最近の話題 2013年6月8日

1.IntelがHaswellベースの第4世代Coreプロセッサを製品発表

  2013年6月3日にIntelは,台北で開催中のComputexにおいて,第4世代のIntel Coreプロセサを発表しました。強調するポイントは省電力で,Ivy Bridgeに比べて消費電力を半減し,ノートPCで9時間の電池寿命,アイドルであれば10〜13日の電池寿命が売りです。そして,Intellが2-in-1と呼ぶ,PCとタブレットのコンバーチブルを前面に出したプレゼンテーションを行いまいした。

  Core i7は4種で,全て4コア/8スレッドでGPUはIris Pro Graphics 5200となっています。クロックは2.3GHz〜3.2GHzでターボ時には3.5〜3.9GHzまで上げられます。TDPは最高速の製品が65Wで,それ以外は47Wとなっています。

  Core i5は4570Rが4コア/4スレッドでクロックが2.7/3.2GHzでIris Pro Grahics 5200搭載,4670Rはクロックが3.0/3.7GHzでその他は同じで,両者ともTDPは65Wとなっています。2コア/4スレッドの4250Uと4350UはグラフィックスがHD 5000でクロックが1.3/2.6GHzと1.4/2.9GHzで,TDPは15Wとなっています。

  Core i3は2コア/4スレッドで,クロックは1.7と1.8GHzでターボ無し,グラフィックスはHD4400,TDPは15Wの製品,そしてクロックを1.3GHzに落とし,グラフィックスもHD4200とした4010Yがあります。この4010YはTDPが未発表です。さらに,Iris Graphics 5100を搭載し,クロックが2GHzでTDPが28Wの4158Uがあります。

  Haswellについては,技術的にはこれまでも色々と紹介してきていますが,ついにダイ写真が公開されました。2013年6月4日のThe Registerに4コアチップのダイ写真が載っていますが,チップ面積は177mm2とのことです。

  製品としては4コアのデスクトップ,サーバ用と2コアのPC,タブレット用があり,また,グラフィックスは10コアのGT1,20コアのGT2,40コアのGT3があります。これらが全て異なるダイなのか,それとも幾つかは共通のダイを使い,一部を不使用にして対応しているのかは明らかではありません。

  そして,低電力の製品では,Haswellダイと,PCHを同一パッケージに入れてプリント板面積を削減したタイプとなっており,高電力の製品では,前世代の製品と同様に,PCHは別パッケージとなっています。

  また,HaswellではFully Integrated Voltage Regulatorというテクノロジが使われており,1.8Vの入力から6系統の電圧の電源を作っています。これに関して,2013年6月4日のEE Timesが発表スライドの写真を載せています。写真を見る限り,中央にあるのがHaswellで右隣にVRチップが搭載されています。VRチップは12.977mm×8.144mmと書かれています。そして,チップ上には20個のPOWER CELLが載っています。POWER CELLは並列運転ができると書かれているので,電力の大きい系統では複数のセルを使っていると思われます。

  写真には個別部品のインダクタは見えないので,VRチップに集積されていると見られます。スイッチ速度はSemiAccurateによれば125MHzとのことで,普通のVRは高くても10MHzくらいですから,かなり高速のスイッチ周波数です。もっとも,そうでないと必要なインダクタンスが大きくて,チップには集積できません。スイッチ周波数が高いと,電源の電圧変更やオンオフが高速にできるというメリットがあります。 一方,インダクタやスイッチングトランジスタの高周波損失を減らす必要があります。

  このEE TimesのHaswellチップは,SemiAccurateの写真と比較するとずんぐりしており,VRチップとの比率では135mm2程度の面積です。したがって,2コア,あるいはグラフィックスプロセサがGT1とかGT2になっている可能性があります。

  一方,SemiAccurateのPCHを同一パッケージに入れた製品の写真ではパッケージ基板にはHaswellとPCHチップしか見えず,FIVRチップは見えません。裏側についているのでしょうか?しかし,2013年6月1日のThe Inquirerのi7の写真ではパッケージの下の面にはキャパシタしか見えません。

  また,Iris Pro Graphics 5200と呼ぶGT3e GPUを持つモデルは128MBのeDRAMのキャッシュチップを搭載しています。SemiAccurateによると,高速シリアル伝送パスでHaswellとつながり,バンド幅は50GB/s+×2方向と書かれています。しかし,このeDRAMチップが搭載されたパッケージの写真は 公開されていないようで,どのようになっているのかは不明です。

