最近の話題 2013年7月13日
1.20nm以降はムーアの法則は意味がなくなるか?
2013年7月9日のPC Watchに後藤さんが,「20nmプロセスから先はムーアの法則の意味がなくなる?」と題する記事を載せておられます。
ムーアの法則は,厳密にいうと,「毎年,1つのチップに集積できる部品数は倍増する」というもので,その後,毎年を2年毎にと修正しました。しかし,ムーアさんはトランジスタ単価やトランジスタの性能については何も言っていません。従って,トランジスタ密度に逆比例してトランジスタコストが下がらないのはムーアさんの責任ではありません。
また,1チップのトランジスタ数というだけで言えば,まだ,10年か15年くらいは微細化を継続できるという見方が多く,ムーアの法則は続くとみられています。
微細化の効果は,たくさんのトランジスタが使えることで,それでLSIの機能や性能を上げて来ましたが,これは,微細化が続く限り可能です。
問題はコストです。
露光機などの精密機器は,プロセスノードの寸法に逆比例という感じでコストが上がっています。寸法が半分になれば4倍のトランジスタ密度になるので,機器が2倍になっても,まだ,意味があります。しかし,一番微細な層では液浸のArF露光機でも2重露光や3重露光が必要となり,同じスループットを確保しようとすると,露光回数の比例して,露光機の台数を増やす必要がでてきます。露光機は1台50億円くらいするので,コストがあがります。
後藤さんの記事は,20nm以降は,微細化はできても,ウェファ1枚のコストがあがるので,トランジスタの単価は下がらず,微細化のメリットがないというものです。このため,ハイエンドは微細化が続くが,バリューの分野では28nmプロセスが長く使われるといいます。
28nmプロセスが長く使われれば,半導体製造装置の減価償却期間は長くなます。また,累積生産量が10倍になれば,コスト半減の法則から,製造コストも下がり,ゆるやかながら,コストダウンは続きます。
しかし,微細化した14nmプロセスの製品は,トランジスタ単価は同じでも,消費電力が少ない,クロックが上げられるなどのメリットがあり,バリューの分野でも競争力のある製品が作れると思われ,バリュー製品が長く28nmに留まるとはいえないと思います。
ただし,微細化して同じトランジスタ数ということはチップが小さくなり,ウエファ1枚のチップ数が多くなります。そしてウエファの単価は上がり,試作開発費もウエファ単価に比例して上がります。要するに,大量に売れる製品でないと先端のプロセスにスケールするだけの投資を正当化することができなくなります。
そうすると,量の少ないチップは,28nmプロセスに留まらざるを得ないということになります。
450mmウエファは1枚のウエファに入るチップ数は2.2倍になりますが,露光機やイオン注入など,高い装置を使う工程は面積に比例して処理時間が掛かるので,面積比例というほどにはコストは下がりません。トランジスタ単価はある程度下がるものの,ウエファの値段や開発費は高くなります。そうなると,よほど,大量に生産するチップでないと450mmウエファは使えません。
技術的には10年〜15年は微細化の継続は可能としても微細化に伴って急激に難しさが増加するフェーズに差し掛かっており,ウエファ単価の高騰で,業界の平均値としては微細化はスローダウンするというのは避けられないと思われます。
2.Q2のPCシェアはLenovoがHPを抜いて1位に
2013年7月11日のEE Timesが,2013年Q2のPCの出荷でLenovoがHPを抜いて1位になったというIDCの調査結果を報じています。
それによると,Lenovoは12.619M台,HPは12.378M台で,わずかながらHPを超えて1位になったとんことです。なお,3位はDELLで9.230M台,4位はACERで6.226M台,5位はASUSで4.59M台となっています。
総出荷量は,75.632M台で昨年同期の85.374M台から11.4%の減少ですが,Lenovoは1.4%減と大手の中では最小の減少幅に留めて7.7%減のHPと順位を逆転しました。
PCの出荷は,ピーク時には1日約100万台で覚え易かったのですが,数字が半端になって思い出しにくくなってきました。
3.マイクロソフトが大規模な機構改革を発表
2013年7月11日のThe Vergeがマイクロソフトの機構改革の発表を報じています。
従来,製品別で,場合によっては社内で競争することもあった組織を,鍵となるデバイスとサービスを部門の壁を越えて支えるOne Microsoft,On Strategyの組織にするとのことです。
そして,Terry Meyerson氏が新しいOS部門を率い,この部門は,ゲームコンソールから,モバイルデバイス,PCのOSを横断的に開発します。Julie Larson-Green女史がDeviceとStudio部門を率い,SurfaceやXboxなど社外に発注しているハードウェア開発にも責任を持つとのことです。そして,Qi Lu氏がアプリケーションとサービスの開発部門を率い,これらとサーチ製品の開発を担当することになります。
エンタプライズ部門では,Satya Nadella氏がデータセンターやデータベース,その他のIT関係の開発を担当し,ツールの開発やデータセンターの建設,運営も担当することになります。