最近の話題 2013年6月15日

1.中国のTianhe-2(続報)

  6月16日から20日にかけてドイツのライプニッツで開催されるISC13に合わせて発表されるTop500で,中国のTianhe-2スパコンが1位になりそうという話題は,6月1日の話題で紹介していますが,2013年6月10日のThe Registerが写真も入れた記事を掲載しています。

  それによると,CPUはIntelが未発表のXeon E5-2692で,12コアで2.2GHzクロックのIvy Bridge EPとのことです。水平に置かれた大型のボードに2計算ノードが搭載されており,このボードの左側にXoen E5 4個とXeon Phi 1台が搭載され,右側にXeon Phi 5台が搭載されており,保守を容易にするため,左右は分離して引き出せるとのことです。また,計算ノードのメモリは64GBとなっています。

  使用されているXeon Phiは31S1Pという組み込み用のモデルで,57コアで倍精度のピーク演算性能は1.003TFlopsとなっています。3000シリーズの製品ですが,搭載するGDDRメモリは5000シリーズと同じ8GBとなっています。

  結果として,Xone E5は38400コアで,合計のピークFlopsは6.76PFlops,合計のメモリ容量は約1PBとなります。これにXeon Phi S31S1Pが41.84PFlops,GDDRメモリが384TBです。そして,合計のFlopsha54.9PFlopsとなります。

  ノード間をつなぐインタコネクトは自主開発のArchで,接続トポロジはFat-Treeです。13台の576ポートスイッチをスパインスイッチとして筐体ごとにリーフスイッチがあるような感じのスライドが掲載されています。12000ノードにMPIでBroadcastを行った場合,伝送速度は6.36GB/sで,レーテンシは9usとのことです。

  16000ノードを125台のラックに収容し,,これにArchのスパインスイッチの13ラック,合計12.4PBのファイルが24ラックで,全体では162ラックとなります。しかし,写真でみると標準の19インチラックではなく,かなり太めのラックのようです。

  そして,低温の水で冷やす方式です。Xeon Phiは空冷なので,水冷のヒートシンクを直接チップにつける方式ではなく,バックドア水冷のような方式と考えられます。システム全体の消費電力は17.4MWですが,冷却システムの能力は24MW分あるとのことです。

  14,336ノードを使った測定で,LINPACK 30.65PFlopsを出したとのことで,Top 500の1位となるのは間違いないところでしょう。

  それから,フロントエンドには自主開発のGalaxy FT-1500と呼ぶSPARCプロセサを使っています。40nmプロセスで作られ,16コアを搭載し1.8GHzのクロックで動作して,消費電力は65Wとのことです。フロントエンドは,このSPARCプロセサを4096個使っているそうです。

2.ORNLのTitanが受け入れ試験をパス

  2013年6月12日のHPCWireが,オークリッジ国立研究所 の,Titanの受け入れ試験が完了したという発表を報じています。昨年11月のTop500ではTitan,Sequoia,京の順で,Sequoiaは核のカーテンの向こうにいってしまって 平和利用はできません,このため,正式に運用を行っており,平和利用ができるスパコンとしては,これまで,京が一番高性能だったのですが,これでTitanが1位,京は2位ということになりました。

  Titanの17.59PFlopsというLINPACK値はGPUのメモリだけを使った測定で,CPU側のメモリを使ってより大きな問題を解けば,多少は性能が上がるはずですが,所詮,Tianhe-2を抜けるわけではないので,LINPACKの再測定は行わないとのことです。

3.AMDが5GHzクロックのCPUの出荷について発表

  2013年6月11日のEE Timesが,AMDが5GHzクロックのゲーマー向けCPUを発売し,この夏にも搭載したシステムが出てくると報じています。

  Piledriver 8コアを搭載するチップで,FX-9590はベースクロックが5GHz,FX-9370は4.7GHzです。どちらもゲーマー向けでロックはされておらず,オーバークロックが可能です。

  まあ,選別で高いクロックで動くチップを抜き出し,電源電圧も多少ブーストするというような方法を使っているのでしょうか?しかし,PC向けの製品でクロックが5GHzを超えたのは初めてです。

  先日,Haswellが発表されましたが,最高クロックの製品は3.9GHzで,ゲーマー向けのExtreme Editionの製品は出ていません。AMDのこれらのプロセサは,このIntelの製品ラインの穴を狙ったものです。

  なお,これらのCPUのお値段や消費電力は公表されていません。

4.DARPAのRobotics Challenge

  2013年6月12日のEE Timesが,DARPAのRobotics Challengeについて報じています。自律的に動いて災害現場で被災者を探して助けるSearch and Rescueロボットを開発するというのが目的で,福島第一原発の事故を受けて,必要性の優先度を上げ,今回のチャレンジのテーマに選ばれたとのことです。

  18チームが参加する第1の関門がVirtual Robotics Challengeで,7月17日から27日にかけて実施される予定です。このチャレンジはOpen Source Robotics Foundationが作成する仮想環境で,それぞれのチームのロボットがどう振舞うかをシミュレーションで示すという方法で行われます。

  そして,上位11チームが,今年12月に予定された第2ラウンドに進みます。第2ラウンドはロボットの実機を作り,実際に瓦礫が重なる災害現場を再現した環境で行われます。

  この第2ラウンドを通過した8チームが2014年12月に行われるファイナルに出場できます。このファイナルの優勝賞金は$2Mです。

  ロボットの開発にはお金がかかるので,提案レベルで選別したカテゴリAの7チームには$1.8M,その他の11チームには$375Kが支給されます。そして,$1.8Mをもらった7チームのうち,5チームが第2ラウンドに進み,追加の$1.2M,$375Kをもらった11チームのうちの6チームが第2ラウンドに進み,追加の$750Kの開発費が支給されます。そして,第2ラウンドを通過してファイナルに進む8チームには,更に$1Mの開発費が支給されます。

  出場チームは,大部分が米国の大学や研究機関,あるいは企業ですが,日本の東大発のベンチャーのSChaft Inc.がRaytheonと組んでカテゴリAに選ばれています。

inserted by FC2 system