最近の話題 2013年10月12日

1.分子動力学シミュレーションでKarplus教授らがノーベル化学賞を受賞

  2013年のノーベル化学賞は,ハーバード大のMartin Karplus教授,スタンフォード大のMichael Levitt教授,南カリフォルニア大のArieh Warsel教授の3人が,QM/MM法という古典力学と量子力学を組み合わせて,化学反応をシミュレーションする手法を創始した業績で,受賞しました。

  ヒッグス粒子の発見だって,藁の山から針を見つけるデータ処理が無ければできなかったわけですが,計算化学はスパコンがなければどうにもならない分野で,コンピュータ関係者としては,今回の化学賞の受賞は喜ばしいことです。

2.ショート事故多発でNSAの巨大データセンタの計画が遅延

  2013年10月8日のThe Registerが,Wall Street Journalの記事を引いて,NSAデータセンターの遅延について報じています。

  電気系統のショートと見られる事故でラックが熔けるという事故が,過去13ヶ月で,10件も発生しているとのことで,陸軍の技術部隊が調査に乗り出しているとのことです。9月25日には被害額が10万ドルにのぼる事故も発生し,スケジュールの遅延は1年にもなると報じています。

  NSAはユタ州のBluffdaleに巨大データセンタを建設中で,面積は100万平方フィート(ほぼ1万m2)以上で消費電力は65MW,建設費は,中に入れるCrayのスパコンを除いて$1.4Bとのことです。

  Phase1の電気工事は$52Mで,2系統の送電網への繋ぎ込みが含まれており,Phase2の電気工事は$340Mになる計画とのことです。

  NSAは,このユタセンタのほかに,メリーランド州の本部に$900Mのセンタ,そしてテキサス州オースチンにもデータセンタを建設する予定です。これらのセンタで,全ての電子メールやTweetなどを検査しようということでしょうね。

  神戸の,京のデータセンタが,計算機室は5000m2くらいで,20〜25MWで,建設費は200億円くらいですから,$1.4Bは高過ぎという気がしますが,何が含まれているのでしょうね。

3.米国政府のシャットダウンで,今年もSCの参加者が減る?

  昨年は,GSAの大名旅行のカンファレンス参加が議会で追求され,1部門からの1つのカンファレンスへの参加費用に上限が設けられ,米国の主要研究所の展示がさびしかったのですが,もし,現在のシャットダウンが11月16日からのSC13まで影響すると,政府系の参加者は激減,展示もできないことになってしまいます。

  2013年10月10日のHPC Wireは,SC13は予定通り開催というGlopp大会委員長の話を掲載し,プログラム委員長である東工大の松岡教授は,政府のシャットダウンで参加できなくなった場合は,参加費を払い戻すとTweetされていますが,影響はそれだけに留まりません。

  政府のプロジェクトへの依存度の大きいSGIは,シャットダウンの影響で,来期の売り上げは,これまでの予想から10%ダウンとのコメントを出しています。

  また,前項のNSAのデータセンタ建設にもマイナスで,ひいてはCRAYの業績にも影響してきます。

  債務上限の引き上げは,6週間に限って小幅な引き上げを行うことで,当面の妥協が提案されていますが,その先はどうなるのか,見通しが立てられないのは,経済活動にとって大きなマイナスです。

4.VerizonがクラウドDCにSeaMicroのサーバを選択

  2013年10月7日のThe Registerが,Verizonがクラウドデータセンタのサーバとして,AMDのSM15000を買うと報じています。

  クラウドデータセンタでは,1Uや2Uのサーバが使われてきましたが,各ノードにハードディスクを持ったり,Ethernetポートをもつのもムダで,より高密度なマイクロサーバに移行してきています。

  AMDのSeaMicro部門のSM15000は512コアを持ち,10本の10Gbit Ethernetで外部とつながり,独自のNetwork Processing Unitを内蔵しています。このNPUがAggregation Routerの機能を持ち,外部に見せるIPアドレスにコアを対応させます。外部からは直接に各コアのIPアドレスは見えないので,ロードバランスや,仕事が少ない場合は,コアを休ませたりすることができます。また,全部のコアでハードディスクを共用できるので,Thin Serverより,コストを安く抑えることができます。

  AMDはVerizonと2年前から協力して,仕様をつめ,開発を行ってきたとのことです。

  

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