最近の話題 2013年9月28日

1.AMATとTELが合併を発表

  2013年9月24日に,Advanced Materialsと東京エレクトロンが合併する契約を交わしたと発表しました。このニュースは一般紙にも報じられていますが,9月24日のEE Timesが報じています。8月16日にAMATのCEOに就任したGary Dickerson氏の早業です。

  売り上げ$5.51BのAMATと$4.22BのTELという半導体製造装置業界の1位と3位の合併で,2位のAMSLの$4.89Bを大きく引き離します。合併後の社名は不明ですが,オランダに持ち株会社を設立し,Santa Claraと東京に本社を置き,NASDAQと東証に上場するとのことです。新会社の会長にTELの東氏,CEOにDickerson氏が就任します。合併後の持ち株比率は,AMAT側の株主が68%,TEL側の株主が32%となるとのことです。

  両社の取締役会は賛成とのことですが,株主総会での承認と当局の承認が必要となります。合併後の市場シェアは約25%とのことで,当局の承認がすんなりと得られるかどうかは分かりません。実際の合併は来年の中頃以降になると見込んでいます。

  半導体ファブがItel,TSMC,Samsung,それにGlobal Foundriesに集約され,装置の買い手が減って,買い手市場になってAMATやTELの利益率が減っています。売り手側も統合で集約して,開発費の効率アップと,価格交渉力をアップして,利益率を改善しようというもくろみと

   また,EUVの実用化が進まず,半導体各社がリソに頼らず,性能向上やトランジスタ単価の低減の方法を探っており,8月10日の話題で紹介したSamsungのV-NANDのように,成膜とエッチ技術で素子密度を上げる製品が出てきています。リソに強いASMLに対して,成膜やエッチに強いAMATとTELが連合軍で開発を強化すれば,面白い展開になりそうです。

2.MicronがHMCのエンジニアリングサンプルの出荷を開始

  2013年9月25日にMicronは,Hybrid Memory Cubeのエンジニアリングサンプルの出荷を開始すると発表しました。

  4枚の4Gbit DRAMチップとメモリコントローラなどを搭載したロジックチップをTSVで接続し,2GBのモジュールを作っています。特徴はメモリバンド幅で,これ1個で160GB/sとGDDR5 4チップくらいのバンド幅があります。一方,消費電力は70%低いとのことです。

  昨年11月のSCでもデモしていたのですが,エンジニアリングサンプルを供給して,顧客の開発に使えるようになったということで,HMCの実用化にむけて大きな前進です。

  2014年の早い時期に2倍の容量の4GB HMCのエンジニアリングサンプルの出荷を行い,2104年末までには,2GBと4GBのHMCの量産を開始する予定とのことです。

3.モバイルGPUのシェアはARMがImaginationを追い上げ

  2013年9月26日のEE TimesがJohn Peddie Researchの調査結果を報じています。それによると,シェア1位のImaginaionは2012年1Hには52.0%のシェアであったのが,2013年の1Hには37.6%と大きくシェアを落としています。それに対して,ARMは13.5%から18.4%とシェアを伸ばし,Imagintionを追い上げています。

  シェア2位はQualcommで29.3%から32.3%とシェアを上げています。QualcommのAdreno GPUは他社にライセンスしていないので,自社のSnapdragonの43%というスマホプロセサのシェアに支えられています。

  そして4位にはシェアを0.3%から9.8%に伸ばしたVivanteが入り,5位は4.9%から1.4%にシェアを落としたNVIDIAとなっています。NVIDIAは昨年はTegra 3がNexus 7の最初のマシンに採用されるなどで売れたのですが,Tegra 4が不調でシェアを落としたようです。

  今後の台風の目はIntelで,Atom系のスマホ,タブレットプロセサに本腰を入れており,1年後にはシェアが大きく動く可能性があるとのことです。また,BroadcomやSamsungは自社でGPUの開発を行っており,Appleも独自開発の可能性があるとのことで,これらのメーカーがImaginationやARMのIPライセンスをやめると,また,大きなシェアの変動が起こりえます。

4.Stanford大がカーボンナノチューブでプロセサを製作

  2013年9月26日にStanford大が,StanfordのMitra教授とWong教授のグループがカーボンナノチューブでプロセサを製作したと 発表しました。

  MIPSアーキテクチャのサブセットの命令をフェッチして実行できるとのことですが,179トランジスタでIntel 4004相当(4004は2300トランジスタでクロックも数100KHzですが)という記述もあり,非常にシンプルなプロセサです。また,クロックは1KHzとのことで,圧倒的な低速です。しかし,これはカーボンナノチューブで作ったロジックとしては,圧倒的に大きな規模です。

  カーボンナノチューブは指定した位置に指定した方向で長さのチューブを作ることが非常に難しく,従来の発表は,ナノチューブのできたところに配線してゲートを作るか,ナノチューブを指定の位置まで運んできてゲートを作るという方法で,工学というレベルになっていません。

  現在の技術では,99.5%のナノチューブを指定した方向に作ることができるのですが,0.5%は意図しない方向にできてしまい回路をショートさせます。また,半導体ナノチューブだけでなく,トランジスタをショートさせる金属性のナノチューブも混じってしまいます。

  まず,この金属性のナノチューブは大電流を流して燃やしてしまいます。そして,今回の開発は0.5%の変な方向のナノチューブがあっても,一定の配線で,全体として動くようにするフォールトトレラントな設計というところが目玉です。

  旧知のSubhasish Mitra先生にHot Chips 25で会ったら,ナノチューブでプロセサを作ったと言ってましたが,これのことのようです。Mitra先生は,フォールトトレランスの研究者で,5年くらい前からカーボンナノチューブのロジックの研究をやっています。  

5.Frederick TermanとJen-Hsun Huangが交替

  Frederick Terman先生はStanfordの電気工学の教授で,1932年に出版したRadio Engineeringは,何度も改定され,この分野の最も有名な教科書です。また,HPを創設したWilliam HewlettやDavid PackardもTerman先生の教え子です。

  このTerman先生を記念するTerman Engineering CenterというのがStanfordに有ったのですが,老朽化もあり取り壊され,工学部の中心は,Jen-Hsung Huang Engineering Centerに移り,Terman Engineering LibraryもJen-Hsun Huangセンターの2階に移ったそうです。

  NVIDIAのCEOのJen-Hsun Huang氏は,Stanfordで修士をとった卒業生で,このセンターの建設に$30Mを寄付したとのことです。Naming rightsを売るようなものかも知れませんが,これを教えてくれたMitra先生は残念そうでした。

  でも,日本の大学も,建物に3号館とか言う機械的な命名にしないで,卒業生の金持ちから寄付をもらって,その人の名前を付ければ,少しは財政の足しになるのでは?

@1173483

 

 

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