最近の話題 2013年8月17日

1.ARMがニアスレッショルド プロセサを開発中

  2013年8月15日のEE TimesがARMが,Internet of Things用のプロセサとして,Near Threashold動作のコアを開発中と報じています。電源電圧を下げていくと,動作できるクロック周波数は下がりますが,消費電力は,それより下がるので,エネルギー効率は改善します。そして,トランジスタがギリギリでオンになるスレッショルド電圧よりも少し高い程度の電源電圧で効率は最大になります。

  Intelも研究を行っており,2012年のISSCCでClairmontという実験チップを発表しています。このx86チップは0.3V電源で3MHzクロックで動作し,3mWの消費電力と発表されています。

  今回,ARMのMike Muller CTOにインタビューして,超低電力コアの開発について聞いた記事となっています。

  エネルギーハーベストで外界からのエネルギーをため,ある程度,溜まったら,それでチョコッと動いてパケットを送るというようなどこかけなげな動作を考えており,このような超低電力の場合,設計のトレードオフが異なるとのことです。

  スレッショルド以下の電圧で動かすサブスレッショルド動作の方が,エネルギーは減らせるのですが,この領域では回路解析のSpiceモデルもないし,ファウンドリもトランジスタの特性を保証できないので,実用化には大きな障害があります。これにたいして,ニアスレッショルドは,まだ,やりやすいとのことです。

  ニアスレッショルドでも,クロックは20kHzとか非常に低いので,パワーゲートやクロックゲートのやり方も変わってくる。1サイクルの途中でパワーゲートを行うということも可能になります。パワーゲートして電源が下がりFFがデータを失う前に,再び電源を入れるDrowsy Logicなど高速のクロックの場合では考えられない手法が使え,色々な新しいテクニックを開発したと述べています。

  ただし,商品化については市場次第とのことで,実用化の時期は明確にされませんでした。

2.プロセサ市場ではモバイル用が伸長の見込み

  2013年8月13日のEE TimesがIC Insightsのプロセサ市場の調査結果を報じています。それによると,2013年のプロセサの市場規模は約2.15B個で,その内,タブレット用プロセサが190M個で,62%の伸び,携帯用プロセサは1.5B個で11%の伸びと見ています。

  金額的には,$41.4Bで,昨年より1%低下しています。その中では,PC,サーバ,メインフレーム市場が全体の56%と予想していますが,これは年初の58%から2%予想を引き下げており,その分,タブレットや携帯用が伸びています。改定された予想では,金額では,携帯用が26%,タブレット用が6%,組み込み用が11%,その他が1%となっています。

3.Oak Ridge国立研究所のSpiderがアップグレード

  2013年8月16日のHPC Wireが,Oak Ridge National LaboratoryのTitanなどのスパコンのSpiderストレージシステムがアップグレードされ,Spider Uとなると報じています。

  LusterソフトをLuster2.4にアップグレードしてスケーラビリティーを改善し,ファイル容量を10PBから32PBに増加させ,バンド幅も240GB/sから1P1TB/sに増強します。

4.Intelが富士通のワイヤレス部門子会社を買収

  2013年8月13日のEE Timesが,Intelが富士通セミコンダクタのワイヤレス部門の子会社を買収すると報じています。このFujitsu Semiconductor Wireless Products Inc.は,元々は無線の名門であったMotorolaの一部で,それが半導体の分離でFree Scaleに移り,更に,富士通に買収されたもので,アリゾナ州のフェニックスの近郊の市にあります。

  このグループはLTEの電波から,アプリケーションプロセサに繋ぐ,RFとLTE通信機能の部分を開発しており,Intelは,この買収でLTE機能をAtomベースの携帯用SoCに組み込むなどの展開を考えていると思われます。

5.MellanoxがKoturaを買収

  2013年8月16日のHPC Wireが,InfiniBandでは一人勝ちのイスラエルのMellanox社が米国のKoturaを$82Mで買収したと報じています。Koturaは非上場で,シリコンフォトニクスを開発している会社です。

  MellanoxとしてはInfiniBandや高速Ethernetチップに,光インタフェースを集積して競争力を強化しようということと思われます。

  なお,KoturaはMellanox初の米国でのR&D拠点となるとのことです。

6.NVIDIAの2Q決算,全社はまあまあ,Tegraは不調

  NVIDIAが発表した2013年2Qの業績は,売り上げが$977.2Mで前期からは2.4%増ですが,前年同期比では6.4%減となっています。しかし,大方のアナリストの予想を超える一株あたりの利益は$0.16で,まあまあという業績です。

  しかし,NVIDIAの天敵であるSemi Accurateの2013年8月16日の記事によると,期待のTegraの売り上げは$52.6Mしかなく,これは前期から49%ダウンで,前年同期比では70.6%という大幅な落ち込みになっています。

  
  Tegra3はNexus 7に採用されたのですが,新モデルはTegra 4ではなく,QualcommのSnapdragonに取られてしまいましたし,期待したMicrosoftのTegra 3を使うSurface RTは,全くの不振です。Tegra 4も大手が採用というニュースはなく,Tegra 4を使うNVIDIAのゲームマシンShieldも7月31日から出荷開始で,まだ,売り上げには貢献していません。

  LTEモデム内蔵のTegra 4iと次世代のTegra 5(開発コード名Logan)のスケジュールを1Q早めたことだけがプラスのあくびが出るビジネス状況の発表と,SemiAccurateは酷評しています。

inserted by FC2 system