最近の話題 2013年8月10日

1.富士通がキャノンからFX10を受注

  2013年8月6日に富士通は,キャノンから96ノードのFX10スパコンを受注したと発表しました。

  96ノードということは,1筐体フル実装で,ピーク演算性能は20.2TFlopsとなります。また,富士通のストレージであるETERNUSを使うFEFSがつきます。

  このシステムは各種解析に使用する計画で,非線形動的構造解析を行うLS-DYNAも富士通からの提供になるとのことです。

  FX10の受注発表は,昨年6月の台湾中央気象局,8月の東大物性研からの384ノード,名古屋大の384ノードの受注に続くもので,9システム目となり,目標まで残り41システムです。合計の受注ノード数は11436ノード(ただし,台湾中央気象局のノード数を東大のOakleaf-FXと同じと想定)となります。

2.Media Tekが8スマホ用8コアチップをプッシュ

  2013年8月5日のEE Timesが,台湾のMedia Tekがスマホ用の8コアチップの宣伝を始めたと報じています。

  SamsungのGalxy 4Sに使われているExynos 5 Octaは,ARMのbig.LITTLEを使うCortex-A15とCortex-7の大小コアのペアが4組搭載する8コアチップですが,現在のARMの使い方では,各ペアは,負荷に応じてA15を使うかA7を使うかが切り替わり,同時に使われるのは最大4コアとなっています。

  これに対して,Media Tekは同社のMT6599チップは,搭載している8個のコア全部を同時に動作させられる,真の8コアチップであると宣伝しています。

  EE Timesは,Gizchinaの報道を引いて,近く発表されるMT6592は,2GHzクロックのCortex-A7コアを8個搭載していると書いています。MT6599チップの詳細は発表されていないのですが,big.LITTLEではなく,A7 8コアならかなり小さくなります。しかし,8コア全部動かしても,A15 4コアに比べると,性能的にはかなり見劣りしそうです。

3.Samsungが業界初の3次元NANDフラッシュの量産を開始

  2013年8月6日のTechOn!が,Samsungの128Mbitの3次元NAND Flash Memoryの量産を報じています。窒化膜に電荷をトラップする方式のセルを最大24層,垂直方向に集積する構造とのことですが,この128Gbitチップが何層であるのか,セルは何ビットを記憶するのかなどは発表されていません。

  何層も積んでいるのに,現行の20nm世代のFlashの2倍の密度とのことですから,プレナー型のセルに比べてサイズが大きいと考えられますが,プロセスの最小寸法も発表されていません。しかし,10nm世代のプロセスを使うフローティングゲートのプレナーのNANDと比べると,動作信頼度を2〜5倍,書き込み速度が2倍に改善できるとのことです。

  独自のエッチング技術で,一括して孔明けを行い製造コストを削減していると書かれています。最小寸法が大きいと安い露光機が使えるとかも考えれますが,それでも最大24層分も露光するのはコストがかなりかかりそうです。量産ということはbit単価が同程度にならないとダメですが,どうやって製造コストを抑えているのでしょうか?

4.Symetrix社が近く,フィラメント型でないReRAMを発表か

  2013年8月9日のEE Timesが,コロラド大のAraujo教授が,同教授の設立したSymetrix社が,近く,フィラメント型でないReRAMを発表することを明らかにしたと報じています。

  これまでに発表されているReRAMは絶縁物である金属酸化物の層の中に,金属フィラメントの形成,破壊で抵抗値を変えるフィラメント型が大部分ですが,細いフィラメントの挙動を理解し,制御することが難しく,商品化されたReRAMは殆ど無いという状況です。

  これに対してArujo教授が研究しているのは,NiO(ニッケルオキサイド)のダイオードの抵抗を変えるというもので,電子相関(Electron Correlation)でNiOを導体と絶縁体に切り替えるとのことです。この変化は,NiOの結晶構造全体で起こるとのことで,フィラメントではなく,安定した現象だということです。同教授は,このメモリをCeRAM(Correlated Electorn RAM)と読んでいます。

  Symetrix社,は2ヶ月以内にこのテクノロジを発表する予定とのことです。Symetrixは創立してから27年で,200以上の特許を持ち,ライセンスするというビジネスを行っており,十分な開発資金があるとのことですが,このCeRAMについては,基本技術のライセンスだけではなく,投資を集めて開発を加速する可能性もあるとのことです。

  ということで,実用化はまだまだ先のようですが,フィラメントのように微小な部分だけに依存しないテクノロジは期待が持てます。

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