケットまで,E7は4ソケット以上の接続が可能になっています。
Xeon E7はInte Run Sure Technologyという新機能がサポートされると書かれています。名称から見て,高信頼度向けの機能と考えられますが,具体的にどのような機能なのかは分かりません。
2.IntelのHaswellはボルテージレギュレータを内蔵
2013年4月17日のPCWatchが,北京IDFで発表されたHaswellの省電力とオーバクロック機能に関する記事を載せています。この省電力の目玉が内蔵ボルテージレギュレータという記事になっています。
IOなどは規格で信号レベルが決まっており,その電圧を供給する必要があります。また,CPUへのGPUの統合,PCIなどのIOインタフェースの内蔵,DRAMインタフェースの内蔵などでCPUチップに供給する電源の種類が増えてきています。しかし,CPUチップのピン数や,チップパッケージ,プリント板の電源パターンなどの制約から,もう,電源の種類を増やすことが難しくなっています。
一方,動作状態に対応して, DVFSで最適の電源電圧,クロック動作させるのがアクティブ電力を下げる一番有効な方法であることから,マルチコアの各コアで最適の電源電圧に調整したいという要求があり,これに対応する本命が電圧レギュレータの内蔵という技術です。
と,いうことで,Haswellではコアごとに電圧が変えられる電源の内蔵を行うと見られていたのですが,IDFでの発表スライドでは,内蔵電源は5出力で,コア+LLC,リング,GPU,IO,System Agentとなっています。ということで,リングの動作スピードがコアに引っ張られることは無くなったようですが,コアごとに電圧が変えられるようにはなっていないようです。
この電源レギュレータはIntegrated VRと呼ばれ,CPUパッケージの外からは1.8Vだけ(とDRAMインタフェースは別電源)を供給する形になっているので,パッケージの中にあることは確かですが,CPUチップに何が搭載され,何がパッケージに載っているのかは分かっていません。
CPUチップにレギュレータのLCも集積する場合は,LCの値は小さくならざるを得ないので,スイッチング周波数をあげてカバーします。その結果,電源電圧の応答速度が速くなり,後藤さんが書かれているような省電力メリットが出るのですが,現在は基板に搭載しているレギュレータをある程度小型化したものをパッケージに載せているという程度なら,応答性の改善もそこそこということもあり得ます。ということで,もっと情報が出てこないと真相はわかりません。
確実なメリットとしては,パッケージに供給する電源の種類が減るので,基板の電源パターンの引き回しが楽になり,場合によっては基板の配線層数の減少によるコストダウン,軽量化という可能性があります。
3.ARMが64bitコアのPOPの提供開始を発表
2013年4月10日のThe Registerが,ARMの64bitコアのPOPの発表を報じています。ARMは,コアの論理設計であるRTLをライセンスし,メーカーは論理合成や物理設計を行って自分のSoCに組み込むというやり方が一般的でした。しかし,クロックが上がってきて物理設計が難しくなってきたので,物理設計まで行ったコアをライセンスするPOPという形態が増えてきています。この場合,そのまま,チップのどこかに配置して,電源や入出力を繋ぐということになり,コアの物理的な形などを変えることはできませんが,ARMが最適化しているので,クロックなどが高いというメリットがあります。
今回の発表は,TSMCの28nmプロセスに最適化したCortex-A58とCortex-A53のPOPの提供を開始したというものです。
そして,TSMCの16nm FinFETプロセスに最適化したPOPも,今年4Qに提供を開始する予定とのことです。
4.HPはAMDのKyotoベースのMoonshotカートリッジを検討中
2013年4月12日のThe Inquirerが,HPのHyperscale BusinessのGMのPaul Stanteler氏のインタビューを報じています。同氏は,Intelプロセサが汎用のサーバカートリッジの中心になると述べていますが,DSPを搭載したTIのKeystoneチップと強力なGPUを搭載するAMDのKyotoチップについて も言及しています。
KyotoはGPUを搭載してTDPが11Wというチップで,内蔵GPUを使うビデオエンコーディングやビデオ解析,3Dゲーミングなどには威力を発揮すると見ています。AMDもこのKyotoには期待をかけており,今年の後半にはMoonshot用のカートリッジの提供が可能とのことです。
なお,KyotoのTDPはCentertonやAvotonの6Wと比べると大きいのですが,Moonshot 1500シャシーは1200W電源を2基搭載しており,冷却も,これに合わせて設計されていると見られます。今回発表されたCentertonベースのカートリッジをフル実装しても800W程度とのことなので,Kyotoカートリッジを入れても,まだ,余裕はありそうです。
5.IBMがFlash関連の開発に$1Bを投資
2013年4月19日のEETimesが,需要が高まってきているビッグデータ処理に対応するため,IBMがFlashメモリを使った新しいソリューションの研究開発,設計,インテグレーションに$1Bを投資すると報じています。
同社は,昨年買収したTexas Memory社の技術を使う全てFlashメモリを使うストレージを販売しており,今回の投資はこれに続くものです。Flashを使う新しいソリューションを開発し,同社のサーバ,ストレージ,ミドルウェアに組み込むことでビッグデータを効率的に処理できるソリューションを提供しようという戦略です。
そして,今年末までに,米国,英国,中国,フランス,ドイツ,インド,日本,シンガポール,南米に開発センターをオープンするとのことです。
6.米国商務省がT-Platformsをブラックリストに登録
2013年4月3日のRusBaseが,米国の商務省が“list of organisations and individuals acting contrary to the national security or foreign policy interests of the United States”,通称,ブラックリストにロシアのT-Platforms社を登録したと報じています。
T-Platformsはロシアのスパコンメーカーで,昨年11月のTop500で26位となったモスクワ州立大のLomonosovのメーカーです。LomonosovはCPUとしてXeonを使い,NVIDIAのTelsa 2070とIBMのPowerXCell 8iを使い,ピーク演算性能は170TFlopsというロシア第1のスパコンです。また,昨年10月には,DELLやHPを抑えてニューヨーク州立大のスパコンを受注しています。
Lomonosovに見られるように,プロセサやアクセラレータは米国製で,米国商務省は,T-Platformsがモスクワ州立大のような研究教育機関だけでなく,軍事用にもスパコンを供給している。また,ニューヨーク州立大など,国外に再輸出するのに必要なライセンスを取得していないという理由で,ブラックリストに登録したとのことです。
ブラックリストに載ると,米国製のCPUやアクセラレータを買えないだけでなく,米国のテクノロジを使って第3国で製造された部品も禁輸の対象となり,事実上,T-Platformsは製品を作れなくなってしまいます。
まあ,ロシア国内だけでやっていれば,我慢できたのでしょうが,ニューヨーク州立大の商談で負けたDELLやHPとしてはT-Platformsの米国進出は許せないところでしょう。
しかし,この伝で行けば,中国の国防科技大のTianheも引っかかりそうですが,国防科技大は軍事には利用していないのでしょうかね。