最近の話題 2013年5月25日

1.BroadcomのCTOが15年でMooreの法則は止まると発言

  2013年5月23日のEETimesが,Ethernet 40周年の会議のパネルディスカッションで,BroadcomのCTOのHenry Samueli氏が,今後,15年でMooreの法則は止まる。その後,どうするか準備を行わなければならないと発言したと報じています。Samueli氏はBroadcomの創立者の一人で,その前は,UCLAで通信チップを研究していた教授で,業界内でも技術に詳しいExecutiveです。

  Samueli氏は,通常のCMOSテクノロジは5nmくらいで打ち止めで,その後は改善のない高原状態となる。従って,Tera bit級の通信が実現されるのは確実であるが,Peta bit級の通信が実現できる道のりは分からないと述べています。

  Mooreの法則が止まると,2年でネットワークバンド幅が倍増するという改善も止まる。その時代にどうするかを考えて準備しておかなければならないとのことです。

  また,20nm世代以降は2重露光や3重露光が必須となり,チップコストが高くなる。3D実装は効果があるが,コストは高くなる。Broadcomはハイエンドのスイッチチップに光インタフェースのチップを3D実装することを考えているが,その時期は2015年かそれ以降になると述べています。また,3Dの効果はOne Timeと指摘しています。

  一方,Intel出身で,Brocadeの会長のDave House氏は,Moore氏はIntel社内のStrategy Meetingで,いつも10年後に微細化は止まると言っていたが,常に新しい技術が開発されて乗り越えてきた。10年後にどのような技術が出てくるか予想できない。微細化は5nmで止まるかも知れないが,止まらないかも知れないと述べています。

2.Intelの新CEOとなったKrzanich氏がアーキテクチャグループを直接指揮

  2013年5月21日のThe Registerが,5月16日にIntelの新CEOとなったBrian Krzanich氏 の機構改革について報じています。これまで,アーキテクチャグループの責任者のDadi Perlmutter氏にレポートしていたPC client group,mobile communications groupとdata center unitをKrzanich氏に直接レポートする体制に変更するとのことです。

  Perlmutter氏の次の仕事については,まだ,決まっていないようです。また,mobile communicatios共同責任者であったMike Bell氏もNew Devicesというスマホなどの先のデバイスを模索する部門の責任者に異動するとのことです。

  新製品開発の鍵となる旧アーキテクチャグループの3部門を,自身で直接指揮をするという体制で,Krzanich氏は大きな方針変更を考えているようです。

3.AMDがAPU 3品種を発表

  2013年5月23日のEE Timesが,AMDのTemash,Kabini,Richlandの3種のAPUの発表を報じています。

  TemashはElite Mobility APUという名称になり,Jaguarコアを使いクロックは1GHzで,A4モデルは2コア,A6モデルは4コアを搭載し,HD 8000シリーズの128シェーダコアのGPUを搭載しています。TDPは3.9W〜9Wで,13インチ以下のスクリーンを持つPCやタブレット向けとなっています。前世代の製品と比較して,CPUの性能/Wは最大172%向上し,グラフィック性能は最大212%向上とのことです。

  KabiniはMainstream APUという名前になり,Jaguarコアを使い,AシリーズのA6モデルは2GHzクロック,A4モデルは1.5GHzクロックの4コア,Eシリーズは1.0GHz〜1.65GHzクロックの2コアとなっています。グラフィックスは128シェーダコアのHD 8000シリーズを使い,TDPはAシリーズは15Wと25W,Eシリーズは9W〜15Wで,バッテリで1日動作できるとしています。前世代の製品と比較して,CPUの性能/Wは最大127%向上し,グラフィック性能は最大132%向上とのことです。

  最上位のRichlandはElite Performance APUという名称になり,A8とA10というAPUのトップエンドの製品となります。グラフィック性能は20%〜40%向上し,競合品種と比べてゲーム性能は39〜72%高いと述べられています。2013年5月22日のSemiacurateによると,最上位のA10-5757Mはクロックが2.5GHz/3.5GHzで4コア,GPUは384シェーダコアで600/720MHzクロックで,TDPは35Wとなっています。今回発表されたのは7品種でULVのA8-5245MとA4-5145Mは2コアでシェーダコアも192と128ですが,TDPは17Wとなっています。

  5月24日のPCWatchに後藤さんが詳しい記事を書いておられるので,興味のある方はそちらを参照してください。

4.MicrosoftのXbox One

  2013年5月22日のSemiAccurateが,MicrosoftのXbox Oneの発表に関する記事を載せています。

  SemiAccurateの記事のタイトルは,Microsoftはコンソール戦争で(PS4に対して)負けを認めたという刺激的なものですが,その理由はSemiAccuateの記事を読んでいただくとして,ここではXbox Oneのハードに関する情報を紹介します。

  SemiAccurateによると,Xbox OneのSoCはAMDのJaguar 8コアと768シェーダーコアのGPU,そして32MBのSRAMを搭載し,全体では5Bトランジスタという巨大チップとのことです。

  PS4については2月23日の話題で紹介していますが,こちらもJaguar 8コアに1.84TFlopsのGPUを搭載するとのことで,Xbox OneもCPUは全く同じ,GPUはクロックが不明なので,正確には比べられませんが,それほど違わない性能と思われます。

  大きな違いは,PS4のSoCが8GBのGDDR5メモリをメインメモリとして使っているのに対して,Xbox OneのSoCはAMDの標準のAPUと同様にCPUとGPUがDDR3のメインメモリを共有するという 構造になっています。ただし,これだけではGPUが必要とするメモリバンド幅を満たせないので,GPUに対してはオンチップの32MBのSRAMをつけています。

  Microsoftは200GB/sのメモリバンド幅と言ってますが,メインメモリはDDR3 2チャネルで34GB/s程度で,〜166GB/sは32MBのSRAMのバンド幅です。つまり,GPUが高いバンド幅でアクセスできるのは32MBという限定されたメモリだけです。そして,32GBのSRAMのデータをメインメモリに移すにはDMAエンジンを使って転送する必要があります。また,CPUとGPUとの連携はDDR3メモリ上のデータなら両方がアクセスできますが,CPUは高速の32MBメモリにCPUはアクセスできないとなると,こちらを使った連携はできません。しかし,AMDの標準のAPUではCPUからGPUのフレームバッファをアクセスするFusion Control Linkがあり,Xbox OneのSoCでもCPUから32MBのSRAMをアクセスできるという機能を持っている可能性も排除できません。

  PS4ではGPU側でPhysXなどの物理シミュレーションを動かす予定ですが,Xbox Oneではそういう話はなく,NVIDIAはXbox One用にCPUで動かすPhysXを発表したとのことです。

  GDDR5を使い,全メモリが174GB/sでアクセスできるのと,オンチップの32MBのメモリは同程度のバンド幅があるのですが,メインメモリは34GB/sしかバンド幅が無いというのは大きな違いで,これがSemicAccurateが,Xbox OneはPS4に負けたという一つの理由です。

  また,PS4はCPUとGPUが連携して,GPUを汎用処理にも使えるように考えられているのに対して,Xbox OneではGPUは描画中心の構成になっている。更に,Xbox Oneは,その寿命の間に来るTVの4K化の対策をどうするのかが示されていないなどをハードとして負けている点に数えています。

  なお,負けを認めたとSemiAccurateが書く一番の理由は,5月21日の発表で,MicrosoftはPS4などの先行するプラットフォームとの比較には全く言及せず,PS4に対するアドバンテージを訴えなかったのは,Microsoftが内心,負けを認めているという解釈です。

@1128209

 

 

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