  2013年6月1日のSemiAccurateが ,発表された4コア/8スレッド製品の一覧を載せています。それによると,Core i7の4700番台の4コアの製品は6種で,クロックが2.0〜3.5GHz,ターボ時は3.0〜3.9GHzで,TDPは35W〜84Wとなっています。Core i7-4770RだけがIris Pro Graphics 5200ですが,このチップだけ価格が発表されていません。

  Core i5-4600番台は4種で,4コア/4スレッドでクロックは2.3〜3.4GHz,ターボ時は3.3〜3.8GHzで,TDPは45〜84Wとなっています。Graphicsは全て4600です。

2.IntelがHaswellベースのシングルソケットXeon E3-1200 v3を発表

  2013年月4日のThe RegisterがIntelのHaswellベースのXeon E3-1200 v3チップの発表を報じています。発表されたのは標準電圧版が10種,低電圧版が3種で計13品種です。E3-1220LV3が2コア/4スレッド,E3-1225V3とE3-1220Vが4コア/4スレッドである以外は4コア/8スレッドとなっています。そして,5品種はGT2グラフィックスがつき,1品種はGT1,残りの品種はグラフィックス無しです。これらも何種類のダイがあるのかは不明です。

  コアクロックは標準電圧版は3.1/3.3GHz〜3.6/3.8GHzでTDPは65W〜84Wとなっています。低電圧版は1.1/1.3GHzのE3-1220LV3が13W,1.8/2.5GHzのE3-1230LV3が25W,2.5/3.1GHzのE3-1265LV3が45Wとなっています。

  グラフィックスはベースクロックは350MHzでターボ時は品種によって1.2〜1.3GHzまで引き上げが可能です。前世代と比べると,GPUはコア数も増えて性能が上がっており,リアルタイムのビデオのトランスコードを行うサーバなどに使いたいという向きがあるとのことです。

  クロックは1.1GHzですがTDPが13WのE3-1220LV3はマイクロサーバ市場を狙っています。

  HaswellはAVX2をサポートし,ピークの倍精度浮動小数点演算性能が前世代の2倍に上がっていますが,シングルソケットのE3-1200 v3はHPC向けではないとのことです。まあ,現在もHPCは2ソケットを使うケースが多いので,2ソケットのE5で対応するのでしょうね。

3.ARMが Cortex A12を発表

  2013年6月3日のThe InquirerがARMのCortex A12の発表を報じています。また,2013年6月4日のPCWatchに後藤さんが詳しい記事を書いておられます。

  Cortex A12は,32bitのARMv7アーキテクチャのプロセサで,現在のハイエンドのCortex A15の弟分になります。ハイエンドのCortex A15が3命令並列デコードであるのに対して,Cortex A12は2命令デコードで,同一クロックでは性能的には2/3程度ではないかと思われます。しかし,Coretex A15のパイプラインは15段に対して,A12は11段とのことで,その分,クロックは低いと考えられ,全体的には半分強の性能ではないでしょうか。

  Cortex A15は高性能な分,アイドル状態での消費電力も大きく,小さなコアのCortex A7をペアにするbig.LITTLEで低負荷時の消費電力を下げています。Cortex A7は面積的にはA15の1/6程度で負担はそれほど大きくないのですが,それでもbig.LITTLEは余計なA7を必要としますし,コアの切り替えのオーバヘッドもあります。

  一方,Cortex A12は,性能はCortex A15に及ばないものの,チップ面積は小さく,それだけアイドル時の消費電力も減ります。ということで,A15ほどの性能を必要としないスマホやタブレットには最適のコアで,メインストリームのスマホに採用されていくと見られます。

4.AMDがデスクトップ向けのRichland APUを発表

 2013年6月5日のThe InquirerがAMDのデスクトップ向けRichland APUの発表を報じています。ハイエンドのA10-6800KはAMDのハイエンドコアであるPiledriver4コアと384コアのRadeon HD8000 GPUを集積しており,CPUクロックは4.1/4.4GHzと,GPUクロックは844MHzとのことです。そして,TDPは100Wです。

  A10-6700は,構成は6800Kと同じですが,CPUクロックが3.9/4.2GHzとなり,TDPは65Wと手ごろな値です。

  Radeon HD8000はAMDの最新のGraphics Core Nextアーキテクチャではなく,1世代前のGPUで,GCNを使うのは,今年末までに発表されると見られるKaveriからとなります。

 

 

 

 

  

  

  

 

  

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