最近の話題 2013年10月19日
1.Broadcomが64bit ARMプロセサの開発を発表
2013年10月15日のEE Timesが,Linley Processor ConferenceでのBroadcomの64bit ARMプロセサの発表を報じています。
と言っても,書かれているのは,16nmFinFETプロセスがターゲットで,4命令発行,4スレッドのARMv8アーキテクチャの独自設計プロセサというだけで,それ以上の詳細は不明です。
ARMのCortex A-57コアは3命令発行なので,それよりも高性能のプロセサを開発しようとするものです。また,16nmFinFETプロセスですから,量産は,2014年の終わりごろになりそうです。
2.Xbox Oneの新Kinect
2013年10月16日と10月17日のマイナビが,Xbox Oneと新Kinectに関するHot Chips 25での発表の記事を載せています。また,SemiAccurateも10月15日と10月16日に新Kinectの記事を載せています。私がXobx Oneの原稿を書いたのは,1ヶ月以上も前ですから,ほぼ同じ日に掲載されたのは単なる偶然です。
新Kinectですが,光の到着時間を高精度で測定できるTime of Flightピクセルアレイの使用がキモです。このイメージセンサは光電子の蓄積をコントロールするゲートを持ち,照射するレーザ光 から一定の遅れ時間の信号だけを蓄積することができるようになっています。そして,Kinectでは数10MHzで照射,蓄積を繰り返しています。同期サンプリングなので,その他の光の影響を受けにくくなります。
そして,レーザを照射してから光電子を蓄積するまでのタイミングを一定にしてイメージをとると,光の往復時間に対応する距離のところだけからの反射 の強さを見ることができます。距離を変えて撮った絵を組み合わせると,どの距離にどのような物体があるのかを判別できます。
また,対象までの距離と,白いシャツと黒いシャツのように反射率が異なると,イメージセンサのダイナミックレンジに収まらないのですが,この場合は,露出時間を変えたイメージを組み合わせて,データ処理でダイナミックレンジを拡大しています。
ただし,Kinectは,単にイメージを送るだけで,データ処理は本体で行われます。人間の各部の認識などは,当然,CPUコアで行われていると思いますが,私は,イメージの前処理は,分不相応にデラックスなサウンドDSPが使われているのではないかと思っているのですが,これは単なる推測です。
Microsoftは2010年にCanestaというToFセンサを開発していた会社を買収しており,このテクノロジを使っていると推測されます。ToFピクセルアレイは ディジカメのセンサより高いのでしょうが,ステレオカメラのように2個は必要ないし,ダイナミックレンジも電気的に処理しているので,光学的には特別の仕掛けは不要です。非常にエレガントな設計だと思います。
3.14nm Broadwellは来年1Qに遅延
2013年10月16日のThe Registerが,Haswellの次のBroadwellは,歩留まり問題が原因で2014年1Qに遅延すると報じています。これはIntelの4半期の業績発表の中でKrzanich CEOが述べたとのことで,オフィシャルです。
14nmプロセスにいくつかの改善を同時に入れたのですが,総合的には,思ったような歩留まり改善が得られなかったとのことです。これで何%,次のこれで何%という改善を組み合わせても,改善の合計が足し算にならなかったということのようです。
このため,これまで,今年末と言われてきたBroadwellの発売が来年1Qにずれ込むとのことです。既に,新たな改良を加え,歩留まりを目標レベルまで引き上げられることは確認しているので,来年1Qは間違いないとのことです。
4.Facebookが浸漬液冷を実験中
2013年10月14日のThe Registerが,Facebookのサーバ関係の責任者のFrank Frankovsky氏の,浸漬液冷に関する話を報じています。
Facebookのサーバは,Googleと同じく,サーバ個々の箱はなく,ラックにむき出しのマザーボードが搭載されている形態です。このサーバラックを背中を下にして横倒しにして,液体に漬けるとのことです。それで,どれだけCPUをオーバクロックできるかということに興味があるとのことです。
オーバクロックで性能を上げられれば,同じ性能を達成するのに必要なサーバ数が減り,その分,サーバのコストを減らせます。
ただし,冷却液がツルツルと滑りやすい液体で,故障したマザーボードを取り出して,垂れる冷却液を受ける樋の上を移動して修理ステーションに運ぶロボットが必要などの問題があり,まだ,実用にする計画は無いのですが,実用にむけての研究は行っていくとのことです。
東工大もTSUBAME KFCでミネラルオイルに浸漬する液冷の実験を開始していますが,ラックをオイル槽から引き上げて,油が切れるまでまって修理ということになるようです。
5.FacebookのFrankovsky氏がCalxedaのボードメンバーに就任
2013年10月13日のThe Registerが,Facebookのサーバ開発の責任者のFran Frankovsky氏が,Calxedaのボードメンバーに就任したと報じています。
当然,CalxedaのARMチップの開発方向に影響を与えて,Facebookの目的に適した製品を作る方向に動かそうという意図があるものと思われます。また,その結果として,FacebookがCalxedaのARMチップを大量に使うようになると,Intelなどの既存のサプライヤーには脅威です。
6.TACCのWranglerクラスタ
2013年10月17日のHPC WireがTACCのWranglerクラスタについて報じています。稼動は2015年の早い時期とのことで,まだ,1年あまり先の予定です。
Dell製の120ノードのクラスタとのことで,これだけを見ると,大したことは無いのですが,DSSD社のテクノロジを使い275M IPOSのディスクアクセス能力を持つとのことで,これはBluewatersが1.4M IOPSというのと比べると,圧倒的なIO性能です。
DSSD社は現在もステルスモードで,どのような製品であるかは分かりませんが,Sunの創立者の一人で,Alista Networkの創立者でもあるAndy Bechtolsheimの会社ということで,彼の実績から言って,まず,信用しても良さそうです。
ノードはDell製で,32コアのHaswellを使い,コアごとに4GB,つまりノードあたり128GBを搭載し,高IOPSのNAND Flashのアクセスに適するように最適化されているとのことです。また,40Gbit EthernetとInfiniBandが出ているとのことです。
そして10PBのストレージが2システム接続され,1システムはローカル,もう1システムはインディアナ大に置かれ,同じデータがリプリケーションして格納されるのだそうです。
7.今年のStudent Cluster Challengeではプロアマ対決も
2013年10月11日のThe Registerが,SC13ではCelebrity Pro-Am Cluster Challengeと銘打って,プロのHPC専門家と学生チームの対決が行われると報じています。詳細は発表されておらず,発表され次第報道するとのことです。
しかし,プロとして出場して負けたりするとみっともないので,どういうルールで,どういう人が出るんでしょうね。