最近の話題 2013年9月7日

1.Intelが第2世代AtomベースのAvotonを発売開始

  2013年9月4日のEE Timesが,IntelのAvotonについて長文の記事を掲載しています。

  Avotonの正式名称はC2000で,チップの消費電力はモデルによって6〜20W,メモリなどを含めたノードの消費電力は14〜28Wとなっており,S1200 Centertonベースのノードが17〜20Wであるのと比べると多少,消費電力は増えています。また,Centertonの場合はGbE,SATA,USBコントローラを外付けする必要があるのですが,Avotonは全て内蔵しているので,ボードスペースが小さくなります。

  HPのMoonshotサーバでは,現在のCentertonベースのカートリッジをAvotonベースに換えると,性能は7倍,性能/Wは6の改善になるとのことです。

  これまでのAtomはPentium 3コアの焼き直しだったのですが,Avotonは新設計のOut-of-Order実行のSilvermontコアを最大8コア搭載しています。Avotonは2個のSilvermontコアに共通の1MBのL2キャッシュをつけたモジュールを最大4個集積しています。DRAMインタフェースはDDR3-1600が2チャネルで,最大バンド幅は25.6GB/sとなっています。そして,IOインタフェースは,PCI Express 2がx16,1Gb/2.5GbのGbEが4本,USB2が4本,6GbpsのSATA3が2本に3GbpsのSATA2が4本,それに加えてSMBusやその他の低速バスがでています。

  今回発表された製品は,Avotonが,8コアで2.4/2.6GHzクロックで20WのC2750,4コアで同じクロック,13WのC2550,8コアで1.7/2.0GHzで10-12WのC2730,4コアで同じクロック,9WのC2530,そして2コアで同じクロックで6WのC2350の5品種です。また,通信処理用のRangeleyも8コア,2.4GHzクロックで20Wから,2コア,1.7/2.0GHzクロックで7Wまで8品種が発表されました。

  シングルスレッドのSPEC_int_rate_base2006のスコアは2GHzのS1260 Centertonと比べて,2.4GHzのC2750 Avotonは1.9倍の性能となっています。1.3GHzのARM A9コアを使うMarvellのARMADA XPはCentertonの半分以下の性能で,Avotonは4倍の性能となっています。また,1チップの全てのコアやスレッドを使った場合は,C2750はS1260の5.1倍の性能となっています。

  S1260との比較では,メモリバンド幅を測定するSTREAM OMP(Triad)では4.1倍,Web性能を測るPHP on LAMPでは最大7.2倍の性能で,CalxedaのECX-1000と比較しても最大3.9倍の性能となっています。

  そしてSPEC_int_rate/Wでは,S1260に対して1.7GHzクロックのC2730が3.8倍,C2750も3.7倍程度で,AMCCの64bit ARMである2.4GHz,8コアのX-Geneと比較しても1.8倍とのことです。

  Silvermotコアの開発に当たって,ARMに勝る性能/Wという設計目標が与えられたことは間違いないところで,Intel提供の性能比較ですが,ARMの64bitサーバプロセサに対して,十分な競争力がありそうです。

2.Samsungが腕時計型のGalaxy Gearを発表

  Samsungの腕時計型の端末であるGalaxy Gearの発表は一般紙でも報じられていますが,2013年9月5日のThe Registerが,その中身について報じています。

  それによると,重さは73.8gで1.63インチで320×320PixelのカラーAMOLEDディスプレイを持ち,512MBのメモリと4GBのストレージをもつ800MHzクロックのプロセサが入っているそうです。また,バンドの部分に1.9MPixelのカメラが仕込まれています。

  そして,SamsungのS Voiceコントロールソフトウェアが組み込まれていてハンドフリーでコントロールを行ったり,メモを取ったりすることができるとのことです。

  ただし,Galaxy Gearだけでは,Dick Tracyの腕時計型の電話のようには動かず,Galaxy Note 3 phabletか,Galaxy 10.1タブレットが10m以内に存在しBluetoothで通信できる必要があります。現在はサポートされていませんが,スマホのGalaxy S4も近く使えるようになるとのことです。

  発売は9月25日で,米国での価格は$299だそうです。

3.2013年前半のスマートフォンプロセサはQualcommがトップシェア

  2013年9月5日のEE Timesが,Strategy Analyticsの市場調査結果を引用し,2013年前半のスマートフォンのアプリケーションプロセサ市場は,Qualcommが43%の市場シェアをとり,トップを維持したと報じています。

  そして,Apple,Samsung,MediaTek,ST-Ericksonの順で続いているとのことです。

  2013年前半にはマルチコアの比率が66%に向上してきており,今後もマルチコア化が進むと見られますが,Strategy Analyticsは,マルチコアと言う点では4コア程度で十分で,今後はアプリケーションの実行をアクセラレートするGPUやDSPの組み込みが次の強化ポイントになると見ています。

  スマホへの進出に躍起のIntelやNvidiaは,このランキング上位には顔をだしていません。

4.SuVoltaのDDCを使うチップを富士通が量産を開始

  富士通セミコンが,SuVoltaのDDC(Deeply Depleted Channel)トランジスタを使うイメージ処理LSIの量産を開始したと,2013年9月4日のEETimesが報じています。

  富士通セミコンはDDCテクノロジの共同開発パートナで,最初のライセンシでもあります。

  このたび,量産を開始したのは,MB86S22AA Milbeautというイメージ処理LSIで,一眼レフなどに使用され,24MPixelのイメージを毎秒12フレーム処理して,レンズの歪や解像度を補正したり,特徴点を抽出したりするLSIだそうです。

  DDCを富士通の55nmプロセスに取り入れて製造したこのLSIは,DDCなしと比べると,性能は2倍で,30%消費電力が少ないとのことです。

  DDCは表面のチャネル領域の不純物濃度が低く,FinFETやFDSOIのようにキャリアの移動度が高く,高性能のトランジスタが作れます。また,Vtのばらつきを抑えることができ,低電圧で動作させることができます。SuVoltaのDDCテクノロジについては2011年12月10日の話題などで紹介していますが,このIEDMでの発表では0.4Vという低い電源電圧での動作を報告しています。

  55nmプロセスは28nmとか22nmの最先端からは2〜3世代古いテクノロジですが,プロセサなどの先端LSI以外では90nmから40nm程度のプロセスが主流で,この世代のプロセスで有効性を示したことは大きな意義があるとSuVoltaのHandel Jones CEOは述べています。

  そして,基本的にバルクプロセスなので,FinFETのように設計ルールに大きな変更なく使えるというメリットがあります。どの程度流行るか分かりませんが,少なくとも,FinFETの開発のような大きな投資なしにトランジスタ性能を上げられる選択肢と思います。

  このため,先端開発からは,多少,出遅れの感があるファブにとっては魅力的で,今年の7月27日の話題で,UMCが28nmプロセスにDDCを適用し,ARMプロセサを開発するという発表を紹介しています。

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